特 集:AVを用いた熱工学研究


巻頭言 特集「AVを用いた熱工学研究」の刊行にあたって

片岡 勲

熱工学部門 広報委員長

大阪大学大学院 工学研究科 機械物理工学専攻 教授



 本年度機械学会熱工学部門のニュースレターは第28号(1999年7月発行)は郵送の形で、第29号(1999年11月発行)は日本機械学会誌に掲載の形で発行したしました。本号第30号はこれまでにもご案内致しましたように初めての試みとして熱工学部門ホームページに掲載の形で発行させていただきました。この試みに当たりホームページの特色を生かしたものとするようにとの河村部門長のご指示のもと、広報委員会一同は検討を重ねて参りました。その結果、今回お届けするような「AVを用いた熱工学研究」という特集号を組み、動画を取り入れたニュースレターとしてみました。
 熱工学においては、近年、数値解析技術の飛躍的発展に伴い、高度なシミュレーションを用いた研究が行われるようになっています。こうした、シミュレーション結果は基本的には数値データとして得られるわけですが、その物理的な意味を理解する上で、それを動画も含めた映像にする事は極めて有用でこれまでも盛んに行われてきました。映像にすることで、それまで気のつかなかったメカニズムや現象の発見にもつながることもあります。また、熱工学の実験手段としても流れの可視化計測等に見られるように映像の果たす役割は極めて大きくなりつつあり、実験結果を表示する際にも、映像による表現が結果を解析する上でも、また、他の研究者への情報伝達の上でも極めて有効な手段となっています。これは、コンピュータの処理速度と記憶容量ならびに画像を取り扱うソフトウェアの飛躍的な発展によるもので、今や、映像は熱工学研究における重要な研究手段の一つとなりつつあります。
 また、熱工学においては、流体騒音や沸騰音など音響に関係する現象も非常の多く見られます。こうした音響に関しても、最近では、コンピュータのデジタル情報として取り扱うことが可能となってきており、研究や結果の表示の重要な手法の一つとなりつつあります。
このような、熱工学研究における映像や音声の役割を背景に、様々な研究分野において映像や音声がどのように利用されているかについて研究者、技術者が相互に情報を交換することは、熱工学の研究の進展にとって極めて意義のあるものと考えられます。熱工学部門においてもこうした映像や音声の利用技術とインターネットを用いたそれらの配信技術の著しい発達を受け、それらを積極的に取り入れたニュースレターの発行を試みることとしました。そこで本号では「AVを用いた熱工学研究」と題して、熱工学の各分野で映像や音声を積極的に利用して研究を行っておられる下記の先生方に動画を含めた映像を取り入れた記事の執筆をご依頼しました。

 辻本 公一 先生、三宅 裕 先生(阪大)
 「壁乱流音の直接シミュレーション」
 丸山 茂夫 先生(東大)
 「固体壁面上の液滴核生成の分子シミュレーション 」
 高田 保之 先生(九大)
 「超親水性光触媒による流下液膜式蒸発熱伝達の促進」
 黒田 明慈 先生(北大)
 「球状液滴内表面張力対流の数値解析」
 遠藤 誉英 君、笠木 伸英 先生(東大)
 「知的乱流制御の先導設計」
 高橋 厚史 先生(九大)
 「マイクロスケールの非一様温度場中の単一気泡の挙動」

 本号の企画に並びに編集に当たっては、お忙しい年度末にご執筆を快くお引き受けいただいた先生方は勿論のこと、河村部門長の適切なご助言に加え、広報委員会の井上幹事並びに黒田委員のご尽力によるところが極めて大きいものがあります。また、今回のニュースレターの発行は電子情報委員会との共同作業によるものであり、菱田委員長並びに三松幹事には多大なご協力を戴きました。
 今回のホームページを利用したニュースレターの発行はマルチメディアを用いた熱工学分野の研究者の情報交換の新たな手段として今後益々発展していくことを期待されます。また、こうした動画を取り入れた特集記事が熱工学部門の登録者各位の研究にお役に立つ情報を提供できれば広報委員会委員一同幸いに存じます。



壁乱流音の直接シミュレーション

辻本 公一  三宅 裕

大阪大学大学院 工学研究科 機械物理工学専攻 助手,教授



1.はじめに
 Lighthillによる音響相似則に基づく波動方程式の導出を出発点として、空力騒音の予測に関して多くの研究がなされてきた。近年、計算機性能の飛躍的向上に伴い、この歴史ある空力音響学は新たに計算空力音響学(CAA: Computational Aeroacoustics)として飛躍的な発展をしている。低マッハ数の流れ場からの放射音を計算する場合、比較的空間スケールの小さい強い圧力変動が支配的な音源領域から空間スケールは大きくなるが微弱な放射音場領域までを一括して取り扱うことが要求される。したがってこれまでは高精度な差分解法と妥当な遠方境界条件の取り扱いに関し精力的に研究が進められた。今後はこれらスキームを利用し、より実際的な3次元非定常流れ場の解析が行われていくものと考えられる。 筆者らは壁乱流の直接シミュレーション(DNS: Direct Numerical Simulation)のデータから乱流場の微細構造に関する解析を進めているが、こうした微細流動現象が引き起こす音の発生機構とそれら知見に裏付けされた騒音制御は工学的にも重要で、強い関心を寄せている。本稿では、最近始めた壁乱流からの放射音に関するDNSの結果について簡単に紹介する。

