95期部門長
東京大学大学院
工学系研究科
原子力専攻
教授 岡本 孝司

 このたび第95期動力エネルギーシステム部門の部門長に就任しました、東京大学の岡本です。動力エネルギーは、社会の根幹をなす基盤技術として、現代社会を支えている力持ちです。基盤技術をシステムとしてとらえて、着実に技術を進め、コミュニケーションをとりつつ、社会に貢献していくために、学会および部門として積極的に活動をしていきたいと思っています。

 東京大学工学部に、システム創成学科という学科ができて、20年近くになります。工学で扱う対象がどんどん複雑化し、単純な物理だけではなく、社会的要因を含めて考え、システムとしての安全や効率を担保することが必要になってきました。従来から、総合工学というキーワードがあり、航空機や発電所といった複雑な工学システムが、複数の個別システムの総合的な相互作用の元に、社会に便益を供給する工学という捉え方がなされてきたものを、より充実させた考え方です。物事をシステムとしてとらえ、そのシステムが複数のサブシステムの統合として総合システムを構成するとともに、多数の階層的な要素システムが複雑で非線形な相互作用を行うようになっています。現代社会は、様々なシステムの相互作用の元に動いているため、システムの間には大きなひずみが隠れていることもあります。このような視点から、現代社会に生きる人類を技術でサポートするために、新しいシステムを創成していこうという気合の元に作られた学科がシステム創成学科です。すでに2000名を超える卒業生を社会に排出してきています。このシステム創成学科に、「環境・エネルギーシステム」というコースがあります。まさに、動力エネルギーシステムで扱う、火力発電・原子力発電から資源や輸送まで、幅広くエネルギーに関連したシステムを教えています。たまたま、今年度、岡本はこのコース長も拝命しており、エネルギーをシステムとしてとらえ、教育と学術を展開する1年になると期待しています。

 21世紀に入り、エネルギー産業が大きな転換期を迎えているのも確かです。高度成長期に作られた、様々なシステムが老朽化し、物理的にまた論理的に壊れ始めてきています。福島第一原子力発電所事故の影響は将来のエネルギーを考えるうえで、長期的な課題になっています。また、自由化によってエネルギー市場の仕組みが大きく変わり始めています。エネルギーは、現代社会の血液であり、公共事業としての性格は担保しつつ、かつ、公正な競争を進めることが必要になってきています。

 サステナブル、持続可能性という言葉が21世紀のキーワードと言われて20年近くが経ちました。ものを造り出す20世紀に対比して、ものを有効利用しロスを少なくすることで人類が生き延びる術を考えるだけで十分なのでしょうか。地球のキャパシティーを、社会活動が明らかに脅かしはじめており、その最も大きな要因がエネルギーです。21世紀の、最も重要で、カギとなるシステムが、動力エネルギーシステムだと思います。

さて、先日、太陽光発電パネルが天井に乗ったプリウスPHVに乗り換えました。5年前に購入した旧型プリウスPHVは電池では18km位しか走りませんでした。新型プリウスPHVでは、電池容量が倍になっただけなのですが、走行可能距離が50km近くと3倍位になっています。また、1日炎天下においておくと、6km走行できるほどの電気が、太陽光でたまります。エネルギーの効果的な活用のために、技術の様々な進歩が体感できます。なお、経済的には(場合によってはCO2排出量としても)、全く成立していないことは承知の上です。しかし、「気持ち」の持ちようで、なんとなく得した気分になります。

 21世紀の日本において、社会システムの根幹をなすのは、個々人の、このような「気持ち」の持ちようかもしれません。サステナブルなシステムを作り上げるために、技術を追求するのは技術者ですが、技術が社会システムのサブシステムとして活用されるためには、社会全体としてのサステナビリティを考えていく必要があることを改めて認識させられます。単なる社会とのコミュニケーションだけではなく、社会をシステムとしてとらえて、協調や連携を考えていかねばならないのだと思います。  第95期部門長として、社会基盤システムとしての、動力エネルギーシステム部門を盛り立てていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。