日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第52号

吉野山ロープウェイ

 吉野山ロープウェイは、旅客運送用として1929(昭和4)年3月12日より「千本口」駅と「吉野山」駅間の全長349メートル、高低差103メートルに搬器(ゴンドラ)2台で運行開始した、国内現役最古のロープウェイであり、架設当初の形態を現在までよく保つものとしては世界最古級である。
 技術的特徴として、2本の支索の間に走行機を配したえい索2本、平衡索2本による4線交走式機構が採用された(現在は平衡索を1本にまとめた3線交走式で運行)。また、停車場や支柱の大型化を抑えるため勾配にあわせた搬器形状が採用されている。さらに、戦後主流となるロックド・コイル・ロープと呼ばれる表面を平滑化したロープの先進的使用もみられる。
 架線支持部材や支柱は、架設した安全索道商会(現安全索道)の保守により、80年以上経過した現在でも現役であり、これらは当時のわが国の材料力学、金属材料技術の優秀さを示す証といえる。
 このロープウェイは、創業者 内田政男の「地元のために人を運ぶロープウェイを作りたい」との想いから、地元有志と共に苦労して実現化し、戦時下の金属供出令の中でも住民の交通手段を守りぬいた。
 吉野山ロープウェイは、わが国有数の桜の名所である吉野山と世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の出発点に位置する交通機関として今日なお、多くの観光客に利用されている。

《写真提供:(左)吉野大峯ケーブル自動車株式会社・(右上)日本機械学会》

現在運休中

吉野山ロープウェイ

利用時間:
9:20~17:20(入館は17:20まで)
利用料:
大人片道450円 往復800円
子供片道230円 往復400円
住  所:
〒639-3115 
奈良県吉野郡吉野町吉野山79
電話番号:
0746-39-9254
(営業時間以外 0746-39-0010)
HPアドレス:
http://www.yokb315.co.jp
交通機関:
近鉄吉野駅から徒歩2分

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