「材料力学について思うこと」
今期(第77期)副部門長
幡中憲治(山口大学)
はからずも本年4月より材料力学部門副部門長をお引き受けすることになりました.及ばずながら庄司次期部門長をサポートし,部門の発展に微力を尽くしたく存じますので,何卒よろしくご協力賜りますようお願い申し上げます.
材料力学が,これまで,機械・機器・構造物の健全性を確保するために果たしてきた役割は極めて大きい.今後も新しい応力・ひずみ解析手法,構造解析手法,最適設計手法等を開発・導入しつつ材料力学がこれらの安全性を保障するために主役を演じていくであろうことに異論はあるまい.近年,本部門の活動範囲は上述した分野に加え,電子部品・マイクロエレメント,さらにはナノスケールの問題にも及んでいる.これは材料力学が既存の殻を破り,さらなる飛躍を目指して発展している証左であり心強い限りである.
ところで,平成9年に科学技術基本法が制定され,さらに,これに基づく基本計画が策定されて以来,文部省およびそれ以外の省庁から提示される大型研究プロジェクトの応募の機会が増してきた.これらに採択された研究テーマの中で材料力学関係のものが意外に少ないと感じるのは小生のみであろうか.一方で化学・物質・金属工学等,材料の創製と関連した分野からの採択件数が多いように思われる.昨今の厳しい経済環境にあって,企業の研究者・技術者の方から材料強度関係の基礎研究部門が縮小される傾向にあるとも聞き及んでいる.また,本会学術講演会の材料力学関連セッションにおける企業からの研究発表と参加者数が少ないとの指摘もある.このように材料力学周辺を取り巻く環境には明るくない側面もある.
最近,材料力学が傾斜機能材料や各種先進複合材料等の創製過程に直接関わる機会が増えてきている.そして,このとき問題となる熱応力,界面の強度制御,異方性・不均質特性等を対象とし,材料設計の段階で材料力学による解析が重要な役割を果たした研究発表が目を引くようになってきた.このような分野に一層積極的に取り組んでいくことが材料力学の更なる発展に繋がる一つの方策となり得るのではなかろうか.
さて,この機会を借りて,本年7月21日(水)
〜 24日(土)に宇部市で開催される本部門主催の実験力学先端技術国際会議[The International Conference on Advanced
Technology in Experimental Mechanics '99 (ATEM '99)]
をご案内させていただきたい.本国際会議は材料力学部門が主催して開催してきたATEM '93(金沢),ATEM '95(東京),ATEM
'97(和歌山)に次ぐ一連の国際会議の第4回目にあたる.本会議には世界15ヶ国以上からの参加者による,材料の応力・ひずみ・変形・強度・破壊などの計測・解析,コンピューター支援設計とデータ処理,画像処理技術,光学的計測,衝撃下の力学的特性の計測・評価,高温・超高温材料の創製・物性・力学的特性評価等に関する約130編の論文の発表が予定されている.多数の方々に参加していただき活発な討論が展開されることを期待しております.なお,詳細はホームページ
(http://mr20.me
ch.yamaguchi-u.ac.jp/ atem99/) をご覧下さい.
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