特集 水素社会の光と影
NEDOによる燃料電池関連の活動状況
政策的背景
脱炭素社会の実現に向けた国際的な動きが加速するなか、最終利用段階で二酸化炭素を排出しない水素の重要性は、環境政策およびエネルギー転換の両面でこれまで以上に高まっている。特に、エネルギー資源に乏しく、資源偏在性の大きい化石燃料への依存を余儀なくされてきた日本においては、供給不安や地政学的リスクがエネルギー安全保障上の構造的課題として長く指摘されてきた。このため水素は、低炭素化と供給安定性を同時に達成し得る政策的鍵概念として位置付けられ、その導入拡大は社会インフラの再設計とも結び付く重要なテーマとなっている。こうした背景のもと、日本では1970年代の黎明期から官民一体で水素エネルギーに関する研究開発を推進し、実証と制度整備を段階的に積み上げてきた。その成果として、世界に先駆けて家庭用定置型燃料電池の大量導入や燃料電池自動車の商用化が実現したことは、技術開発と社会実装を結び付けてきた日本型アプローチの象徴である。
政策面においても、日本は早期から体系的取組みを進めてきた。2017年には世界初の水素関連国家戦略である「水素基本戦略」を策定し、2050年を見据えたビジョンと行動計画を明示した。さらに2020年10月には菅義偉総理大臣が所信表明演説で「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、同年12月には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が発表され、水素は成長分野として明確に位置付けられた。その後、2021年10月に第6次エネルギー基本計画、2025年2月に第7次エネルギー基本計画が閣議決定され、水素・アンモニアが日本のエネルギー供給の柱として制度的位置を確立するに至った。さらに2023年6月には「水素基本戦略」が改訂され、「技術で勝ってビジネスでも勝つ」というスローガンのもと国際市場展開を見据えた産業競争力の強化が掲げられ、2040年水素導入1,200万トン、2030年国内外の日本企業関連水電解装置導入15GWという野心的な数値目標が追加された。これらは、研究開発から産業形成への政策的視座の明確化を示すものである。
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キーワード:特集 水素社会の光と影
装置製作:高山芳の
(多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻 統合デザイン領域 在籍)
金属・磁石・モーターなどの単純なメカニズムを用いた装置は、重力や摩擦を受け入れながら、ある行為を繰り返します。その姿は、私たちが呼吸し、脈を打ちながら生きていることを思い出させます。本誌では、学部の卒業制作である 10 体の装置〈脈拍〉を中心に、全 12 体の作品を紹介します。