94期部門長挨拶 -IoT環境下のスマートファクトリー(つながる工場)時代の生産システム部門の活動-

このたび、第94期生産システム部門の部門長を仰せつかりました東京理科大学の日比野です。よろしくお願い申し上げます。
生産システムは、変動する6つの環境である、「社会環境」、「自然環境」、「ものづくり技術環境」、「基盤技術環境」、「労働環境」、「国際環境」の影響を受けながら、柔軟にそれらの影響に対応する必要があると考えています(図1参照)。それぞれの環境におけるニーズやシーズは時々刻々と変化しており、変化するニーズやシーズを考慮した生産システムを機敏に開発し、最適化することが、これまでも、そして、今後も重要であると考えています。
 

特に、近年、「ものづくり技術環境」や「基盤技術環境」ではICT関連技術の進展が早く、第四次産業革命と呼ばれているIoT環境下のスマートファクトリー(つながる工場)を実現するためのシステム化技術、要素技術、標準技術等の開発が活発化しており、生産システム関連技術開発は、従来の企業間の開発競争に加え、国家的な開発競争領域となりつつあります。特に、Industrie4.0(ドイツ)、IIC(Industrial Internet Consortium)(米国)など国レベルの産学官連携技術開発活動が活発化しております。生産システム部門におきましては、このような動きに対応し、学会として対応可能な研究分科会の設置、講演会・講習会の企画などを行っていきます。
研究分科会として、一昨年度に企画いたしました「つながる工場研究分科会」(インターネットを活用した「つながる工場」における生産技術と生産管理のイノベーション研究分科会)では、産学官100名以上の参加者により、つながる工場の利点や課題を抽出・明確化を行い、当初の目的を達成し、2016年3月に成功裏に終了しました。より発展的な活動を実施するために、一般社団法人IVI(インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ)を発足し、活動の場を移し、産学官連携によるつながる工場の実証検証活動を始めております。
そこで、2016年度生産システム部門では、新たにIoT環境下でつながった先にある、工場の将来展望を研究テーマとした「つながるサイバー工場研究分科会CPPS: Cyber Physical Production System」の活動を開始しております。CPPSは、生産システムを対象としたCyber Physical Systemであり、現実世界であるPhysicalとコンピュータ上の仮想世界のCyberとを連携して、ものづくりにおいて新たな価値を創造するものづくりマネジメントのためのシステム技術です。Physical世界のCyber世界への転写率が高まるとCyber世界において、システムの振る舞いの予測精度が進展し、様々な意思決定の精度が高まり、かつ、意思決定の規模・範囲が大きくなり、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンにおける効率化が進むと考えられます。産学官の専門家30名以上の参加者により、CPPSの将来動向について2年間検討する予定です。本研究分科会では、「社会環境」に対応する既存の生産の方法のみならず、例えば「労働環境」での少子高齢化社会対応生産、「自然環境」のサステナブル生産や省エネルギ生産、「グローバル環境」でのグローバル生産などの新しい生産の方法も対象として、CPPSを実現するために必要な要素技術やリファレンスモデル等について整理する予定です。分科会の成果は、部門講演会、講習会などを通して、発信していく予定です。なお、2017年3月の部門講演会で中間発表を行う予定です。
また、「ものづくり技術環境」に関係する新技術としての「アディティブマニュファクチャリングにおける生産システム工学の研究分科会」を一昨年年度から企画しておりますが、2016年度も引き続き実施し、3Dプリンタをはじめとする材料積層による造形加工方法について研究を進めます。
講演会としては、3月に開催する部門講演会の他に、つながる工場の国際的な動向の講演、研究所見学会、自動車生産工場見学会を企画しております。
講習会として、昨年度よりIoT環境下の「シミュレーションによる生産システム設計講座」を企画し、生産システムシミュレーションの個人別操作体験演習による生産ライン設計を行っておりますが、好評のため今年度も引き続き実施させていただきます。
生産システムに対して重要性が増している時代に生産システム部門はその一翼を担うべく活動させていただきます。今後とも御支援・御協力お願い申し上げます。

2016年度(94期)部門長  日比野浩典(東京理科大学)