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2026/3 Vol.129

装置製作:高山芳の
(多摩美術大学大学院美術研究科デザイン専攻 統合デザイン領域 在籍)
金属・磁石・モーターなどの単純なメカニズムを用いた装置は、重力や摩擦を受け入れながら、ある行為を繰り返します。その姿は、私たちが呼吸し、脈を打ちながら生きていることを思い出させます。本誌では、学部の卒業制作である 10 体の装置〈脈拍〉を中心に、全 12 体の作品を紹介します。

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活動報告

認証不正研究会報告書の発表にあたって

ここ数年、日本の自動車関連企業で不正や品質問題が続き、道路運送車両法に基づく型式指定に関連して認証不正が問題となっている。これらの認証不正に対しては、ガバナンスの欠如に原因があるとして、メーカーを強く批判する論調も見られる。しかし、認証不正に至った理由はそれぞれの事例で異なっており、不正の背景として、いわゆる「過剰品質問題」を指摘する論者も存在する。

そこで、公表された個々の不正事例について、法令の要求する検査基準と、現実に行われた検査態様のそれぞれを明らかにすることが必要である。その上で、表面に浮上した事例の背後にいかなる問題が存在するかを明らかにすることを目的として、法工学専門会議に認証不正研究会を設置して、検討が進められた。本報告書はその検討結果を報告するものである。

それぞれの事例の問題点は本文で個別に検討されている。個別の検討の結果として明らかになったことは、検討対象となった9つの事例のうち、ガバナンスの欠如の観点から、不正と非難されても弁解の余地がないと考えられるものが3例あった。しかし、その他の事例については、①指定された方法では試験コストが高額になることが不正の動機であるもの、②安全確保の観点から代替的な試験方法でも目的を達すると考えられるものの、③審査機関との協議のハードルが高いために、協議を経ずに代替的な試験方法を用いたもの、④国際的な試験方法の統一が必要であると考えられるもの、⑤車種ごとに試験を行う建前の下でモデル間のバリエーションがある場合にどこまでを同一車種と認めるかについての基準が不明瞭であったことが原因であると考えられるもの、が存在した。

道路運送車両法は、新車登録に求められる新規検査の代替手段として、型式指定された自動車に対しては、メーカーが新車の出荷時に発行する完成検査終了証による新車登録を認めている。この制度は、自動車の安全性と検査コストの低減を両立させることに意味がある。本研究の成果が公表されることにより、法令違反の背景に踏み込んで、自動車の安全性を損なうことなく、型式指定を得るために求められる検査を合理化して、メーカーの負担を軽減する方策が検討されることが望まれる。

日本機械学会 法工学専門会議
委員長 平井 省三

A-TS 21-07 認証不正研究会 報告書

第1章 はじめに

ここ数年、日本の自動車関連企業で不正や品質問題が続いている。2023年4月、X社が型式指定の申請に関する認証不正を公表した(1)。2024年6月には、国土交通省が、A社、B社、D社、E社、C社の5社による認証不正を公表した(2)。この中で認証不正に至った理由は各社異なっており、A社、D社、B社のケースなどでは、「クルマの安全性について技術的には問題はないが、法令遵守していなかった」という主張も見受けられる。

このような状況において、法工学専門会議では、法制度やその運用が技術的な合理性に適うものであるかを検証するという法工学の研究対象として認証不正の問題をとりあげることを決定し、2024年7月5日に本研究会を設置した。その後、WEB会議によって4回の検討会を開催し、道路運送車両法に基づく保安基準に準拠して定められた試験方法と、「不正」として公表された事例における試験方法の対比を行い、定められた試験方法と実際の試験方法の違いを生じた背景を含めて、議論が重ねられた。

本報告書は、研究会における議論の結果を要約して報告することにより、道路運送車両法という法律に基づき設けられている保安基準や適合性を担保するための型式指定制度の運用が本当に安全に寄与してるのか、改良の余地はないのか、という観点から、それぞれの「不正」について背景を述べ、その上で制度自体の運用に改善の余地はないかという観点からの意見を述べるものである。

認証不正研究会

主査 近藤惠嗣(福田・近藤法律事務所)

幹事 根本泰行(足利大学)

委員 平井省三(日本工営(株))

安藤慶昭(産業技術総合研究所)

泉井一浩(京都大学)

