第10期関東支部長挨拶
産官学連携の課題


早山 徹 支部長
 このたび皆様のご推挙により、日本機械学会関東支部長に就任いたしました。当支部の10周年という大事な節目の年にあたり、支部の発展に少しでもお役に立つよう努力してまいりたいと思っております。
 現在の日本は長い間続いた高度成長時代の体質から脱しきれず、極めて難しい局面に遭遇しています。この局面を打開するには、科学技術のレベルを上げ、他国にまねの出来ない独自の技術、高いレベルの技術をベースにした製品・システムを世に出していくことが重要といわれています。すなわち新しい知識の創出とそれらの知識を統合して新しい製品やシステムを生み出していくことが求められています。前者はどちらかというと大学が得意とするところであり、後者はどちらかといえば企業が得意とするところですが、それらが連携、協力していくことが極めて重要で、産官学連携が叫ばれています。日本機械学会、とりわけ関東支部においても従前からこのテーマに取り組んできておりますが、重要なるが故に更なる努力が必要であり、この国家的ニーズに沿って努力していくことが本会、本支部の更なる発展のために必要と思います。
 私も長年にわたり民間企業で研究開発に携ってきた経験から、産官学連携の課題について述べてみたいと思います。昭和30年代後半から50年代にかけて、高度成長時代の企業は、欧米にお手本がある研究開発を、スピードアップのために大勢の人をかけてやっていたように思います。当時、企業利益も出ており、人件費も国際水準に比べ安く、競争上機密を保持したいということもあってすべて自前でやっていましたので、大学のお世話になる必要もありませんでした。
 一方、大学も企業の片棒を担ぐようなことを潔しとせず、経常的な研究費で独自に研究をやってきたように思います。そのため工業上の課題、ニーズに関する情報は少なく、研究の評価においても産業にどのくらい役に立ったか等はほとんど問われなかったように思います。
 高度成長が終わり、企業は円高、大競争時代のあおりを受け、研究開発コストの負担が重くなると同時に、お手本もなくなって、基礎的研究に時間とお金を割くことが出来なくなりました。
 最近になって大学も競争が激しくなり、競争的資金を得る、企業と結びついて研究費を捻出するなどの必要に迫られるようになり、産学連携の背景は整ったかに見えますが、今まで別の世界で、別の価値観でやってきたものが急に一緒にやろうと思ってもなかなかうまくいくものではありません。
 まず相互の理解を深め、実戦の中で互いに一歩踏み込んで歩み寄りながら連携を深めていくことが必要と思います。中でも最大の問題点は研究開発のマネージメントです。ニーズやシーズに基づいて何を開発するかを決めること、とりわけ複数の技術を組み合わせてどのような製品・システムが出来るかの目利きが重要です。さらにそれを実現するための綿密な計画と技術者を束ねて目的の製品・システムを完成に導くマネージメントが重要です。
 関東支部には大学にも企業にも多くの有能な研究者、技術者、研究開発マネージャーがおられます。この関東支部を連携の場として活用して頂き、産学連携の成功例が生まれることを期待します。

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