No.224 学会のすゝめ
2025年度庶務理事 大岩孝彰〔静岡大学 名誉教授〕
JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。本会理事が交代で一年間を通して執筆します。
2025年度庶務理事 大岩孝彰〔静岡大学 名誉教授〕
No.224 学会のすゝめ
長年にわたり本学会をはじめ、いくつかの学会に参加してきましたが、今年3月をもって大学を定年退職いたしました。今回このコラム執筆の機会を頂きましたので、一区切りとして私自身の経験を振り返りつつ、学会活動の魅力をお伝えしたいと思います。
初めての学会発表は、修士課程2年の修了間際でした。当時の口頭発表はスライド映写によるもので、暗い会場の中、緊張のあまり手が震えたことをよく覚えています。会期中には現在のような学生や若手向けのイベントもなく、学会発表は単なる卒業要件の一つに過ぎませんでした。質疑応答を楽しむ余裕もなく、懇親会で他の参加者と交流することもほとんどありませんでした。
そんな学会に対する意識が大きく変わったのは、ある部門の下部組織である企画委員会に誘われたことがきっかけでした。講演会・講習会やオーガナイズドセッション(OS)の企画立案に携わる中で、他大学の教員や企業の技術者の方々とのつながりが急速に広がりました。委員になって間もなく幹事を任され、右も左もわからない中でさまざまな雑務をこなすうち、自然と委員会メンバーとの関係も深まっていきました。
当時始まったばかりの部門講演会は、地方の温泉宿で開催され、懇親会では浴衣姿で大広間に集まり、腰を据えて語り合うというユニークなスタイルでした。宿泊は相部屋が基本で、面識のない参加者同士が寝食を共にし、夜遅くまで部屋を行き来して交流を深めるのが恒例でした。会期中にセッションのない時間帯を利用して、社会見学(観光)に出かける楽しみもあり、講演会が終わるころには、すっかり打ち解けた関係が築かれていました。
部門には比較的近い専門分野の方が集まるため、講演会や講習会の企画では、自分の興味に沿ったテーマで、楽しめる内容を目指しました。自ら講師を務めることもあれば、知人に依頼して講演をお願いしたり、新たな人脈を紹介いただいたりと、人的ネットワークの拡大にもつながりました。
こうした活動の中で、JSMEテキストシリーズの執筆という光栄な機会も頂きました。複数の教員・研究者による分担執筆のため、執筆者会議を定期的に開催しましたが、主査の提案で各担当者の地元で持ち回り開催としました。移動は車で相乗りし、道中の観光を楽しんだり、宿で深夜まで活発な議論を交わしたりと、貴重な時間を過ごしました。
また、私がある委員会の委員長を務めた際には、こうした経験を活かして、委員会開催も各委員の地元で持ち回りとしました。これにより、単調になりがちな委員会を地方訪問や研究室見学、懇親会なども楽しめる、活気ある会合へと変えることができました。
機械学会以外では、某学会傘下の技術委員会にも所属しました。この委員会では年に数回の講演会や見学会を開催するほか、いくつかの小委員会に分かれて活動しています。私はそのうちの一つの小委員会を四半世紀にわたって担当しましたが、ここでも持ち回り開催、企業や研究室の見学、懇親会などを組み合わせて、参加者全員が楽しめるよう努めました。また、この技術委員会では日韓および台湾での国際会議を隔年で持ち回り開催しており、地元・浜松での開催時には現地実行委員会を主宰しました。これを機に、海外にも多くの知己を得ることができたのは、私にとって大きな財産です。
さらに、新型コロナ感染拡大直前には、ある学会の全国大会において開催責任者を務めました。会期の1年半前から学内の実行委員会で準備を進め、通常の講演に加えて、学生会員や企業の会員も楽しめるような多彩な併催イベントを企画・実施しました。なかでも、学生のポスター発表会の表彰式・懇親会と併せて、企業の若手技術者や人事担当者との交流会を開催するなど、学生のキャリア支援にも着目し、参加者双方の参加満足度向上を目指した取り組みも行いました。
以上、私が体験してきた学会活動の一端をご紹介しました。「学会」とは“Society”、すなわち共通の目的や関心を持つ人々が集まる場です。私にとって学会活動は、大学での教育や研究と同じくらい意義深く、情報交換や人的交流を楽しむ貴重な機会でした。近年、理事会では若手会員の増加対策について議論が続いています。本稿が、若い研究者・技術者の皆さんにとって、より楽しく、主体的に学会活動に関わるきっかけとなれば幸いです。