今枝幸博〔村田機械(株)〕

植松美彦(岐阜大学)

浦島邦子(名古屋大学)

大上浩(東京都市大学)

大須田光宣(テュフズードジャパン)

岡本満喜子(関西大学)

加藤浩(日本大学大学院)

斎藤了文(元・関西大学)

坂井彰(日本原燃(株))

佐々木正信(東京電力EP)

隅藏康一(政策研究大学院大学)

関根康史(福山大学)

中尾政之(元・東京大学)

中楯浩康(信州大学)

中村城治(中村技術士事務所)

長根裕美(千葉大学大学院)

松本良(大阪大学)

用語

本報告書において用いられる略称の正式名称を以下に示す。

保安基準:道路運送車両法道に基づく「道路運送車両の保安基準」(昭和26年運輸省令第67号)

細目告示:道路運送車両の保安基準の細目を定める告示(平成14年国土交通省告示第619号)

TRIAS:Traffic Safety and Nuisance Research Institute’s Automobile Type Approval Test Standard。(独)交通安全環境研究所の自動車審査部が作成している、保安基準に適合しているかを審査する場合に規範とされる試験方法

1958年協定:自動車に関する統一基準の制定と相互承認を目的に1958年に締結された、国連欧州経済委員会(UN/ECE)の多国間協定である「車両並びに、車両への取付け又は車両における使用が可能な装置及び部品に係わる統一的な技術上の要件の採用並びに、これらの要件に基づいて行われる認定の相互承認のための条件に関する協定」

協定規則:1958年協定で定められた、自動車の構造及び装置に関する規則

第2章 型式指定制度の概要

自動車の新規登録

道路運送車両法4条の規定により、自動車登録を受けていない自動車は道路を走行することができない。新たに自動車登録を受けるためには、原則として、自動車の新規検査を受けて保安基準に適合することが認められなければならない。保安基準は、自動車の構造に関して定められている保安上又は公害防止その他の環境保全上の技術基準であり、道路運送車両法40条の規定に基づいて国土交通省令によって定められている。

型式指定

自動車の新規登録の原則に従うと、すべての新車登録にあたって新規検査が必要となり、自動車の登録事務に過大な負担がかかることになる。そこで、道路運送車両法は型式指定という方法によって新規検査の負担を軽減している。

型式指定制度の下では、まず、量産車のメーカーが製造する特定の型式の自動車が保安基準に適合していることについて審査を受けることによって型式指定を受け。型式指定を受けた型式と同一の自動車を製造した場合、メーカーは完成検査終了証を発行する。これは、製造された車両が型式指定の際に審査を受けた型式と同一であることを完成検査によって確認したことを証明するものである。型式指定を受けた自動車の新規登録にあたっては、新規検査は行われず、完成検査終了証を確認することによって新規登録がなされる。

認証不正とは

本報告書で検討する「認証不正」は、量産車のメーカーが型式指定を受ける際に審査のために提出したデータ等の記載に「不正」と呼ばれ得る記載があったことである。検討の対象とするのは、上述の型式指定の制度によって求められている手続が正しく行われたか否かであって、製造された自動車が保安上又は公害防止その他の環境保全上の観点から実質的な危険性、有害性を有していたか否かを直接的に検討するものではない。

第3章 個別事例の検討

事例1 歩行者保護試験における虚偽データの提出等(規定と異なる衝撃角度)[A社]

(1)保安基準の規定

保安基準第18条(車枠及び車体)により、「自動車の車枠及び車体は、当該自動車の前面が歩行者に衝突した場合において、当該歩行者の頭部及び脚部に過度の傷害を与えるおそれの少ないものとして、当該歩行者の保護に係る性能に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。」と規定されている。

(2)細目告示の規定

細目告示の「別添99歩行者頭部及び脚部保護の技術基準」には、前方衝突試験と後方衝突試験が規定されており、別添99の別紙3において、子供頭部インパクタ試験領域については「インパクタの衝突方向は、車両後方下向きとし、発射角度は50±2°とする。」、大人頭部インパクタ試験領域については「インパクタの衝突方向は、車両後方下向きとし、発射角度は65±2°とする。」と規定されている。

