特集 水素社会の光と影
国際液化水素サプライチェーンの構築と脱炭素への貢献
はじめに
2025年の日本の夏は最高気温が40℃を超える通称「酷暑日」が最多を記録し、十分な秋季を経ずに急激に冬期を迎えている。近年、日本のみならず世界各地で猛暑や大雪、洪水、干ばつ、暴風など気候変動に伴う異常気象が頻発している。さらにこれを裏付けるかのように、国連世界気象機関(WMO)は2024年の平均気温が観測史上最高温度を記録したことを発表し、その上昇値は国連気候変動国際間パネル(IPCC)が提唱する国際目標の1.5℃を上回る1.55℃となり、気候変動・温暖化対策は予断を許さない状況である。
このような状況の中、米国においてはトランプ大統領の就任に伴い、パリ協定からの離脱とともに脱炭素政策の打ち切りや化石エネルギーの増産政策が打ち出されるなど、短期的にはエネルギーの脱炭素化に逆風となる状況があり、第7次エネルギー基本計画(1)においてもLNG回帰と呼ばれる政策転換があるが、長期的な視点では脱炭素社会への切り札としての水素エネルギー利用への関心が世界規模で高まっている(図1)。

図1 世界の大型水素プロジェクト(Hydrogen Compass 2025(2))
水素はエネルギーの長期保存・長距離輸送を可能にし、利用時にCO2を排出しないため究極のクリーンエネルギーと呼ばれている。川崎重工は、水素を「つくる」「はこぶ・ためる」「つかう」のサプライチェーンの上流から下流に至るすべての技術開発を進めており、水素社会の早期実現を目指している。2020年度には国際水素サプライチェーンの構築に向けたパイロット実証を開始し、世界初となる液化水素の海上輸送や船陸間荷役の実証を進めるなど、液化水素サプライチェーンの技術・社会実証に取り組んできた。
さらに、2030年以降の水素エネルギーの商用化(社会実装)を目指して、現在実施中のパイロット実証で得られたノウハウを基に、液化水素運搬船や液化水素揚荷基地の大型化によるスケールメリットによって水素コストの低減を図ろうとする商用化実証に取り組んでおり、2025年、神奈川県川崎市(川崎臨海部)において液化水素揚荷基地の建設がスタートした。
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キーワード:特集 水素社会の光と影
装置製作:高山芳の
(多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻 統合デザイン領域 在籍)
金属・磁石・モーターなどの単純なメカニズムを用いた装置は、重力や摩擦を受け入れながら、ある行為を繰り返します。その姿は、私たちが呼吸し、脈を打ちながら生きていることを思い出させます。本誌では、学部の卒業制作である 10 体の装置〈脈拍〉を中心に、全 12 体の作品を紹介します。