2.壁乱流からの放射音
2.1 計算方法
 低マッハ数域では音場と流れ場の物理量のオーダが数桁以上ことなることから、流れ場の物理変数を分離することが可能で、音場は非圧縮流れ場を音源として解く事ができる。Hardinら[1]はこれに基づく音場の直接解法を提案し、その後多くの研究者により2次元流れ場からの放射音についてその有効性が検証された。ここでは、この解法を用い、完全3次元非圧縮流れの壁乱流のDNSデータを音源として音場を解いている。空間の離散化に、8次精度のCompact Scheme[2]を時間進行には、4次精度のRunge-Kutta法を用いて高精度化を図ると伴に,遠方での放射境界条件にPML(Perfectly Matched Layer)法[3]を採用し、境界からの数値的な反射波を押さえている。壁面摩擦速度で定義するレイノルズ数ならびにマッハ数はそれぞれ150、0.01としている(計算の詳細は文献[4]に記載)。

2.2 壁乱流音場の特性
 図1に遠方境界の音圧の時間変動を示す。広帯域騒音特性を反映し、ランダムに変動していることがわかる。計算機容量により計算領域が十分に大きくはないが壁からの距離が音源領域の1.5倍以上離れると線形音場領域に速やかに移行し、放射音の特性が得られていることも確かめられている。 このような広帯域特性の要因を探るために音源について考える。 基本的には波動方程式のソース項を音源とすればよいが、音源近傍場の圧力変動は急速に減衰する擬音と遠方への伝播性音からなるため、そのどちらに音源項が寄与するのか区別することは難しい。そこで簡単に非圧縮近似を施し、伝播性音に関する波動方程式を再構築すると、音源項は音源領域での非圧縮圧力の時間2階微分項で与えられることになる[5]。筆者らは低マッハ数域の2次元キャビティ流れ、回転渦流れの直接シミュレーションを行い、この音源項が妥当な指標の一つとなることを確認している[6]。
 この音源項の等値面を可視化した結果(図2)から、特に強い音源項は壁近傍に集中して形成されることがわかる。このときの速度勾配テンソルの第二不変量で可視化した微細渦の空間分布は図3になる。壁近傍では微細渦が集中した渦群構造が形成されるが強い音源も組織渦構造と関連して形成されることがわかる。音源近傍領域の強い音圧変動を可視化した結果を図4に示す。筆者らは以前に低次スキームで同じ問題を解いたが、壁近傍での音圧分布にこのような微細変動構造は生じず、改めて音場計算での高精度化の必要性を実感している。 一方、壁近傍で発生する強い音圧変動は干渉した結果、音源上部で比較的大規模な音圧構造が可視化される(動画ファイルを参照)。 大規模な低圧領域は、音源領域の強い音源が集中した領域の上部で起こり、強い音圧変動領域が壁遠方へ伝播したものである。高圧領域はこの低圧領域の隙間を埋める。これら、大規模音圧変動領域の内部では泡上の強い音圧変動部分は発生するがその寿命は極めて短時間である。このように音源上部に伝播する音は壁近傍の渦群で定義される比較的大スケールで時間スケールの長い成分とその内部で干渉の結果生じる時間スケールの短い構造で特徴づけられる。

3.おわりに
 低マッハ数域での壁乱流音のDNSを行い、壁近傍乱流場の音源と音場構造の可視化結果を示した。これらDNSデータからさらに詳細な音の発生機構と騒音制御スキームに関する基礎的知見、あるいは音場予測精度向上のためのLESモデルの開発・検証など、引き出せるデータは多岐にわたる。そういった点から、本研究は始まったばかりである。なお、計算結果については本学大学院博士前期過程宮本善彰君の協力を得た。ここに記して謝意を表す。

参考文献
[1]Hardin, J. C. and Pope, D. S., AIAA Journal, 33-3, 1995, 407.
[2]Sanjiva K. Lele , J. of Comp. Physics 103, 1992,16.
[3]Fang Q. Hu, AIAA Paper,(96-1664),May 1996.
[4]宮本善彰、三宅裕、辻本公一、第13回CFDシンポジウム講演論文集CD-ROM版,1999.
[5]Ribner, H. S., Inst.of Aerophysics Report, No.86, 1962.
[6]Tsujimoto, K., Hayashi, A. and Miyake, Y. Proceedings 4th AIAA/CEAS Aeroacoustic Conference, June 2-4, 1998, 928.

 
図1. 遠方点での音圧変動 図2. 壁近傍の音源分布

 
図3. 壁近傍の微細渦構造 図4. 壁近傍の音圧分布



固体壁面上の液滴核生成の分子シミュレーション

丸山 茂夫

東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻 助教授



1.はじめに

 壁面上での液滴核生成の問題は,滴状凝縮理論の観点や最近の量子ドット生成などのナノテクノロジーとも関連して極めて興味深い.著者らは,図1に示すように,固体面上の液滴の平衡状態について分子動力学法を用いて検討してきており,分子スケールのポテンシャルパラメータと接触角などのマクロな測定量の関係を明らかにしてきた(1).一方,最近,L-J流体や水の均質核生成過程の分子動力学法による直接的なシミュレーションによって(2,3),古典核生成理論の限界が示されている.本報では固体壁面上での液滴の不均質核生成の分子動力学法シミュレーションを実行し,古典的な核生成理論との比較を示す.

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Fig. 1 A snapshot and density profile of liquid droplet on a dolid surface.
Effect of temperature and size.

2.計算方法

 図2に示すように,下面に固体壁面を配置し,上面を鏡面,四方側面を周期境界条件とした系を考える.

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Fig. 2 Calculation domain.

 気体,液体分子はアルゴン分子を仮定して,Lennard-Jonesポテンシャル のパラメーター, 質量はアルゴンの値を用いる.