図1 頭部への衝突〔文献(3)をもとに作成〕

(3)問題とされた試験方法

大人と子供の身長差等を考慮して衝突角度が規定されているにもかかわらず、規定と異なる衝突角度で(50°で実施すべきところを65°として)試験を行った。

(4)問題点

大人と子供の身長差等を考慮して衝突角度が決められていることには合理性があり、原則としてメーカーが角度を変えて試験をすることは認められない。また、実施された衝突角度による試験が、試験目的に照らして安全側に設定されたと考えるべき根拠もない。したがって、規定通りの衝突角度で大人頭部インパクタ試験と子供頭部インパクタ試験を実施すべきであった。本試験項目は国際的な基準に従ったものであるが、当該メーカーは「衝撃角度65°の方がより厳しい試験条件であった」と説明しており、もし、それがより歩行者事故の実態に即した試験法であるとするならば、データを揃えた上で、事前に国交省や交通安全環境研究所と試験項目の妥当性について協議すべきであった。しかしながら、この事前協議をすることなく、規定と異なる衝突角度で試験を実施し、報告してしまったので、型式指定制度の運用上の問題に起因するとは認められない。その意味で、「不正」と評価されることもやむを得ないものと考えられる。

事例2 衝突試験における試験車両の不正加工等(エアバッグのタイマー着火)[A社・B社]

(1)保安基準の規定

保安基準第1条の3(破壊試験)により、「この省令に規定する衝突等による衝撃と密接な関係を有する技術基準については、当該技術基準が適用される装置と同一の構造を有する装置の破壊試験により適合するかどうかの判定を行わなければならないものとする。」と規定されている。

また、保安基準第18条(車枠及び車体)により、「自動車の車枠及び車体は、当該自動車の前面が衝突等による衝撃を受けた場合において、運転者席及びこれと並列の座席のうち自動車の側面に隣接するものの乗車人員に過度の傷害を与えるおそれの少ないものとして、乗車人員の保護に係る性能に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。」と規定されている。

(2)細目告示の規定

細目告示の「別添23前面衝突時の乗員保護の技術基準」には、前面衝突試験時の試験自動車の状態について、「運転者席より前方にある試験自動車の構造・装置は、改造してはならない。」と規定されている。

図2 前面衝突とオフセット衝突〔文献(3)をもとに作成〕

(3)問題とされた試験方法

運転者席より前方にある試験自動車のエアバッグを衝突では起爆しないようにし、タイマーを用いて人為的に起爆するように改造した上で、試験を行った。

(4)問題点

衝突試験において、「運転者席より前方にある試験自動車の構造・装置は、改造してはならない」と決められていることには合理性がある。従ってエアバッグを起爆させるためには実際に衝突させるしか無く、また起爆するためには衝突時にセンサーが働く必要がある。個々の試験は個別に確認できても2つの機能が複合的に正しく働くことを確認するためにはそれらを組合せて試験する必要がある。このため、規定通り「衝突→エアバッグ起爆→安全性能の確認」の試験は一体として為されるべきであった。(センサーが正しく感知してエアバッグが展開して乗員を保護するまでがエアバッグシステム全体の評価となる。エアバッグ単体だけを評価しているわけではない。)当該メーカーは「エアバッグの自動着火性能については既存モデルにおいて性能が確認できていた」と説明しているが、事前に国交省や交通安全環境研究所などの審査機関と当該データに基づいた協議をすることなく、規定と異なり試験自動車のエアバッグをタイマーで人為的に起爆するように改造した上で試験を実施し、報告したことは、型式指定制度の運用上の問題に起因するとは認められない。その意味で、明白な「不正」と評価されることもやむを得ないものと考えられる。

事例3 衝突試験における試験車両の不正加工等(規定と異なる台車重量)[A社]

(1)保安基準の規定

保安基準第15条(燃料装置)により、「ガソリン、灯油、軽油、アルコールその他の引火しやすい液体を燃料とする自動車の燃料装置は、燃料への引火等のおそれのないものとして、強度、構造、取付方法等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。」と規定されている。

(2)細目告示の規定

細目告示の「別添17 衝突時等における燃料漏れ防止の技術基準」には、前面衝突試験と後面衝突試験が規定されており、各衝突試験後の燃料漏れの量について、「衝突後各部より車外に流失又は滴下する燃料の量は、最初の1分間で30g以下であり、かつ、5分間で150g以下であること。」と規定されている。

