部門賞・一般表彰贈呈式
第84期(2006年度)熱工学部門賞・部門一般表彰贈呈式
受賞者一覧 (敬称略)

熱工学部門賞

功績賞(永年功績賞)藤田 恭伸(九州大学名誉教授)
林 勇二郎(金沢大学学長)
功績賞(国際功績賞)望月 貞成(東京農工大学教授)
功績賞(研究功績賞)牧野 俊郎(京都大学教授)
功績賞(技術功績賞)蛭子 毅 (ダイキン工業取締役兼執行役員)
業績賞佐藤 勲(東京工業大学教授)

部門一般表彰

貢献表彰花村 克悟(東京工業大学教授)
宗像 鉄雄(産業技術総合研究所)

講演論文表彰
年次大会
・「高温場における石炭灰の放射率特性」
  下郡 三紀,吉廻 秀久,下郡 嘉大(バブコック日立株式会社)
・「レイノルズ応力モデルに基づく乱流噴流拡散火炎のモデル解析」
  野田 進,堀井 庸児(豊橋技術科学大学)
熱工学コンファレンス
・「浮力乱流温度場境界層DNSデータによる乱流モデルの再構築」
  服部 博文,森田 昭生,長野 靖尚(名古屋工業大学)
・「空間分解反射光計測に基づく皮膚のふく射物性の推定」
  山田 純,安 炳弘,有田 悠一(芝浦工業大学),三浦 由将,高田 定樹(資生堂)


フェロー賞(参考)

・「フィルム冷却の混合プロセスに着眼した高性能化に関する研究」
  梶内 丈史(大阪大学大学院)
・「高レイリー数領域における水平流体層の乱流自然対流」
  村上 雅(富山商船高等専門学校)
・「詳細な素反応過程を考慮した数値熱流体コードによるディーゼル燃焼の数値解析(EGR条件下における検討)」
  渋谷 祐介(早稲田大学大学院)



熱工学部門賞

功績賞(永年功績賞)

藤田 恭伸 氏
贈賞理由:

熱工学,とりわけ核沸騰熱伝達の主要因子の効果,促進法,整理式,混合媒体の核沸騰熱伝達特性とCHFなど,沸騰熱伝達分野の広範な研究, および熱工学部門・国際会議の運営,並びにInt. Centre of Heat and Mass Transferの理事,日本伝熱学会会長など,永年にわたり国内外の熱工学の発展に貢献した功績が顕著である.


略歴:
1963九州大学工学部機械工学科卒業
1965同大学院工学研究科機械工学専攻修士課程修了
1968同専攻博士課程単位修得の上退学
1968九州大学工学部機械工学科講師
1969九州大学工学部助教授
1980九州大学工学部教授
2004定年退官,九州大学名誉教授



功績賞(永年功績賞)

林 勇二郎 氏
贈賞理由:

熱工学,とりわけ伝熱促進,材料製造,生体保存などのミクロ・複雑系の相変化伝熱に関する広範な研究,および熱工学に関する国際誌のエディター, 国際会議の開催,日本機械学会理事・日本伝熱学会副会長など,永年にわたり国内外の熱工学の発展に貢献した功績が顕著である.


略歴:
1970東京工業大学大学院理工学研究科機械工学専攻博士課程修了
1970金沢大学講師
1971金沢大学助教授
1981金沢大学教授
1981パデュー大学客員教授
1997金沢大学工学部長
1999金沢大学長
2005日本学術会議第20期会員



功績賞(国際功績賞)

望月 貞成 氏
贈賞理由:

熱工学,とりわけ熱流体工学に関する基礎および応用研究,マイクロ・ナノテクノロジーに関する国際会議開催,PCTFE (Pacific Center of Thermal-Fluids Engineering) 会長, International Journal of Rotating MachineryおよびJournal of Flow Visualization and Image ProcessingのEditor-in-Chief,ヨーロッパの熱工学研究者との交流に貢献した功績が顕著である.


略歴:
1966東京大学工学部航空学科卒業
1998東京大学大学院工学系研究科航空学専攻修士課程修了(工学修士)
1971東京大学大学院工学系研究科航空学専攻博士課程修了(工学博士)
1971東京大学助手宇宙航空研究所
1973東京農工大学工学部助教授機械工学科
1986東京農工大学工学部教授
2005東京農工大学大学院教授機械システム工学専攻(所属名変更)



功績賞(研究功績賞)

牧野 俊郎 氏
贈賞理由:

熱工学,とりわけ物質の熱ふく射現象に関する基礎研究,表面の熱ふく射スペクトル診断法の開発など,ふく射物性・ふく射計測の分野で国内外の熱工学研究の発展に貢献した功績が顕著である.


略歴:
1972京都大学工学部卒業
1974京都大学大学院工学研究科修士課程修了
1977京都大学大学院工学研究科博士課程単位修得退学
1977京都大学工学部助手
1988京都大学工学部助教授
1994京都大学工学部教授
1996 京都大学大学院工学研究科教授



功績賞(技術功績賞)

蛭子 毅 氏
贈賞理由:

熱工学,とりわけ調湿技術を応用したルームエアコンの開発など,空調,冷凍用熱交換機の分野で,国内外の熱工学技術の発展に貢献した功績が顕著である.


略歴:
1988京都大学大学院工学研究科修士課程修了
1988ダイキン工業株式会社入社 機械技術研究所へ配属
1998機械技術研究所 主任研究員
2004経営企画室 技術企画担当部長
2005執行役員就任
2006取締役 兼 執行役員 経営企画室長



業績賞

佐藤 勲 氏
贈賞理由:

熱工学,とりわけプラスチック成形加工における熱流体工学に関する研究,および,それにかかわる製造工程の高度化に関する研究, 液体の相変化に関する基礎研究とそれを利用したエネルギー貯蔵・輸送に関する研究など,熱工学的研究業績が顕著である.


