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2025/6 Vol.128

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特集 母国語で学術論文を書く意義

東芝の研究開発・技術成果を紹介する技術論文誌「東芝レビュー」

藤井 孝佳〔(株)東芝〕

東芝レビューの創刊

技術で戦後復興の一翼を担う決意

東芝レビューは、前身の芝浦レヴュー、マツダ研究時報、無線資料の3誌を統合し、1946年に創刊された(図1)。創刊号の冒頭には、「科學日本建設の一翼を擔になふ可べき技術および研究機關を有する民間會社にあっては、その活動の成果を速かに發表すべき機關誌を是非とも必要とするに到つた」とあり、日本の復興と発展に貢献する決意が感じられる。

一方で、「只、印刷、用紙等の惡條件に禍わざわひされ遺憾ながら最初は少頁で、然しかも隔月間として發足するの餘よ儀ぎなきに到つた」とあり、当時の苦労がしのばれる。1952年には、晴れて毎月の発行となった。その後、節目に記念特集を組みながら発行を継続し(表1)、現在では60ページ程度の技術論文誌として、隔月で発刊している。

図1 東芝レビューの表紙の変遷

表1 東芝レビューの沿革

 

東芝レビューの構成

技術・研究成果を論文形式で掲載

現在の東芝レビュー各号は、10件程度の特集論文と、5件程度の一般論文、注目の研究開発テーマを紹介する1件のR&D最前線から構成される(図2)

図2 現在の東芝レビューの構成〔80巻1号(2025年)〕

特集は、特集の技術や狙いを述べる巻頭言、技術動向や市場ニーズを踏まえて特集分野の現状と課題、当社の目指す方向を解説するトレンド論文、特集論文から構成される。表2は最近の事例であるが、エネルギー・カーボンニュートラル、インフラソリューション、デバイスソリューション、デジタルなどの各事業領域の製品・サービスや、研究所の最新技術を特集している。

年度の最終号には、技術成果号として、事業領域別の1年間の成果記事を掲載している。成果号は英語版も発行し、グローバルな読者に技術の成果や特徴を訴求している。

表2 最近の特集

東芝レビューの発行の目的

技術への信頼を得て、営業・採用活動を支援

東芝レビューは、当社製品に織り込まれている技術を、ユーザーの技術者および大学や公的機関などの有識者に紹介し、当社の技術に対する理解や信頼を得て、営業・採用活動などを支援することを目的としている。顧客、業界紙記者、大学・研究機関などに定期的に頒布し、当社技術のプレゼンス向上、ビジネス機会の創出を図ってきた。

したがって、当社技術の特色や先進性、技術思想などを読者に伝えることが重要となる。日本語で技術を分かりやすく解説し、専門外の技術者や学生にも十分理解できるよう、執筆指針にしたがって執筆し、当該分野の専門家が査読、編集部が校正を行っている。社内では、若手への論文執筆機会の提供、人材育成も、東芝レビューの重要な役割となっている。

一方で、広報媒体も冊子からWeb版に主体が変わり、より多くの人に見ていただく機会が増えている。東芝レビューも、1995年からWeb版(1)の公開を開始した(図3)。このような中で、他社の技術情報誌では、製品やソリューション、企業の取組みを紹介する広報誌色を強くする傾向も見られる。当社にも、技術に詳しくない一般の方に東芝の技術と人を紹介するToshiba Clip(2)などの媒体がある。東芝レビューは、これらのメディアと役割分担し、技術を詳しく解説する技術論文誌として継続する予定である。

図3 Web版のイメージ〔70巻11号(2015年)、特集「東芝照明事業125周年」〕

今後の展望

東芝の技術に対する評価、信頼の一端を担う

今後も、より多くの方に読んでいただくためには、文章の品質維持・向上、コンテンツの改善とともに、他媒体との連携や読者との双方向のコミュニケーションなども必要であろう。時代に合わせた技術論文誌の形態を探りながら、丁寧に技術を発信していく。

2025年度は、当社の創業150周年とともに、東芝レビューの創刊から80年目を迎える。創業以降、世の中にないものを生み出し続け、代わりがないからこそお客様からご支持いただいている。この評価、信頼をこれからの100年にも引き継ぐべく、東芝レビューは、新たな価値をお客様へ届ける一端を担っていく。


参考文献

(1)東芝レビュー, (株)東芝 技術企画部,
https://www.global.toshiba/jp/technology/corporate/review.html (参照日2025年3月1日).

(2)Toshiba Clip, (株)東芝 Toshiba Clip編集部,
https://www.toshiba-clip.com/ (参照日2025年3月1日).


藤井 孝佳

◎(株)東芝 技術企画部 技術管理室 共創企画担当 シニアマネジャー

◎専門:応用光学

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