後面衝突試験については、「自動車を試験場内に静止させ、インパクタを水平、かつ、車両中心面と平行な方向に50±2km/hの速度で車両の後面に衝突させる。ただし、試験がこれよりも高速度で実施された自動車が要件に適合した場合、当該自動車は要件に適合しているものとする。」と規定され、衝突させる台車及びインパクタの総質量は、1,100±20kgであることと規定されている。

図3 後面衝突〔文献(3)をもとに作成〕

(3)問題とされた試験方法

規定と異なる条件(台車とインパクタの総重量が1,800kg)で後面衝突試験を行った上、その事実を記載せず報告した。

(4)問題点

当該メーカーの「法規基準の1,100kgより重い1,800kgの評価用台車を使用し、より大きな衝撃で評価をした」「より試験条件の厳しい台車を用いた開発試験データを認証申請に使用した」には、一見合理性があるようにみえるが、必ずしもそうとは言い切れない(車体が破壊、変形する過程において1,100kgと1,800kgの台車による動的な変形量や応力伝達が局所的には比例になるとは言い難く、台車の重量が大きい方が燃料漏れの量が小さくなる可能性もあるので、一概に、「大は小を兼ねる」とは言えない)のではないか。

もし1,800kgの台車に正当性があると考えているのならば、それが正当である証拠(事故データやシミュレーション計算結果など)を示した上で、事前に国交省や交通安全環境研究所などの審査機関との協議をするべきだったが、それをせずに規定と異なる重量の台車で試験を実施し、報告したことは「不正」と評価されざるを得ない。しかし他方で、型式指定制度の運用上の問題がないとも断定できないと思われる。その意味で、本件は「不正」と断ずることにとどまらず、制度運用の改善の端緒とすることが望ましいと考えられる。

事例4 出力試験におけるエンジン制御ソフトの書換え[B社]

(1)保安基準の規定

保安基準第8条(原動機及び動力伝達装置)により、「自動車の燃料消費率は、告示で定める方法により測定されなければならない」と規定されている。

(2)細目告示の規定

細目告示の第10条(原動機及び動力伝達装置)には、「自動車の原動機の出力は、協定規則第85号の規則5.に定める方法により測定するものとする。」と規定されている。

協定規則第85号の規則5.のAnnex 1には、「電⼦制御が備わっている場合は、そのパフォーマンスに関する情報も提供される必要がある。」と規定されており、3.3.2.8. には「制御装置」、3.3.3.4.1.には「制御装置の番号」を記入する欄がある。また、Annex 5のTable 2には、「メーカーの生産仕様に準拠し、変更を加えずに使用すること」と規定されている。

(3)問題とされた試験方法

量産車両と同一状態のエンジン制御ソフトにより出力試験を行うべきところ、点火時期補正機能の一部を停止させた制御ソフトによる試験を実施した。

(4)問題点

量産車のエンジン制御ソフトには点火時期補正機能があり、試験車両のソフトにはその機能がなかったということである。点火時期補正機能が動作する場合は出力状態も大きく変化するものなので、その点が試験できないのであれば量産車で試験を行ったことにならないといえる。規則には「変更を加えずに使用すること」と定められていることから、不正である。点火時期補正機能の一部を停止させることにより再現性、信頼性のある試験結果が得られ、かつ、量産車による結果との差異がないというデータがあるのであれば、事前に国交省や交通安全環境研究所などの審査機関との協議をした上で試験を実施すべきであった。

事例5 騒音試験における不適正な試験条件での実施[C社]

(1)保安基準の規定

保安基準第64条の2(消音器)により、「内燃機関を原動機とする一般原動機付自転車には、騒音の発生を有効に抑止することができるものとして、構造、騒音防止性能等に関し告示で定める基準に適合する消音器を備えなければならない。」と定められている。

(2)細目告示の規定

細目告示の「別添38 近接排気騒音の測定方法」「別添39 定常走行騒音の測定方法」「別添40 加速走行騒音の測定方法」には、「騒音を測定する装置は、使用開始前に十分に暖機し、その後校正を行った上で使用すること。」と規定されている。

そのために、「別添39 定常走行騒音の測定方法」には、「試験自動車を騒音測定区間の十分前から定常走行させ」「試験速度は原動機の最高出力時の回転数の60%の回転数で走行した場合の速度にあっては50㎞/h、その速度が40㎞/hを超える軽自動車(二輪自動車に限る。)にあっては40㎞/h、その速度が25㎞/hを超える第一種原動機付自転車にあっては25㎞/h±1.5㎞/hの速度であること。」と規定されている。