Eq. 1 (1)

 壁面分子とアルゴンとのポテンシャルも Lennard-Jones ポテンシャルで表現し, 下壁面のエネルギーのパラメーターeINTを変化させ, 下壁面のぬれ易さを変化させた (表1参照) .

Table 1 Calculation conditions.

Label eINT
[x10-21J]
q
[deg]
Tave
[K]
Jsim
[cm-2s-1]
Jth
[cm-2s-1]
E2 0.426 135.4 108 6.52x1020 4.86x1021
E3 0.612 105.8 114 3.45x1021 4.47x1021
E4 0.798 87.0 120 5.76x1021 5.54x1020

 壁面はfcc <111>面のバネマス分子1層(4464個)とし,質量,最近接分子間距離,バネ定数はそれぞれ白金の値を用いた.更に,壁面分子の外側には温度一定のボルツマン分布に従うphantom分子を配置し,一定温度に保たれた熱浴を擬似的に実現した.その他の計算条件の詳細は,著者らが壁面での気泡生成のシミュレーションを行った場合とほぼ同様である(4).

3.結果と考察

 初期条件として計算領域の中央に5760個のアルゴン分子をfcc構造で配置し,最初の100 psの間,設定温度(160 K)に応じた速度スケーリングによる温度制御を行った後,phantomによる温度制御のみで500 psまで計算して平衡状態のアルゴン気体で系を満たした.その後phantomの設定温度を100 Kに下げ,壁面から系を冷却していった.
 表1のE2における圧力,温度,monomerの数,および最大クラスターサイズの時間変化を図3に示す.ここでクラスターとは各時間において分子間距離が1.2sAR以下であるような分子の集合と定義した.

Fig. 2
Fig. 3 Pressure, temperature, number of monomer,
maximum cluster size variations. (E2)

 計算開始から500 ps後,phantomの温度制御により壁面が急激に冷却され,その後徐々にアルゴンの温度が下がっていく.その過程で徐々にクラスターが形成され,成長していく.
 図4にクラスター生成の時間変化を示す.ここではより明瞭にするため5分子以上からなるクラスターのみを示した.

Fig. 3 (b) Fig. 3 (c)

(a) E1

(b) E2

(c) E3

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Fig. 4 Snapshots of clusters larger than 5 atoms.

 生成するクラスターが壁面近傍に集中しているのがわかる.一方,よりぬれにくい壁面条件であるE1では液体内部においても比較的多くのクラスター生成が行われており,均質核生成に近い状況になっていた.
 図5に閾値サイズ以上のクラスター数の時間変化を示す.破線はそれぞれが直線的に増加している部分にフィットするような直線である.

Fig. 4
Fig. 5 Variations of number of clusters larger than a threshold. (E2)

 閾値20あるいは30以上ではこの直線の傾きがほぼ平行となっている.このことはそのサイズを超えたクラスターが安定的に成長を続けていることを示しており,この直線の勾配から核生成速度を見積もることができる.30以上,40以上,50以上の直線の傾きの平均から見積もられる核生成速度はJsim = 3.45x1021 cm-2s-1となる.

 一方,古典核生成理論では平滑な固体壁面での不均質核生成の核生成速度Jthは以下のように表すことができる.

Eq. 2-1 (2)
Eq. 2-2

 クラスター数が直線的に変化している1000 psから1500 psの平均温度Tave,およびmonomerの密度rを用いて計算を行うと,Jth = 4.47x1021 cm-2s-1となる.均質核生成の場合に7桁もの大きな差があったのに反して,本シミュレーションでは理論と非常によく一致している.また臨界クラスターサイズは

Eq. 3 (3)

で与えられ,n* = 16.5と計算される.シミュレーションからは図 5における直線の傾きの変化から20程度が臨界クラスターのサイズであると見積もられ,ほぼ一致する.

 臨界核以下のクラスター分布は

Eq. 4 (4)

で与えられる.この式を用いてシミュレーションで得られるクラスター数が直線的に変化している期間の平均クラスター分布c(n)からクラスター生成に必要な自由エネルギーDGを求めたのが図6の丸印である.実線は理論で以下の式で与えられるDGを示す.

Eq. 5-1 (5)
Eq. 5-2

 また,三角は壁面に接触していないクラスター分布から求められるDG,点線は均質核生成の場合の理論式から導かれるDGを示す.

Fig. 5
Fig. 6 Cluster formation free energy.

 ここで式(4)によるDGの見積もりは臨界核(DGがピークの位置)以下のサイズでのみ有効である. 壁面がぬれやすくなるほど,壁面に接するクラスターと接しないクラスターのDGの差が大きくなる.臨界核以下の部分で比較すると不均質核生成の理論と壁面に接するクラスター分布から得られるDGはほぼ一致していることがわかる.一方,均質核生成理論から得られるものと壁面に接触していないクラスター分布とでは,若干シミュレーションのクラスター分布から得られるDGが大きくなっているものの,全体としての一致は均質核生成のMDシミュレーションの結果からは考えられないほどよい.

5 おわりに

 固体壁面を急冷することによる液滴の不均質核生成の分子動力学法シミュレーションによって,古典核生成理論とそれほど違わない核生成速度が計算された.均質核生成の分子動力学法では,古典核生成理論とほど遠い結果となっていることから,本報の系での核生成速度の一致は予想に反するものであり,その理由の解明は今後の課題となる.ただし,いずれの分子動力学法シミュレーションも現実的なマクロな熱問題の時間スケールや過飽和度と相当に異なる条件であり,マクロな問題との直接的な比較は容易ではない.

