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2026/3 Vol.129

装置製作:高山芳の
(多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻 統合デザイン領域 在籍)
金属・磁石・モーターなどの単純なメカニズムを用いた装置は、重力や摩擦を受け入れながら、ある行為を繰り返します。その姿は、私たちが呼吸し、脈を打ちながら生きていることを思い出させます。本誌では、学部の卒業制作である 10 体の装置〈脈拍〉を中心に、全 12 体の作品を紹介します。

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超低コスト化設計による戦略的競争力の強化

第3回 7つ道具:VEとQFDを解説する

國井 良昌(國井技術士設計事務所)

世界に低コスト化手法は7つある

「低コスト化」という言葉は、かつて「安価な製品づくり」を意味していた。しかし、隣国の工業界が急速に発展した今日、その意味合いは大きく変化し、現在では品質とコストの両立を追求する設計思想として再定義されている。

実際、大手自動車企業や家電企業による過去の「低コスト化」施策は、時に顧客の財産や命を脅かす結果を招いた。これは、大規模な社告・リコールという社会問題にまで発展し、現在もなお繰り返されている。

つまり、単なるコスト削減ではなく、Q(品質)とC(コスト)が同時に関与する設計が求められ、特に少ない費用(Cost)や限られた予算で高い成果(Performance)が得られる場合、「コストパフォーマンスが高い」と表現される。

設計の現場では、「品質とコストの両立」や「品質とコストの設計バランスをとる」といった考え方が、設計職人にとっては最高レベルの技術とされている。そして、その技術を発揮するためには、職人が自らの「道具」を持ち、それを使いこなすことが不可欠である。

図1に示す「5+2」種類の開発手法は、まさにその「道具」にあたり、低コスト化設計を実現するために欠かせない要素である。

図1 世界に低コスト化ツールは「5+2」の合計7個ある
〔出典:ついてきなぁ! 品質とコストを両立させる「超低コスト化設計法」(日刊工業新聞社刊)〕

隣国が躍進したその訳は日本が捨てたVE手法

近年、隣国の工業界は「低価格・高品質」の両立を急速に達成した。その要因は、一部の報道では「迅速な経営判断」が躍進の要因とされるが、筆者が隣国企業の設計・開発部門に関与した経験からは、本質的な別要因が存在する。それは、製品のコストパフォーマンス(Cost Performance)を徹底的に追求する設計思想の導入であり、その中核に位置するのがVE(Value Engineering)である。

VEとは、製品やサービスの機能を分析し、必要な機能を満たしつつ、最小のコストで最大の価値を提供する体系的手法である。1947年、米国GE社のL.D.マイルズ氏によって開発され、1960年頃に日本にも導入された。

VE(Value Engineering)の基本概念は「V=F/C」、すなわち「価値(V:Value)=機能(F:Function)÷コスト(C:Cost)」である。筆者はこの難解な概念式を理解する際、ハンバーガーショップの「バリューセット」を例に挙げる。

限られた価格(C)で、満足できる機能(F)、例えば、主食・飲み物・副菜の組み合わせが提供されることで、顧客は高い価値(V)を感じるのである。

単品よりもセットの方が「満腹感」や「味覚満足」に対して「価格」が抑えられており、まさに「価値」が高い状態である。VEとは、このような「顧客満足」を技術的に設計する手法である。

隣国企業はこのVE手法を日本人技術者から学び、現在では製品開発の中核に据えている。中国のHaier社の家電製品がその代表例であり、VEによる設計最適化を通じて世界最大の生産量を達成した。

コストダウン手法とVE手法の違い

図2は、一般的な低コスト化、つまり、コストダウン手法とVE手法の概念の相違を表現している。

「一般的」と表現するコストダウン手法と比較して、あまりにも大きな違いが、VE手法の長所短所の根源となっている。

図の左下を見てみよう。コストダウン手法とは、現状の10%ダウンが限度である。これは、低コスト化の専門家や経済学者の間でも常識になっている。この常識を知らない経営者やトップ層が、「20%ダウン、30%ダウン」や、はたまた、第2回のサブタイトル「自爆! 価格破壊は自己破壊」へとつながっていく。