略歴:
1981東京工業大学工学部機械工学科卒業
1984東京工業大学大学院理工学研究科生産機械工学専攻博士課程中退
1984東京工業大学工学部助手(生産機械工学科)
1990東京工業大学工学部助教授 (生産機械工学科)
2000東京工業大学大学院理工学研究科教授(機械制御システム専攻)



部門一般表彰

貢献表彰

花村 克悟 (東京工業大学教授)

贈賞理由:

熱工学研究への貢献ならびに熱工学部門運営に対する貢献が顕著である.



宗像 鉄雄 (産業技術総合研究所)

贈賞理由:

熱工学研究への貢献ならびに熱工学部門運営に対する貢献が顕著である.




講演論文表彰

論文題目「高温場における石炭灰の放射率特性」

下郡 三紀,吉廻 秀久,下郡 嘉大(バブコック日立株式会社)


贈賞理由:

石炭焚きボイラーにおいては水管の外壁に石炭灰が付着する.火炎から水管への熱伝達は放射と対流によって行われるが,実際のボイラーにおいては放射による伝熱が支配的割合を占める. そして,その放射伝熱は水管に付着した石炭灰の放射率に大きく影響される.本講演論文は高温場における石炭灰の放射率の測定を行った論文である.論文内容が優れているばかりでなく, 発表に必要な図も適切で,口頭発表及び質疑応答も申し分なく,講演論文表彰に十分値するものと評価できる.2006年度年次大会熱工学部門の講演発表101件の中で最も評価が高かった論文である. (2006年度年次大会にて発表)



論文題目「レイノルズ応力モデルに基づく乱流噴流拡散火炎のモデル解析」

野田 進,堀井 庸児(豊橋技術科学大学)


贈賞理由:

乱流拡散燃焼は高負荷燃焼で可能であり,火炎の伝播性がなく,安全な燃焼方式である.したがって,工業的に広く用いられている.しかし,有害物質排出等の燃焼制御が難しい問題が存在する. このような問題に対処するためには乱流拡散現象を精度よく予測するモデリング手法の開発が望まれる.そこで,本講演論文はレイノルズ応力モデルを流れ場に適用して同軸噴流乱流拡散火炎を解析し, 流れ場及び温度場に関して実験結果と比較検討している.両者は比較的よく一致し,この結果は - 2方程式モデルよりもよい一致がえられることを示している.(2006年度年次大会にて発表)



論文題目「浮力乱流温度場境界層DNSデータによる乱流モデルの再構築」

服部 博文,森田 昭生,長野 靖尚(名古屋工業大学)


贈賞理由:

浮力を伴う乱流境界層について,DNSデータベースを整備し,それを用いて乱流モデルの評価を行った研究であり,多年にわたり著者らが蓄積してきた乱流研究の成果と経験に基づく高度な工学研究となっている. 本研究の成果は,乱流モデルの予測精度の向上を通し,大気中の汚染物質の輸送現象のような実際の環境問題研究にも寄与し得るものと期待される. 正統的な研究手法により信頼性の高い成果を積み重ねていく著者らの一貫した研究姿勢は本講演でも明瞭に示されており,他研究者の参考となるところが少なくない.(2006年熱工学コンファレンスにて発表)



論文題目「空間分解反射光計測に基づく皮膚のふく射物性の推定」

山田 純,安 炳弘,有田 悠一(芝浦工業大学),三浦 由将,高田 定樹(資生堂)


贈賞理由:

人の皮膚のふく射物性という医学・生理学分野の研究課題に対し,著者ら独自の工学的創意をもって挑んだユニークな研究である.研究の独自性という点で高く評価できることはもちろん, 課題についての十分な物理的考察に基づき巧妙に工夫された測定と推定の手法は実用的であり,今後広い応用が期待できることも特筆に値する.創意に富んだ実際的境界領域研究の好例として推薦したい. (2006年熱工学コンファレンスにて発表)




フェロー賞(参考)


論文題目「フィルム冷却の混合プロセスに着眼した高性能化に関する研究」

梶内 丈史(大阪大学大学院)

贈賞理由:

本論分はガスタービン羽根のフィルム冷却の断熱性能を向上させるために吹き出し方法の実験的研究を実施するとともに,理論的計算を行って,噴出された空気ができるだけ, 壁面に密着して流動する条件を探求した研究である.発表内容は十分で,かつ発表及び質疑応答の態度も優れており,フェロー賞に値すると考える.(2006年度年次大会にて発表)




論文題目「高レイリー数領域における水平流体層の乱流自然対流」

村上 雅(富山商船高等専門学校)

贈賞理由:

本研究は水平流体層において,下面を加熱し,上面を冷却した場合,乱流自然対流域の流動状態を可視化し,渦巻状の流れが発生することを示している. また,熱伝達係数の整理を行っている.興味ある流れの動画が示されると同時に,発表及び質疑応答の態度も優れており,フェロー賞に値すると考える.(2006年度年次大会にて発表)




論文題目「詳細な素反応過程を考慮した数値熱流体コードによるディーゼル燃焼の数値解析(EGR条件下における検討)」

渋谷 祐介(早稲田大学大学院)

贈賞理由:

ディーゼル機関の燃焼という複雑な燃焼過程に対し,素反応過程を考慮した数値解析を試みた魅力的な研究の発表であり,講演者を含めた研究グループの意欲は高く評価できる. 解析からは熱発生率やNOx排出量について技術的に有用な知見が得られており,今後の発展が期待できる.講演は明瞭であり,また討論に際しても講演者は適切に回答していた. (2006年熱工学コンファレンスにて発表)