文献

(1) Maruyama, S., ほか4名, Microscale Thermophysical Engineering, 2-1 (1998), 49-62.
(2) Yasuoka, K. & Matsumoto, M., J. Chem. Phys., 109-19 (1998), 8451-8462.
(3) Yasuoka, K. & Matsumoto, M., J. Chem. Phys., 109-19 (1998), 8463-8470.
(4) 丸山茂夫・木村達人, 機論, 65-638 B (1999), 225-231.




超親水性光触媒による流下液膜式蒸発熱伝達の促進

高田 保之

九州大学大学院 工学研究科 機械科学専攻 助教授



 超親水性光触媒 というのをご存知だろうか.最近,車のサイドミラーに貼り付けて「雨 が降っても良く見える」とか,「汚れが落ちやすい塗装」とかに使われている アレである. 光触媒の効能は二つあって,ひとつは強い酸化力による有害物質の分解,もう一つは 水に対する接触角がほぼゼロになる超親水性である.これら二つの作用は紫外線を 照射することにより起こる.光触媒反応を示す物質は,この世に何種類か存在するが, 光触媒といえば事実上酸化チタンのことを指す.
 この超親水性を濡れが関わる伝熱に利用すれば,何か御利益がありそうだという ことで,手始めに流下液膜式蒸発の伝熱促進に適用してみた.写真1と2は, それぞれ通常の伝熱面と超親水コーティングを施した伝熱面を流れるほぼ同じ流量の 水膜である.一目瞭然,超親水面の場合は,面全体に薄い液膜が広がっている. 実験結果を整理したものを図1に示すが,特に低流量,低熱流束域で伝熱促進効果が 見られる.

     
写真1 通常面
q=30kW/m2, Ref=132
写真2 超親水面
q=30kW/m2, Ref=123
   
図1 流下液膜式蒸発の伝熱特性 図2 浸漬冷却の温度履歴
 

 面の濡れ性がよくなると,いろいろなことに使える.流下液膜の次に, 浸漬冷却を行なってみた.図2は超親水コーティングを行なったものと, 通常の仕上げ面の冷却曲線の比較である. 超親水コーティング面の極小熱流束点は,通常面に比べて高温側にあるため, 浸漬からごく初期の段階で蒸気膜が崩壊し,急速に冷却されることがわかる.
 限界熱流束も高くできるだろうと期待して,現在,プール沸騰による確認のための 実験を行なっている. 超親水面の限界熱流束は,通常面の場合よりも高くなるという結果が出つつある. この実験結果の詳細については 近々発表する予定である.
 現在使用しているコーティングは,ディップコーティングの後に熱処理したもので あるが,残念ながら伝熱面としての耐久性はない. そこで,本学の表面工学の研究室の協力を得て,スパッタリングにより 超親水金属表面を開発することになった.まだ,開発を始めたばかりであるが, 銅の表面を超親水化させることに成功した. ここで紹介する映像は,紫外線を照射して 1昼夜以上経過してから接触角を測定する際に撮影したものである. 液滴が面に接した瞬間に薄い液膜が形成される様子がご覧いただけると思う. このスパッタリングによる超親水面は,ディップコーティングとは比べ物に ならないほど強い表面であるが,残念ながらまだ安定ではなく, 時間の経過とともに接触角が上昇してしまう.この面によるプール沸騰実験を 実施中であるが,超親水性が衰えないできたてホヤホヤのうちにデータをとることに している. 将来的には安定でタフな表面ができるものと期待しているところである.
 超親水性を沸騰や凝縮だけでなく,吸収現象の促進に利用しようというアイデアも あるし,着霜・除霜現象などにも利用できるかもしれない. また,超親水とは逆の超撥水面も開発されつつある. 将来的には濡れ性を制御することにより,伝熱制御を行なえるようになれば, 世の中の役に立つかどうかは別として, サイエンスとしては結構面白いだろう.



