ロボフェスタについて    東北大学 中野栄二

 2001年にロボフェスタが開催されます.ロボフェスタはその名の通り,ロボットを中心にしたイベントであり,ロボメカ部門に関係の深い方も多数関わっています.今回は,まず最初にロボフェスタの全体像についてロボフェスタ中央委員会の理事長である東北大の中野栄二先生にご執筆いただきました.次にロボメカ部門が企画運営しているロボットグランプリについて前部門長で実行委員長の広瀬茂男先生にご執筆いただきました.ロボットグランプリは昨年度の大会で第3回を数え,神奈川競技会の中心的なものとなってきています.そのほかにも既存競技の中からロボカップについて鈴木昭二先生に,新規競技の中からロボットレスキュー競技について大須賀公一先生に,初心者や子供が参加できる参加型競技の中からロボコンジュニアについて岩本正敏先生にご執筆いただきました.(編集部)

1.ロボフェスタとは
 「ロボフェスタ」は、「ロボット創造国際競技大会 〜『ロボット・人間』科学技術未来の祭典〜」の愛称です。
 ロボフェスタ国際大会は4年ごとに開かれ、第1回は2001年夏から晩秋にかけて、大阪府を中心とする関西地区及び神奈川県で開催されます。その4年後の2005年の第2回以降の国際大会の開催地は未定です。また、国際大会のある年以外の年には、年に1度の国内大会が開かれます。そして、2000年には大阪と神奈川でプレ大会が開かれます。

2.ロボフェスタの目的
 ロボフェスタとは、一言でいえば、「ロボフェスタ運動」であると思います。クーベルタン男爵が提唱し、それに賛同する人々や国々が第1回オリンピックを実施し、これを国際的な動きに広めていったような「運動」に相当するものです。
 「ロボフェスタ運動」をスローガン的に箇条書きで表すと、だいたい以下のようになります。
(1)人類が平和で幸福な生活を営んでいくために科学技術の新しい方向への進歩、発展を促そう。
(2)将来を担う青少年に科学技術への興味を喚起し、ものづくりにより創造性と主体性に富む人材を育成しよう。
(3)世界の人々が科学技術を楽しみながら体験・理解し、人類と科学技術の共生について考える機会を提供しよう。
 さらにこれらをまとめて一言で表現すれば、「サイエンス・リテラシー」あるいは「知的スポーツのオリンピック」への運動だろうと思います。これを一般の人にわかりやすい形で示すために、ロボット競技の持つ総合技術性と適度な知的ゲーム性とを利用しようとするものです。

3.ロボフェスタの意義
 近代の科学技術の急激な発達とともに、その体現である身の回りのすぐれた製品や商品の中身がブラックボックス化してわかりにくくなり、それに呼応する形で、次代を担うべき青少年の科学技術に対する興味が急激に衰えていった気がします。これは多くの人が指摘しているところです。
 同時に、科学技術と人間社会の発展とともに、地球環境の悪化など、社会と生命生存の根幹を揺るがす現象が生じてきていて、それを解決する有力な手段の役割を担うべき科学技術への、若年層や一般人の強い疑念と興味の喪失という容易ならぬ事態が生じてきています。このような状態は、科学技術立国を標榜する我が国のみならず、国際的にも見過ごすことのできないことです。
 このようなとき、ものづくりの原点に立ち返り、一つひとつ自らの手で組み立て動かしていく手づくりロボットによる、適度なゲーム性と知的興奮を含む競技形式は、われわれの手元から去っていった科学技術を再び身近に引き寄せる、きわめて有効な手段であると言えましょう。
 さらに、一般に学校教育を受ける青少年層にとって高校や大学での学習は、マンパワー及び予算、スペースの制約から、講義室で教科書的な理論やアルゴリズムに基づく講義のみを受講する形式になりがちです。これだけでは、実際に自ら手を動かしてものづくりをし、これを制御しつつ動かしたり観察するときに覚える感動などとはかけ離れたものであることは明らかです。これに対してロボットの製作とそれを用いた競技を通じての知識の習得は、それまでの受動的学習とは異なり、どちらかといえば能動的・自己獲得的学習であり、講義で得た理論を実際に体験し確認することにより、非常にバランスの取れた知識と経験が身につくこととなります。
 また、未来技術たるロボット技術を実用化するに当たってクリアする必要のある代表的な技術障壁を競技ルールの中に組み入れることによって、多くの人が異なる視点と手法でこの障壁に挑むこととなります。それらの解決手段の中の優れた技術をさらに多くの人が発展させることで、この方面の技術の急速な進歩と実用化が図られることとなります。
 このような有意義な内容を含むロボット競技会を国際的なものとし、継続的に実施していくために、1999年4月にロボット創造国際競技大会中央委員会が設立されました。さらに2001年には国際委員会が設立される予定です。ロボフェスタ2001は、この中央委員会と開催地自治体、開催地実行委員会とが共同主催で実施するものです。

4.ロボフェスタ2001の概要
 ロボフェスタ2001はロボット競技、ロボットフォーラム、関連イベントの3本柱からなります。中でもロボット競技はロボフェスタの中心行事であり、多くの特色あるロボット競技会からなります。またロボットフォーラムはロボットと人間の共生をメーンテーマに、各国の有識者・経験者とともにロボットと未来社会との関係を考察します。関連イベントは先端ロボットを中心とする技術の展示や小中高生などによる楽しいプレゼンテーションが予定されています。そして、会期の最後にロボフェスタ宣言を採択して閉幕する予定です。
 ロボフェスタ2001の中心をなすロボット競技は、これまで各地で行われてきた、目的、内容ともにすぐれたロボット競技会(既存競技)と、ロボフェスタ設立を記念して開始される「新規競技」、さらに、主に若年者やロボット技術と無縁の一般人を対象とし、その場で組み立てて競技できる「参加型競技」の3種類からなります。
 既存競技としては、ロボカップ、ロボットグランプリ、知能ロボットコンテスト、全日本ロボット相撲大会、マイクロマウス競技、川崎ロボット競技大会、マイクロロボットコンテストなどがあり、新規競技としては、水を使ったアクロカップ、災害対応のレスキューロボットコンテスト、コンピュータシミュレーションによるロボカップレスキュー、福祉をモチーフとしたパートナーロボット大会など、また参加型競技としては、ロボカップジュニア、梵天丸キットを用いたロボコンジュニア、昆虫型ロボットのキットを用いたJST参加型競技などが予定されています。
 このようにロボフェスタ2001は、これまで行われた伝統と実績のあるロボット競技会をほぼ網羅するとともに、ロボフェスタ運動にちなんだ新設の競技や、小中学生を対象にしキットを用いることにより知識がなくても直ちに参加できる参加型競技などの、バラエティーに富む競技群を中心とした「ものづくりを基盤とする創造性の育成と科学技術の発展」を志向した意欲的な国家プロジェクトとなっています。
ロボフェスタの公式ホームページ: http://www.robofesta.net/


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Last Update :  2000/7/7

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