「別添40 加速走行騒音の測定方法」には、「試験自動車を騒音測定区間の十分前から定常走行させ」「試験自動車を騒音測定区間内において全開で加速させ」ると規定されている。ここで「定常走行を行う速度は、自動車又は原動機付自転車が原動機の最高出力時の回転数の75%の回転数で走行した場合の速度にあっては50㎞/h、その速度が40㎞/hをこえる軽自動車(二輪自動車に限る。)にあっては40㎞/h、その速度が25㎞/hをこえる第一種原動機付自転車にあっては25㎞/h±1.5㎞/hの速度とする」と規定されている。

(3)問題とされた試験方法

規定より低いエンジン出力でコンディショニング(試験準備調整)を行い、騒音試験を実施した。

(4)問題点

騒音試験のコンディショニングを低出力で行うことにより、マフラーの劣化を抑制し、良好な騒音試験の結果を得るようにしたものであり、明らかにメーカーに有利な結果が得られる条件を採用することを目的としたものであることから、型式指定制度の運用上の問題に起因するとは認められない。その意味で、「不正」と評価されることもやむを得ないものと考えられる。

事例6 警音器試験における試験成績書の虚偽記載[C社]

(1)保安基準の規定

保安基準第64条(警音器)により、「警音器は、警報音を発生することにより他の交通に警告することができ、かつ、その警報音が他の交通を妨げないものとして、音色、音量等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。」と定められている。

(2)細目告示の規定

細目告示の別添75(警音器の技術基準)」には、「本技術基準は、協定規則第28号と調和したものである」と規定されている。

協定規則第28号に対応するTRIAS 43-R028(1)-01には、「社名・型式、商号又は商標、識別番号」を記入する欄がある。

(3)問題とされた試験方法

警音器試験において、試験車両の車台番号の虚偽記載を行った。

(4)問題点

型式指定制度は、試験車両が型式指定を受ける車種を正しく代表していることが前提となる。したがって、試験車両と型式指定を受ける車種の同一性を確認するための根拠として、正しい車台番号を記載することは、制度上、重要な手続である。本件は、車台番号の記載という形式的な違反を問題にしているように見えるが、制度の運用上、重要な要件であるので、メーカーが虚偽の記載をすることは許されず、直接に安全性に影響しないという理由で軽い違反であるとして看過することはできないことから、型式指定制度の運用上の問題に起因するとは認められない。その意味で、「不正」と評価されることもやむを得ないものと考えられる。(もし仮に、担当者のミスで誤記載があったとしても、気付いた時点で早期に報告しなければ。誤記載が虚偽記載と疑われても申し開きは出来ないくらいに自覚しておくべきである。)

事例7 騒音試験における試験成績書の虚偽記載等[D社]

(1)保安基準の規定

保安基準第30条(騒音防止装置)により、「自動車は、騒音を著しく発しないものとして、構造、騒音の大きさ等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。」と定められている。

(2)細目告示の規定

細目告示の「別添39 定常走行騒音の測定方法」「別添40 加速走行騒音の測定方法」には、「試験自動車の重量は、車両総重量であること。重量又は重量の和の許容範囲は、その±2%(車両総重量が1,000kg未満の試験自動車の場合は±20kg)以内とする。」と規定されている。

(3)問題とされた試験方法

加速時の騒音試験を低重量の車両で行い、定常走行時の騒音試験を高重量の車両で行った。

(4)問題点

同一モデルに複数グレードがあるような場合、排気系が道路運送車両法75条の2の「共通構造部」の技術的要件を満たす条件下では、加速試験を軽い重量、定常走行試験を重い重量で実施することの合理性は認められるのだから、同一モデルの異なる車両を用いて試験をすることは認められてよいのではないか。そうだとすれば、本件の問題は、単に試験車両の質量と異なる申請質量を記載したという、記載不備に限定されることになる。

規制の合理性という見地からすれば、初めから同一モデルの中で車重の重いグレードで定常走行試験を行い、軽いグレードで加速試験を行い、それぞれの試験の試験車両の質量を記載した方が合理的であり、規則や制度の方に改善の余地があると考えられる。