球状液滴内表面張力対流の数値解析

黒田 明慈

北海道大学大学院 工学研究科 機械科学専攻 助教授



 流体の流動現象には外部駆動力による強制対流の他に温度差や流体内の濃度差によって生じる密度差に重力、遠心力、コリオリ力等が働いて生ずる自然対流や、磁力、表面張力などのさまざまな力が引き起こす対流がある。これらの対流現象において系の規模が小さくなる(毛細管、液滴、泡等)と、表面張力が大きな影響を及ぼすようになってくる。近年、噴霧燃焼や噴霧乾燥などを伴う機器において効率向上のために液滴径が微細化されているが、その詳細な現象の解明や性能予測のために液滴内の表面張力対流の影響を見積もることが重要となるであろう。また今後、宇宙環境の科学的・工業的利用が期待されるが、宇宙船内の廃熱を宇宙空間へ効率よく捨てるために考案されている液滴ラジエータの性能評価や微小重力環境を利用した大型結晶成長、巨大分子生命物質の分離、密度の異なる合金、液滴の粒径によらない懸濁液の生成などの過程において表面張力の効果が大きな影響を及ぼすことが知られている。表面張力が支配的要因となるこれらの現象のうち、本研究では特に球状液滴内の表面張力対流をとりあげ、液滴内の熱輸送機構とこれに及ぼす対流の効果を明らかにするとともに、液滴と周囲環境との伝熱過程における表面張力対流の影響を評価することを目的としている。
 球状の液滴内での熱輸送機構やこれに影響を及ぼす流動の効果について実験的に調べようとすると、非接触で浮遊状態にある液滴を測定対象とするのが理想的であるがこれは非常に困難である。そこで本研究では数値シミュレーションによって現象を再現することを試みた。解析系は図に示すような、周囲より温度が高い単一液滴で周囲から一様に冷却されているものとする。この液滴表面にわずかな温度むらを与える。表面張力は多くの液体において温度が低いほど大きいために、液表面に沿って温度が高い方から温度が低い方へ流れが向かう力が働く。これによって温度が周囲より高い領域では液滴内部から温かい流体が湧出ることになる。すると表面の温かい領域は場合によってはより温かくなり、これによって表面温度差が拡大し、表面張力が強く働いて流体運動をさらに加速する。このように初期のわずかな表面温度むらが元で液滴全体にわたる対流が成長する。
 ところで、数値計算によって表面張力対流を解析する場合、特に対流の発生初期においては液表面の微小な温度差が流れの駆動源であるために高精度の計算手法が要求される。しかも、極座標系の場合は極や中心が特異点となるが、これらの及ぼす計算上の不都合が計算結果に反映しないように工夫する必要がある。このような問題に対して、球面調和関数を用いたスペクトル法は高精度の計算法であり、また極での特殊な取り扱いを必要としないという利点をもつ。本研究ではこのスペクトル法を用いて球状液滴内の対流場を再現する数値計算コードを開発した。
 対流に影響を及ぼす因子として,加熱・冷却条件や液滴径、液体の物性値(表面張力係数やプラントル数)をパラメータとして計算を行い、対流の発生や成長に与える影響と液滴内の熱輸送に及ぼす効果について検討を加える。また、液滴中心部に固体発熱源が存在する系についても計算を行っている。表面張力対流は定性的にはマランゴニ数が大きいほど、またプラントル数が大きいほど強くなり、これによって液滴内の温度が一様化すると考えられるが、これらの状況を定量的に知ることによって、例えば前出の液滴ラジエータにとって伝熱的に最適な作動流体や粒径および空間滞留時間を見積もることが可能となる。また、表面張力対流の非発生条件や発生状況を把握することは、大型結晶や合金の製造工程の構築の際に役立つものと考えている。
 計算の一例として添付した動画は、液滴表面の温度変化と速度ベクトルの変化を示したものであり、計算条件は次のとおりである。液滴内部に温度一定の固体発熱源を有し、この固体球と液滴の半径比は1.1:2.1である。初期条件として固体球表面がもっとも高温で液滴表面が低温となる定常熱伝導の温度分布を液滴内部に与え、液滴表面に微小振幅(固体球温度と周囲環境温度の差の1/100)の温度擾乱を加える。マランゴニ数、プラントル数、ビオー数はそれぞれ200,1,1とした。球表面方向には球面調和関数によるスペクトル法を用い、半径方向は2次精度の中心差分法を用いて離散化した。相当格子数は32×16×25である。60000ステップの計算中1000ステップ毎にサンプリングしたデータを元に汎用可視化ソフト(AVS-Express)を用いて可視化・動画化したものである。
 動画では、青で低温領域、赤で高温領域を表している。動画1動画2は同じデータを可視化したものであるが、動画1では温度と色の対応を全ステップにわたって固定しているのに対して、動画2では各時刻の表面温度分布を強調している。したがって、動画1では微小な表面温度差が拡大していく様子が分かり易いが、対流の発生と表面温度分布の関係を調べるような場合には動画2のような見かたの方が適している。
 動画に示された現象について簡単にコメントしておく。初期に配置された高温領域、低温領域は対流が発達するとともに温度差を拡大しながら移動、変形する。各領域はやがて分裂してより小さな領域が形成される。これは、液層の半径方向の深さに応じた渦ができるためで、液層が薄い(内部固体球が大きい)ほど細かい渦ができることを確認している。逆に液滴の大きさに対して固体球が小さい場合には、液滴全体にわたる大きな対流が形成される。

参考文献
戸谷剛,黒田明慈,工藤一彦,球面調和関数を用いたスペクトル法による球状液滴内三次元過渡表面張力対流の数値解析手法,日本機械学会論文集B編,65−629,267-274,(1999).


知的乱流制御の先導設計

遠藤 誉英  笠木 伸英

東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻 博士課程3年,教授



1. まえがき

 乱流およびそれに付随する摩擦抵抗, 伝熱, 発生音などの乱流現象は, 先端技術, 環境の諸問題に深く関与しており, 実用的かつ高効率な乱流制御技術が求められている[1]. 乱流制御はおそらく乱流研究の約100年の歴史の当初から描かれた夢に違いないが, 近年高度に知的な乱流制御を実現するために必要なソフトウエアやハードウエアの急速な進展があった. 例えば, 最適制御理論やニューラルネットワーク理論と流体力学の融合や, マイクロマシン技術の応用による微細なセンサ, アクチュエータの開発を挙げることができる. 今後具体的な系を対象とした制御システムを開発するためには, 理論や数値シミュレーションを駆使した先導設計と共に, ハードウエア要素とそれらの実装のための開発研究が急がれる. 以下では, ダイレクト・シミュレーション(DNS)を駆使した, 壁乱流制御システムの先導設計研究の一例を紹介する.
 最近, Endo et al.[2] は, 乱流摩擦抵抗低減を目的として, 実用化の可能性が大きいと考えられるセンサ群, 変形アクチュエータ群を壁面上に規則正しく配置したスマート・スキンを提案し, チャネル乱流の DNS によって評価している. 種々の統計量とともに, 乱流場の可視化を応用することによって, 壁乱流固有の縦渦構造の生成過程に対する制御効果を明らかにし, 将来の設計指針の一助としている.

