一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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No.227 「瀬戸内海に浮かぶ島~小島~」2025年度広報情報理事 新藤 貴志〔三浦工業(株)〕

JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。本会理事が交代で一年間を通して執筆します。


2025年度広報情報理事 新藤 貴志〔三浦工業(株)〕

No.227 「 瀬戸内海に浮かぶ島~小島~」

 

 

 

 


JSME談話室「き・か・い」についての執筆依頼がありました。何を書こうか、過去の執筆者の内容を拝見しながら皆さんが書かれているような高尚な内容は無理だ、しばし悩む・・・。

「JSME談話室「き・か・い」は、気軽な話題を集めて提供するコラム欄です。」と紹介文があり、少し気が楽になる。

今回は私の地元にある小島(おしま)について紹介したいと思います。私は四国にある愛媛県今治(いまばり)市に住んでいます。藤堂高虎公が「これ(今)からこの地を治める」として名付けられたといわれています(諸説あり)。

今治市と言えば、造船とタオルの町、また今治と尾道の間にある瀬戸内の島々を橋でつないでいるしまなみ海道があり、本州から四国に渡れる橋の3ルートのうち、唯一、自転車や徒歩で渡ることができます。瀬戸内の温暖な気候もあり、風景を楽しみながらのサイクリングは心地よく、さらに、夕日がとてもきれいなところでもあり、片道約80kmのルートはいろいろな感動が味わえると思います。

しまなみ海道は瀬戸内の島々を橋で繋いでおり、それぞれの橋にも個性があるため、橋をみることでも楽しめます。今治から尾道に向かうルートでの最初の橋が来島海峡大橋になります。来島海峡大橋は来島海峡第一大橋、来島海峡第二大橋、来島海峡第三大橋の3つの吊橋の総称で、総延長4.1kmあります。 

写真1 来島海峡大橋

写真2 海抜180mの橋脚上より、今治方面を望む

写真3 海抜180mの橋脚上より、尾道方面を望む

さて、前置きが長くなりましたが、今回紹介するのは今治市にあります小島です。この島は日本三大急潮流(鳴門、関門、来島)の一つと呼ばれる来島海峡に位置し、しまなみ海道の来島海峡大橋のすぐそばにあります。島に渡るためには波止浜(はしはま)港から出港し、造船所7社がひしめいて立ち並ぶ「造船長屋」を右手に見ながら、船に揺られて10分程度のところにある、周囲3kmの小さな島です。

この島は明治時代、日露戦争前にロシア艦隊の来襲に備えて瀬戸内海を防衛するために広島県の大久野島と愛媛県の小島に要塞を築き、芸予要塞として利用されていました。小島要塞は1899年(明治32年)から2年間の突貫工事で、当時の28万円の巨費を投じて建設され、1924年に廃止されるまでの短期間ですが要塞として利用されていました。小島には北部・中部・南部砲台があり、そのほかに、指令所、弾薬庫、発電所、地下兵舎などが設置され、砲台には榴弾砲(りゅうだんほう)、加農砲(かのんほう)、速射砲が設置されていたそうです。日露戦争時に小島より6門の28cm榴弾砲が戦地に送られ、そのうちの2門は旅順戦に使用され、現在、小島の船着き場にはNHKドラマ「坂の上の雲」で使用された28cm榴弾砲のレプリカが展示されています。

写真4_28cm榴弾砲のレプリカ

小島は要塞としての役割を1924年に終えた後、軍用機の爆撃演習の目標とされ、のちに地元に払い下げられました。1970年代以降に砲台跡地への遊歩道整備が行われ、管理も行われているため現在も徒歩でめぐることができ、遊歩道沿いには椿や紅葉がありゆっくりと散策できます。小島砲台跡は、我が国に現存する最大級かつ保存状態のよい明治期の石造り砲台であり、同時期に建築された、赤レンガ造りの発電所跡、弾薬庫あとも現存しており、建設当時の日本の状況もうかがい知ることができます。

写真5_発電所跡

写真6_弾薬庫跡

写真7_中部砲台跡

実際に現地を訪れて、木々に囲まれた小道の落ち葉を踏みしめながら歩くと、赤いレンガ作りの建物跡、大砲類はありませんが石造りの砲台跡がそこにあり、確かにここで明治の人々が生きていた熱量を感じることができます。また、木々に囲まれた小道を進むと、目の前が開け、青い空と日差しを反射してキラキラしている瀬戸内海を眺めることができ、すがすがしい海風を感じることもできます。古(いにしえ)に思いをはせるとともに、廃墟感に身をゆだねて現実逃避ができるような不思議な場所です。あまり知られておらず訪れる人も少ない場所ですが、機会があれば訪れてみてはいかがでしょうか。

写真8 弾薬庫跡への小道


参考文献1)鈴木 淳 小島砲台の歴史と価値 2011年12月 今治地方文化交流会

参考文献2)図子 英雄 小島砲台跡の今昔 2009年11月 今治地方文化交流会

参考文献3)芸予要塞・小島砲台跡の解説シート_土木学会 選奨土木遺産

芸予要塞・小島砲台跡の解説シート | 土木学会 選奨土木遺産