96期部門長
東芝エネルギー
システムズ株式会社
統括技師長
佐々木 隆

 この度、第95 期岡本部門長(東大)の後任として、第96期動力エネルギーシステム部門の部門長の大任を仰せつかりました東芝の佐々木です。犬丸副部門長(電力中央研究所)を初め、関連委員会の委員の皆様方のご協力を頂きながら、世の中に貢献する動エネ部門となるよう、そのコンテンツの充実、並びに、情報発信を推進していく所存で御座いますので、何卒宜しく御協力のほど、お願い申し上げます。

 さて、地球温暖化対策としての温室効果ガス削減の取組みは、1992年の国連気候変動枠組条約に始まりました。そして、1997年に出された京都議定書、2016年のパリ協定と進み、“脱”炭素社会に向けた動きが世界的に加速しています。これらの動きは、私たちの身近な業界でも肌感覚としても感じられます。例えば、CO2排出量の少ない天然ガス燃料へのシフト、即ち、脱石炭火力の動きが進んでいますが、これは欧米の種々の“反石炭”融資政策のみならず、昨今の天然ガス価格低下にも後押しされています。また、再生可能エネルギーの利用に関しては、その拡大と言った各国の政策的な動きや一般社会からの要請、更には、太陽電池や風車の大幅な価格低下にも後押しされて、その大規模な普及が既に実現しつつあります。例えばこの影響で、欧州で最新鋭の高効率火力発電所(天然ガス焚き)が閉鎖に追い込まれたのは記憶に新しいところです。このような、来るべき電源ポートフォリオの大きな変化は、従来の発電機器の高効率化や単なる再生可能エネルギーの導入に加え、基幹電源と分散電源の在り方、系統の安定性、特に、天候の変化に左右される不安定な再生可能エネルギーの制御と蓄電池の活用等、様々な技術的課題を提示しています。

 一方、AIやIoTと言ったデジタル化の波が押し寄せてきており、世の中は大きく変わろうとしています。巷ではビットコインが新聞を賑わせ、私たちの家庭の中にも、スマートスピーカーやAI犬等が既に入り込み始めました。動力エネルギーシステム部門が扱うエネルギーや電源の世界も、その例外ではありません。VPP(バーチャルパワープラント)技術を用いたエネルギーマネージメントやグリッドの安定化、デジタルツインを駆使した個々の発電機器の最適制御、中小規模の地域を対象としたエネルギーアグリゲーション技術等々、このデジタル化の波は、“脱”炭素に関連する様々な技術的課題の解決に大きく寄与していくものと思います。そして、これらの状況は、いろいろな規制緩和と言った社会環境の変化とも相まって、私たち動力エネルギーシステム部門の領域においても、アカデミズムの世界で取組むべき新たな研究要素や、産業界での新たなビジネスチャンスを提供し続けていくものと思います。

 本動力エネルギーシステム部門は、皆様御存知の通り、アカデミズムと産業界がバランス良く融合している、と言う観点で、機械学会の中では極めてユニークな存在です。ひとつの技術領域に留まらず、広範囲な領域で様々な角度からの社会貢献が可能な部門であると言うことができると思います。このため、今述べたような大きな変化の流れの中にあって、本部門の機械学会における重要性、これが、増えることはあっても減ることはありません。皆様と一緒に、大きく変化していくエネルギー環境の中で、即ち、“脱”炭素社会とデジタル化に向けた流れの中で、部門として社会貢献を果たして参りたいと思います。