2. 分散型変形アクチュエータ群による壁乱流のアクティブ・フィードバック制御

 DNS においては, 空間離散化に二次精度中心差分を用い. 時間進行には修正クランク・ニコルソン型フラクショナル・ステップ法を適用した[2].計算領域は, δをチャネル半幅として,流れ方向に2.5πδ, スパン 方向に0.75πδをとった.計算格子数は, x, y, z 方向にそれぞれ 96, 97, 96 点とし, x, z 方向には一様格子とした. 時間刻み幅は 0.33ν/uτ2 とし, 流量一定条件を課した. バルク平均流速 Ub およびチャネル幅 2δ で定められるレイノルズ数は4600 としたが, このとき非制御時の平均摩擦速度 uτδ で定まるレイノルズ数は Reτ〜150 である.
 図 1 に, 非制御時のチャネル乱流における壁面近傍の乱流構造の動画を示す. 図は, チャネル下壁面近傍の乱流構造を, 壁垂直方向に可視化したもので, 流れは図の左から右に向かう. 白色等値面は, 変形速度勾配テンソル u'i,j の第二不変量 ( II'=u'i,j u'j,i ) の閾値によって可視化された渦構造を示し, 赤, 青色等値面はそれぞれ高, 低速ストリーク (u'+=±3.5) を表す.また, 観測フレームは対流速度 Uref+=10 で流れ方向に移動しており, ストリーク構造の揺動, 渦構造の再生成の観察を容易にしている.
 ストリーク構造は, スパン方向へ揺動現象を示し, 渦構造は活発に生成あるいは再生成を繰り返していることがわかる. 特に, 縦渦構造は, 低速ストリークの揺動点下流に多く存在している. DNS データベースを用いた条件付抽出の結果からは, 低速ストリークの 揺動点下流端に縦渦構造が高い確率で存在することが示されている[3]. また, 流れ場中に存在する縦渦構造を, 壁面剪断応力のスパン方向勾配によって検知することが可能であり, その際, 縦渦構造は検知 センサから約50 ν/uτ 下流の位置に存在することが示された.
 図 2 に, 剪断応力センサと変形アクチュエータの配置図を示す. 縦渦構造に伴う壁垂直方向速度成分を減衰させることによって, 縦渦の回転運動を抑制するため, 各アクチュエータはスパン方向に凹凸状に変形するとした. アクチュエータのスパン方向長さは 60ν/uτ, 流れ方向長さは 200/uτ とした. 剪断応力センサは, アクチュエータ最大可動域から 50ν/uτ 上流に位置するように配置した. アクチュエータは, チャネル両壁面にそれぞれ 36 個 (流れ方向, スパン方向に6×6個) 等間隔に配置した.
 各センサは, 2 つの壁面剪断応力成分のスパン方向勾配, u/dzw/dz を計測し, センサが負の w/dz を検知した時に, アクチュエータの変形速度 vm は以下のように与えられる.

(1)

ここで, ymは凹凸の変形量を表し,α=2.3, β=0.077, γ=0.3と定めた.
 図 3 に, 変形アクチュエータ群による制御下における壁面近傍の乱流構造を可視化した. 可視化される物理量は, 図 1 と同様である. 制御下では, 低速ストリークの揺動現象が著しく抑制されることが分かる. このことにより, 縦渦構造の再生成が抑制され, 縦渦構造が減少していくことが分かる.
 図 4 に, 流れ方向平均圧力勾配の時間変化を示す. 圧力勾配は, 非制御時の平均圧力勾配 <dp/dx>c によって正規化されている. 変形アクチュエータ群によって制御された結果, 制御効果が現れるまでに時間遅れが生じているものの, t+=800 において最大抵抗低減率17%が得られている. 本制御による摩擦係数の低減率は, 約10% であり, 流れの駆動仕事の削減と, 制御に要した仕事との比は約12である.

3. 結び

 高度に知的な乱流制御の実現に向けた研究の一例を紹介した. DNS/LESなどの大規模数値シミュレーションは, 新しい制御アルゴリズムの提案を系統的に評価するために有効である. 今後は, 実用性を勘案して, 流れ場に関して限られた情報, あるいは劣化した情報からも, 適切な制御入力の時空間分布を決定することの可能なアルゴリズムの開発評価が重要である. 一方, 微細なセンサ, アクチュエータ, 制御回路設計など, ハードウエアの開発研究を進めることも必要である. そして, これらの両輪がバランス良く進展してこそ, 新たな機械システムを創造することが可能になり, また, それらの基礎研究の成果は他分野にも様々な波及効果を及ぼすものと予想される.

参考文献

[1] 笠木, 乱流のスマート・コントロールに向けて, 日本航空宇宙学会誌, 48, 2000, pp. 155-161.
[2] Endo, T., Kasagi, N., and Suzuki, Y., ``Feedback Control of Wall Turbulence with Wall Deformation,'' 1st Int. Symp. Turbulece and Shear Flow Pheonomena, Santa Barbara, 1999, pp. 405-410.
[3] 遠藤, 変形アクチュエータによる壁乱流のアクティブ・フィードバック制御に関する研究, 東京大学博士論文, 1999.

Fig. 1 Near-wall flow field without control.
Blue:u'+=-3.5,Red:u'+=+3.5, II'+=-0.03.

Fig. 2 Arrangement of deformable actuators.

Fig. 3 Near-wall flow field under control of deformable wall actuators.

Fig. 4 Time trace of mean pressure gradient.



