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2026/1 Vol.129

装置製作:高山芳の
(多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻 統合デザイン領域 在籍)
金属・磁石・モーターなどの単純なメカニズムを用いた装置は、重力や摩擦を受け入れながら、ある行為を繰り返します。その姿は、私たちが呼吸し、脈を打ちながら生きていることを思い出させます。本誌では、学部の卒業制作である 10 体の装置〈脈拍〉を中心に、全 12 体の作品を紹介します。

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Myメカライフ

自身の携わる製品・サービスを異国より見つめて

吉村 侯泰〔(株)日立製作所〕

この度は、「解析高精度化による衝撃吸収性能に優れた通勤鉄道車両の開発」という題目にて日本機械学会奨励賞(技術)を受賞させていただき、また、Myメカライフの執筆の機会を頂戴し、大変光栄に存じます。

日立製作所の研究開発部門へ入社して以来、構造強度に関わる研究開発業務に従事しており、近年は鉄道車両に関わる開発を主に担当しておりました。今回の奨励賞もその鉄道車両における取組みを対象に受賞させていただきました。

具体的には、鉄道車両の衝撃吸収特性を評価するための解析手法の高精度化技術とその解析手法を活用して取り組んだ鉄道車両の開発を評価いただいたものです。要素技術から実製品の開発までチャレンジ・経験することができ、自身の業務へのやりがいを感じるとともに、これまでの取組みを奨励賞という栄誉ある形で評価いただき大変うれしいです。

このような鉄道との縁もあり、本稿を執筆している現在、イタリアにある鉄道車両の製造拠点に駐在しています。図に示すような特急車両や在来線車両を含む、多岐にわたる車両をイタリアにて設計・製造しており、その中で研究開発業務を推進しています。

同じ鉄道車両という製品でも、求められる仕様などがこれまでの日本での経験と異なることが多々あり、現地での自身の研究テーマの設定や進め方で苦労することも多いですが、同時に異国の地でチャレンジできることへの喜びを感じています。

また、目の前の業務に取り組むだけでなく、自身の業務に関わる鉄道車両における日本との全般的な違いに目を向けるように努力しています。イタリアを含む欧州各国は公共交通機関が発展していることもあり、出張や旅行での移動でさまざまな車両に乗ることがあります。その際には、車内外の設備の特徴や走行中の振動や音響特性などに注意を払い、どのような研究開発が活きてくるかといったことを考えています。

加えて、せっかくのイタリアでの駐在の機会に、これまで訪問経験の少なかった東欧や北アフリカなどにある国々を訪れています。鉄道システムがあまり普及していない国で空港と市街地を結ぶ列車に乗車しようとしたときには、駅構内の掲示板に示された案内とは異なるプラットフォームに列車が入線してきたり、列車の行先表示が不明瞭なために観光客である私に現地の方が列車の行き先を質問してきたりといったとことがありました。また、首都の中心地にトラムや地下鉄といった鉄道システムが一切ない国もあり、これまで身近に触れてきた交通機関がないなかで地元の人々が乗り合いバスやタクシーで移動する様子を窺い知るなど、新鮮な経験を積むことができました。

このような訪問を通じ、「私の関わる鉄道車両の開発において、鉄道があまり普及していない、もしくは、全く普及していない都市において、どのような鉄道交通システムが役立てるだろう。そして、そのために必要な製品・サービスおよびこれらに資する技術とはなんだろう。」と浅慮ながらも考えるようになりました。

思えば、私は自身のこれまでの取組みの中で、眼前の課題ばかりに注力してしまっていたようにも感じます。当社の「優れた自主技術と製品の開発を通じて社会に貢献する」という企業理念にもあるように、より良い社会を実現するために必要な事柄を意識しながら、視野を広く持って日頃の業務に取り組んでいければと強く考えています。

末筆となりますが、これまで私が研究開発に取り組むにあたり、多くの方々からのご指導・ご鞭撻を賜りました。この場をお借りして御礼申し上げます。今回頂戴した寄稿の機会を通じ、改めて私自身が取り組みたいことを見つめ直すこともできました。今後とも研鑽を深めていければと思います。

 イタリアにおける当社製鉄道車両

<正員>

吉村 侯泰

◎(株)日立製作所 研究開発グループ 生産・モノづくりイノベーションセンタ 機械構造システム研究部 生産M3ユニット 研究員
◎専門:材料力学、計算力学

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