賢者は、この教訓を次のように表現している。「大黒柱を削って屋根が落ちる」と。つまり、「コストダウンしろ!」「安くしろ!」と言われて、ついには、大工の禁じ手である大黒柱を細く、または、寸足らずの大黒柱で家を建造したところ、ちょっとした地震や台風で、重き瓦(かわら)を支えきれずに屋根が崩れ落ちた」という教訓である。ここで、話をVEに戻そう。

もし、10%以上のコスト削減が必要な場合、コストダウン手法は無理であり、VE手法を一候補として採用することになる。

図2 コストダウン手法とVE手法の相違
〔出典:ついてきなぁ! 品質とコストを両立させる「超低コスト化設計法」(日刊工業新聞社刊)〕

日本生まれのQFDでデジカメを企画する

かつて、「安かろう、悪かろう」と国内はもちろん、世界中から非難された日本製品であるが、アメリカからQC手法を導入し、メイド・イン・ジャパンは高品質の代名詞となった。この立役者は、日本の生産技術者である。つまり、QC手法とは、新商品の設計が確定した後の工程で有効な手法であり、開発部門には不向きであることが判明した。

そこで、1960年代に赤尾洋二・水野滋の両氏が開発した手法が、QFD(Quality Function Deployment、品質機能展開)である。前述のように、QC手法が新製品の設計確定後に実施されるのに対し、QFDは設計段階から品質向上を考慮する方法論である。

かつて、老舗のカメラ企業G社から当事務所へコンサル依頼があった。それは、デジタルカメラであり、電子機器や家電企業による洗練されたその商品に押され、業績は低迷していた。この企業は一部上場の一流企業であるにもかかわらず、企画書も設計書も存在していなかった。ISO9001は取得していたが、設計審査も実施されていなかった。ISO9001とはいったい何であるのか?

企画書のないこの企業では、次期商品が本社の営業部長と開発部のデジカメ開発部長との電話によって決定されていた。その所要時間は、わずか30分。

これは開発のスピード化とは大きく異なる。スピード化ではなく、手抜きである。さらに、この30分で決定された次期デジカメに対して異議を唱える部下も存在しなかった。このような状況では、衰退の一途をたどるのも当然であった。

デジタルカメラという商品は、年に2回の商戦期を迎える。6月と12月、すなわちボーナス支給月である。この商品開発のインターバルや、数回のヒアリングを踏まえ、この企業の環境と体質に適したライト級の開発手法として、筆者はQFDを選択した。

図3は、当事務所のクライアント企業、つまり、前述のG社における新デジカメの企画に使用したQFDである。

図3 人気を得るデジカメをQFDで企画する
〔出典:ついてきなぁ! 品質とコストを両立させる「超低コスト化設計法」(日刊工業新聞社刊)〕

たった30分の電話による企画もどきや、「なんでもあり!」と客が望まない機能を盛りだくさんに詰め込む多機能化にストップをかけた。その実例である。

その結果、新デジカメの「設計思想とその優先順位」は、以下のように決定した。

・優先第1位:電源の種類(アルカリ電池の使用可)

・優先第2位:質量(軽いこと)

・優先第3位:コンパクト(より小型)

・優先第3位:ブレ防止


図3が見づらい場合は下記のURLにアクセス願いたい。

【URL】 http://a-design-office.com/somesoft.html

【ソフト名】 No.26:超低コスト化の各種手法

【パスワード】costbalance_mbclk

【番号】表中のNo.1


参考文献

(1) 國井良昌, ついてきなぁ!品質とコストを両立させる『超低コスト化設計法』, 日刊工業新聞社刊.


<正員>

國井 良昌

◎國井技術士設計事務所 所長/技術士(機械部門)
◎専門:機械設計、設計工学

ホームページ:https://a-design-office.com/
ブログ:https://kunii.biz/

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