マイクロスケールの非一様温度場中の単一気泡の挙動

高橋 厚史

九州大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻 助教授



1.はじめに
 マイクロマシン(MEMS)の世界での流体操作はオンチップ診断や薬液輸送などのバイオ工学をはじめとして将来の需要が大きく見込まれ、特に気液二相状態は未解決な課題も多いが利用価値のある現象もまだまだ隠されていると思われる。その基礎となる単一気泡は均質核沸騰と膨張圧力を利用したサーマルインクジェットプリンターがマイクロスケールでの応用の代表格であるが、固体可動部がないことによる高信頼性と変位の大きさはアクチュエーターとして非常に有利である。ところで、こういったマイクロスケールでの熱流動現象は温度・速度などの計測が困難である一方で、低レイノルズ数化によって理解は容易になる。しかしながらマクロな熱流体の常識が必ずしも通用しない場合も多く、濡れ性など物性に依存した性質が大きく現れがちで、新しいシステムの開発のためにはとにかく試してみることであろう。幸い気泡の場合は光の波長に比べてずっと大きければ目で見て様子を理解することができる。ここでは半導体微細加工技術によりシリコン基板の酸化膜上に描いた長さ80ミクロンの薄膜電気ヒーターを使って、フロリナート中で生じさせた直径数百ミクロンの蒸気気泡の挙動を動画によって紹介しながら、マイクロスケール特有の熱流体機構を推測してみようと思う。

2.屈伸運動する気泡
 まずAのムービーを御覧頂きたい。気泡が上下に運動しているのがわかる。これは左右のプローブを通して気泡直下のヒーターにかける電圧を意図的に上下した結果である。プローブの先端は約400ミクロン離れている。ここで重要なのは、電圧を上げると気泡はしゃがんで、電圧を下げると立ち上がるという点である。古典的な沸騰の常識とはかなり違っているわけだが、これはマイクロスケールでは体積力に比べて面積力が卓越してくるためである。ここでの面積力とは気泡のマランゴニ効果すなわち界面の温度差による表面張力の違いによって気泡が高温部へ引っ張られる性質を指す。実はこの気泡を生じさせているヒーターは、長さ40ミクロン毎に線幅が2ミクロンと4ミクロンと二段階になった金属薄膜で、ジュール熱の差に応じて非一様な温度分布状態を作っている。気泡は生成時以降ずっと線幅の細いヒーター高温部の直上にいるのだが、この動画程度の径にまで成長すると気泡直下のその部分はほぼドライアウト状態になる。その一方で、近傍にある線幅の広いヒーター低温部は気泡から外れており、それが、応答性の良い薄膜であるが故に電圧に応じて温度が急上昇して気泡を引っ張ることで、このような屈伸運動を起こしているのである。

3.反復横跳する気泡
 次にBのムービーを鑑賞して頂きたい。先の場合とは異なり、電圧一定をはじめ外部から変動する信号は一切与えていないにも関わらず、発生した気泡が自発的に左右に振動している。ここで用いた薄膜ヒーターは80ミクロンの長さのうち中心部の幅が2ミクロンと最も狭く左右に行くほど幅広になる幾何形状をしている。冷却を特に行っていないため気泡は生成、成長、離脱を繰り返すわけだが、ある程度以上の径では往復運動が起こる。ただし、サブクール度が減少してくると、この振動は生じなくなる。これは上記のマランゴニ効果に加えて気泡直下のメニスカスを通る熱伝導が大きな役割を果たしていると考えられる。というのも、マイクロスケールであるために気泡は自身の球形をほぼ保ち、高い熱流束を生む薄い液膜部分が存在し、薄膜ヒーターの中で気泡直下の部分だけが局所的に冷やされることになる。すると、それ以外のヒーター部分の温度が勝って気泡を引き寄せる。ところが気泡が到着すると熱容量の小さい薄膜ゆえに瞬時に温度が低下して引き寄せていた力が弱まる。いうなればヒーターの各部分が気泡のキャッチ&リリースを繰り返しているわけである。詳細としては、気泡が大きくなるに従ってドライアウト状態が変化するはずであり、水平運動なのか首振運動なのかなど、さらに検討の余地があるが、マランゴニ効果にしてもメニスカスにしても熱工学における既存の知見でありながら、マイクロの世界で組み合わさると目新しい現象を生じさせるという一例であろう。

4.おわりに
 今回は沸騰伝熱と表面張力に関連する現象のみを取り上げたが、マイクロスケールの熱流体研究は実用化を念頭に置いてまさにこれからが本番と考えられる。今後はアクチュエーターなど工学的対象以外にも、幅広い展開が楽しめるものと期待している。

        
A 屈伸運動する気泡 B 反復横跳する気泡

講演会・講習会案内


日本機械学会熱工学部門講習会

(No.00-8) 乱流輸送現象のモデリングとシミュレーションの新展開


協 賛 : 計算力学部門、流体工学部門、(社)日本伝熱学会、(社)日本流体力学会、日本数値流体力学会

日 時 : 平成12年4月7日(金)(13:00-18:30)〜8日(土)(9:00-16:30)

場 所 : 東京大学山上会館大会議室(7日) および 東京大学工学部11号館講堂(8日)
       東京都文京区本郷7-3-1、電話(03)3812-2111
       JR中央線御茶の水駅より東大構内行バス利用(約10分)で終点下車徒歩2分位
       地下鉄丸の内線本郷3丁目駅下車、東大赤門又は正門経由(徒歩10分)

