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技術ロードマップ委員会

2022年度年次大会技術ロードマップ委員会特別企画ワークショップ 開催報告

報告者 山崎 美稀(技術ロードマップ委員会委員長、(株)日立ハイテク)

 

2022年9月12日(月)に2022年度日本機械学会年次大会において技術ロードマップ委員会特別企画ワークショップを開催した。今年の年次大会は2022年9月11日(日)から14日(水)まで富山大学五福キャンパスにて対面での開催となり、本ワークショップも大学の会場にて開催した。本ワークショップでは、「持続可能な未来の実現のための技術ロードマップ」をテーマに、第1部に環境とエネルギーに対する招待講演による話題提供と、第2部に「持続可能な環境とエネルギー戦略に機械学会はどのように貢献できるかを考える」に対するパネルディスカッションを通じて、日本機械学会および機械工学分野における技術ロードマップ策定の今後の活用に反映していくことを目的とした。

 

表1 特別企画ワークショップのプログラム

第1部 招待講演

09:00~09:20 環境とエネルギーの相互補完的共存の未来

(日立ハイテク・山崎美稀、 技術ロードマップ委員会委員長)

09:20~09:40 計算力学分野における環境とエネルギー関連の取り組み紹介

(東京大学・吉村忍 教授 )

09:40~10:00 流体工学分野における環境とエネルギー関連の取り組み紹介

(電力中央研究所・米澤宏一 上席研究員)

10:00~10:20 環境工学分野における環境とエネルギー関連の取り組み紹介

(東京電力エナジーパートナー・佐々木 正信、 技術ロードマップ委員会委員 )

第2部 パネルディスカッション

10:20~11:00 持続可能な環境とエネルギー戦略に機械学会はどのように貢献できるかを考える

(下線の部分はリンクが付けられているのでクリックすると資料がダウンロードできます)

 

本ワークショップのプログラムを表1に示す。第1部は4件の招待講演が実施された。はじめに、招待講演「環境とエネルギーの相互補完的共存の未来」では、山崎委員長より、人々が目指すべく、環境とエネルギーの未来のイメージを水素フロー、電力フロー、資源環境フローを用いて、環境被害を最小にできる最適化された水素軸のエネルギーネットワークと資源循環により生き生きとした人々の生活を支援できる循環型経済の未来が提示された。また、これからの環境とエネルギーは対立ではなく、「相互補完的」という発想の大転換が必要であることが指摘された。さらに、カーボンニュートラル推進の理由、カーボンニュートラル推進がもたらすチャンス、持続可能な環境と経済の両立について説明がなされた。

招待講演「計算力学分野における環境とエネルギー関連の取り組み紹介」では、東京大学の吉村教授より、2050年のカーボンニュートラルへのグリーン成長戦略と2050年のエネルギー構成・バリューチェーンの情報共有、21世紀を生きる我々が持つべき時代認識として「Society5.0 ×カーボンニュートラル×レジリエンス」の実現のための技術基盤について説明がなされた。また、日本学術会議におけるカーボンニュートラル連絡会議の活動と日立東大ラボにおけるSociety5.0を支えるエネルギーシステムの活動などを通じて,カーボンニュートラルに向けた総合的・俯瞰的議論を進めることの重要性について説明がなされた。

招待講演「流体工学分野における環境とエネルギー関連の取り組み紹介」では、電力中央研究所の米澤氏より、発電分野における火力、水力に関連する研究について紹介がなされた。これらの分野は、カーボンニュートラル政策により、大きな変化に直面していることや、特に火力は燃料の調達コストを吸収するために、これまで以上の高効率化のための技術開発の必要性が指摘された。また、電力設備保守・環境分野におけるイーブイトール/ ドローンに関する研究について紹介がなされた。今後、流体工学分野は、流れ・熱の物理を基礎として、新たな技術を取り込み、生活を支える重要な電力・環境分野の基盤技術としての活動拡大への期待について説明がなされた。

招待講演「環境工学分野における環境とエネルギー関連の取り組み紹介」では、東京電力エナジーパートナーの佐々木委員より、環境工学部門が過去に作成した技術ロードマップ(ヒートポンプ給湯機、電動カーエアコン)について、現状を踏まえたレビューがなされた。また、エネルギー関連トレンドとして、非電力分野における熱分野・運輸分野の電化によるCO削減や、再エネ電源比率増と系統安定化の両立のための需要側のバーチャルパワープラントの拡大について説明がなされた。特にエネルギーに関連する様々な技術開発が世界各国で進められている中で、どのような技術ロードマップが今後の技術発展に貢献できるかを議論していく必要性が指摘された。

第2部のパネルディスカッションでは、はじめに、委員長から、本委員会の活動軌跡、ビジョン、本年度の目的・計画などの活動内容の紹介と,本委員会の活動を今後どのように社会の期待と要請に応えて行くかについて説明がなされた。特に、本年度は、機械学会メンバーが考える2050年の社会像を創発し、社会像を実現する新技術や横断分野などの方策を検討する活動目的が提示された。これを受けて、「持続可能な環境とエネルギー戦略に機械学会はどのように貢献できるかを考える」ことを論点とし、第1部の招待講演の講師4名がパネリストとなって、参加者との討議を実施した。今後、科学技術の対象がより複雑化し、高度化する中で研究者が答えを一人で出すことは極めて難しいことや,異なるディシプリンを背景に持つ研究者が議論をしながら、 技術を融合・複合させてイノベーションを創出するためのコミュニケーションが必要であることから、各専門、部門、学会を超えた連携の仕組み作りに対する機械学会の役割について議論が交わされた。

本ワークショップを通して、持続可能な未来の実現のための技術ロードマップの作成や,機械学会の役割に対する期待の大きさがあらためて浮き彫りとなった。今後も技術ロードマップ委員会では、新技術や横断分野などの方策を検討するためのワークショップやオンラインセミナーの開催などを通して、ロードマップ作成と実践に関する手法・事例の収集と知識基盤の構築、そして学会員等への情報提供を進めていく予定である。

 

以上

お知らせ 2022/09/29