しかしながら、複数存在するグレードが、とれも同じ数だけ生産されて世の中に出るわけではない。自動車メーカー側も、複数グレードを設定する際には、最量販グレードと、少数しか販売しないグレードに分けで販売計画を立てており、世の中に影響を与えるとしたら、最量販グレードとなる。したがって、同一モデルに複数グレードがある場合には、最量販グレードで試験を行うべきではないか。その意味で、本件は、型式指定制度の運用上の問題に起因するという評価も可能であり、一方的に「不正」と評価することですまされるべきものではないと考えられる。

事例8 制動装置試験における試験成績書の虚偽記載[E社]

(1)保安基準の規定

保安基準第12条(制動装置)により、「自動車には、走行中の自動車が確実かつ安全に減速及び停止を行うことができ、かつ、平坦な舗装路面等で確実に当該自動車を停止状態に保持できるものとして、制動性能に関し告示で定める基準に適合する二系統以上の制動装置を備えなければならない。」と定められている。

保安基準第70条(制動装置)により、「乗用に供する軽車両には、適当な制動装置を備えなければならない。」と定められている。

(2)細目告示の規定

細目告示の「別添12 乗用車の制動装置の技術基準」の別紙1「制動試験及び制動装置の性能」では、「タイプ-I試験(フェード試験及び加熱冷却後試験)」において、「加熱手順の終了時点で主制動装置の原動機を切り離し、タイプ-O試験(常温時制動試験)と同じ条件で高温時制動試験を実施するものとする。」「この高温時における制動性能は、規定値の75%以上、かつ、原動機を切り離した状態でのタイプ-O試験での測定値の60%以上であること。」と規定されている。

(3)問題とされた試験方法

試験条件として、加熱冷却後試験の規定値の75%かつ常温時制動試験での測定値の60%以上の操作力で制動することが定められているところ、主制動装置であるブレーキペダルの踏力が不足していたために、停止距離が想定よりも長くなってしまったので、その結果に基づき正しい踏力の場合の停止距離を算出することで、試験結果を補正して試験結果として記載した。

(4)問題点

試験条件として、規定の踏力で制動して試験することが定められているところ、メーカーが数値計算によって試験結果を補正して試験結果として記載することは認められない。この場合、試験をやり直し、規定通りのデータを取得すべきであった。したがって、型式指定制度の運用上の問題に起因するとは認められない。その意味で、「不正」と評価されることもやむを得ないものと考えられる。

第4章 まとめ

  • 事例1、2、3の不正の背景として、1回の試験に多大なコストがかかるという問題(メーカー側からすると「絶対に失敗が許されずにやり直しもきかない」)があると考えられる。
  • 事例3と4の不正の背景として、事前に国交省や交通安全環境研究所などの審査機関との協議を行うことのハードルの高さも存在するものと考えられる。
  • 事例3は、輸出先の試験法と国内の試験法に差異があるため、より厳しい輸出向の試験法をしてしまい「大は小を兼ねる」という理屈で不正をしてしまったケースである。輸出先の試験法と国内の試験法を同一にしていく、ということも考えていく必要があるのではないか。
  • 事例5、6、8は、型式指定制度の運用上の問題に起因するとは認められない。その意味で、「不正」と評価されることもやむを得ないものと考えられる。
  • 事例7は、規則や制度の方に改善の余地があると考えられる。同一車種に複数グレードが存在する場合には、個々のグレードごとに型式指定の対象とせず、社会通念上の同一車種を型式指定とする一方で、型式指定の申請にあたって提出する試験データの対象となるグレードの選択については、メーカー側が「自社にとって有利なグレードを勝手に選ぶ」のではなく、同一車種の中で、対象となる試験ごとに、試験内容を考慮して「最も不利益なグレード」を試験車に選ぶように選択基準を設けて、メーカー側に「グレード選択理由書」の提出を義務付けるような方法は可能なのではないか。

参考文献

(1) https://www.daihatsu.com/jp/news/2023/20230428-3.pdf(参照日2026年2月18日)

(2) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001746269.pdf(参照日2025年12月26日)

(3) https://toyotatimes.jp/toyota_news/1060_1.html(参照日2025年12月26日)


A-TS 21-07 認証不正研究会

主査 近藤 惠嗣

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