趣 旨 :  
 乱流のモデリングおよび数値シミュレーション技術の進展はめざましいものがあり、コンピュータのパワーアップと相俟って、現実の熱流体機器や航空関連機器に実現される複雑乱流を高精度で再現しうるレベルに到達しつつあります。本講習会では、乱流のモデリングおよび数値解析においてパイオニア的存在であられるB. E. Launder教授(UMIST)とK.Hanjalic教授(Delft Univ. Tech.)をお迎えし、さらに圧縮性複雑乱流解析の第一人者であるT.Gatski博士(NASALangley)に加わって頂き、乱流輸送現象のモデリングとシミュレーションの現状および近年の新しい展開について、わかりやすく解説して頂きます。講師 との質疑応答および専門分野ごとの個人的な対話などにも十分時間を配慮してございます。機械工学や航空工学関連の方はもちろんですが、数値熱流体の世界的動向に興味をお持ちの多方面の方々が多数ご参加くださいますようお持ちしております。 聴講料 会員30,000円(学生員10,000円)、会員外50,000円(一般学生15,000円)。同聴講料には教材1冊分代金および懇親会費が含まれております。なお、協賛団体会員の方も本会会員と同じお取り扱いとさせて頂きます。開催日の10日前までに聴講料が着金するようにお申込みください。

申込方法  : 機械学会のURL http://www.jsme.or.jp/kousyu2.htm にアクセスし、行事参加申し込みフォームよりお申し込みください。
         または、[熱工学部門講習会乱流]と明記の上,申込者氏名(ふりがな),連絡先住所を E-mail またはFaxで下記までご連絡下さい。
         E-mail: kawasaki@jsme.or.jp  Fax: 03-5360-3508 Tel: 03-5360-3506 (機械学会事務局担当 川崎さおり)

問合わせ先  : 中山 顕  静岡大学工学部機械工学科  
                  〒432-8651 浜松市城北三丁目5-1
                  Phone & Fax: 053-478-1049  E-mail :tmanaka@ipc.shizuoka.ac.jp

定 員 :  70名、申込み先着順により満員になりしだい締切ります。

Prof. B.E. Launder (UMIST, U.K.)
Cubic non-linear eddy viscosity models TCL approach to second-moment closure Applications of TCL models to buoyancy-modified shear flows

Prof. K. Hanjalic (Delft, The Netherlands)
Second-moment turbulence closures and their application to transitional and complex turbulent flows Closures for turbulent flows driven by buoyancy and other body forces Application of time-dependent RANS to the computation of structure dominated turbulent flows

Dr. T. B. Gatski (NASA Langley, U.S.A.).
Turbulence modeling and compressible flows Obtaining explicit representations of algebraic tensor anisotropy equations in turbulence Developing transition-sensitized turbulence models


講演会・講習会報告


日本機械学会熱工学部門講習会報告

(No.99-81) 分散利用型燃料電池・アンモニア/水系エネルギーシステムの展望


 標記講習会は、第76期(平成10年度)熱工学部門講習会委員会によって立案され、平成11年10月26日、27日の両日、早稲田大学国際会議場において開催された。経済状況の厳しい中での計画であったため、その企画途上で当時の運営委員会委員の皆様からの意見を集約するアンケートを実施するなど、部門関係者の皆様に多大なご迷惑をかけながら実施に至ったと同時に、委員長として今後に引き継ぐべき事柄も経験させていただいたので、計画から実施に至る経過報告をさせて頂く。
 第76期の部門長東大庄司先生から講習会企画指示を頂いた時、熱工学部門企画の講習会への参加者が、各期委員会の献身的な努力にも関わらず減少していることから、講習会企画法の見直しと企画を行わない可能性も視野に入れていただきたい旨、御願いしたことを昨日のように記憶している。その後、数回の講習会委員会を経ていくつかの企画案と、実施日ならびに会場を仮予約して、熱工学 講演会と同時に開催された運営委員会で実施する方向で決断したことを報告した。この時、新しい試みとして、テーマを初日、二日目と分け、負担の軽減を図ると共に、二日目には見学と懇談を加えた。すなわち、参加者は一日コースと全コースを選択できるようして、料金も別体系とする提案を行った。
 その後、この企画案に対して総務委員会側でもご心配を頂き、特にテーマの絞り方へのご意見を頂戴するとともにアンケートの実施と、可能な限りDMによるお誘いを出すようにとの進言を頂いた。
 このようにして、プログラムは 第一部(Aコース) 分散利用型燃料電池の展望 @最近の燃料電池の動向 燃料電池開発情報センター 本間琢也先生、A燃料電池による都市型エネルギーカスケードシステム 東京農工大 柏木孝夫先生、Bオンサイト用燃料電池の運転実績と導入事例 東芝 電力システム社 奥村実氏、C燃料電池と材料 横国大 太田健一郎先生、D燃料電池自動車のための車戴水素タンクと手一式水素貯蔵装置 富山県工業技術センター中央研究所 上原斎氏、E最近の高分子電解質型燃料電池技術 山梨大 内田博之先生。 第二部(Bコース)アンモニア/水系エネルギーシステムの展望 @アンモニア/水吸収冷凍機の精留性能予測とその向上 関東学院大 辻森淳先生、A早稲田大学におけるアドバンスト・コージェネレーションシステムでのアンモニア/水系サイクルの構築 早稲田大学理工総研 天野嘉春先生、B新世代アンモニア吸収式の開発と課題 ダイキン工業 武居俊孝氏 C早稲田大学理工学総合研究センターACGSの見学。と決定した。
 最近話題性のある問題を取り上げたからか、RC関係者へのDM送付が功を奏してか、参加者総数67名、このうち大学関係者(大学院生を含む)25名、国研関係4名、企業38名となり、多数の方をお迎えすることができた。また、講習会後のテキストの売れ行きも好調なようである。
 このように成果をあげることができたのも、当時の運営委員会、総務委員会、講習会委員会委員の御協力によるものと、心から感謝するとともに、お忙しい中こ尽力賜った講習会講師の先生方、事務関連を全て引き受けてくださった機械学会川崎さんにお礼申し上げる。