深層断面 JSME EDITION
インフラ守れ、自治体タッグ
日刊工業新聞 深層断面
JSME EDITION
群マネ、広域・多分野で管理
高度経済成長期に建設された社会インフラの多くが半世紀を迎える。そうした中で、埼玉県八潮市で下水道の老朽化に起因するとみられる道路陥没事故が起きた。近年、気候変動で自然災害は激甚化、頻発化しており老朽インフラ対策は喫緊の課題だ。だがインフラの大半を管理する地方自治体は、技術人材や財源不足が深刻。国は解決策の一つとして複数自治体が共同で多分野のインフラを維持管理する地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)を推し進める。
行政・民間・人材 3つの連携
事故が起きた八潮市の下水道は埼玉県が管理する流域下水道で、5年に1度の点検も実施していた。実は全国約49万キロメートルの下水道のうち、7割以上は市町村が管理する公共下水道。事故を受け、開かれた対策検討委員会の家田仁委員長(政策研究大学院大学特別教授)は「下水道に限らずインフラの困難は市町村の方が抱えている」と指摘する(図1)。
図1 道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会の初会合で発言する家田仁委員長(2025年2月21日)
国交省の調査によると、2021年時点で技術系職員(土木、建築)がゼロの市町村が25%、5人以下が5割近くある。国は2012年に起きた笹子トンネル崩落事故を機に予防保全型のインフラメンテナンスにかじを切ったが、多くの市町村ではほとんど手が回らない状態にある。このため国は官民が協力し事業を行うPPP、民間資金を活用したPFIの導入を進め、さらに23年度から注力するのが群マネだ。
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表紙:経年変化してグラデーションに紙焼けをした古紙を材料にコラージュ作品を生み出す作家「余地|yoti」。
古い科学雑誌を素材にして、特集名に着想を受け、つくりおろしています。
デザイン SKG(株)
表紙絵 佐藤 洋美(余地|yoti)