特 集:AVを用いた熱工学研究 |
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巻頭言 特集「AVを用いた熱工学研究」の刊行にあたって片岡 勲熱工学部門 広報委員長大阪大学大学院 工学研究科 機械物理工学専攻 教授 |
壁乱流音の直接シミュレーション辻本 公一 三宅 裕大阪大学大学院 工学研究科 機械物理工学専攻 助手,教授 |
図1. 遠方点での音圧変動 | 図2. 壁近傍の音源分布 |
図3. 壁近傍の微細渦構造 | 図4. 壁近傍の音圧分布 |
固体壁面上の液滴核生成の分子シミュレーション丸山 茂夫東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻 助教授 |
1.はじめに
壁面上での液滴核生成の問題は,滴状凝縮理論の観点や最近の量子ドット生成などのナノテクノロジーとも関連して極めて興味深い.著者らは,図1に示すように,固体面上の液滴の平衡状態について分子動力学法を用いて検討してきており,分子スケールのポテンシャルパラメータと接触角などのマクロな測定量の関係を明らかにしてきた(1).一方,最近,L-J流体や水の均質核生成過程の分子動力学法による直接的なシミュレーションによって(2,3),古典核生成理論の限界が示されている.本報では固体壁面上での液滴の不均質核生成の分子動力学法シミュレーションを実行し,古典的な核生成理論との比較を示す.
GIF Animation
Fig. 1 A snapshot and density profile of liquid droplet on a
dolid surface.
Effect of temperature
and size.
2.計算方法
図2に示すように,下面に固体壁面を配置し,上面を鏡面,四方側面を周期境界条件とした系を考える.
GIF Animation
Fig. 2 Calculation domain.
気体,液体分子はアルゴン分子を仮定して,Lennard-Jonesポテンシャル のパラメーター, 質量はアルゴンの値を用いる.
(1) |
壁面分子とアルゴンとのポテンシャルも Lennard-Jones ポテンシャルで表現し, 下壁面のエネルギーのパラメーターeINTを変化させ, 下壁面のぬれ易さを変化させた (表1参照) .
Table 1 Calculation conditions.
Label | eINT [x10-21J] |
q [deg] |
Tave [K] |
Jsim [cm-2s-1] |
Jth [cm-2s-1] |
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E2 | 0.426 | 135.4 | 108 | 6.52x1020 | 4.86x1021 |
E3 | 0.612 | 105.8 | 114 | 3.45x1021 | 4.47x1021 |
E4 | 0.798 | 87.0 | 120 | 5.76x1021 | 5.54x1020 |
壁面はfcc <111>面のバネマス分子1層(4464個)とし,質量,最近接分子間距離,バネ定数はそれぞれ白金の値を用いた.更に,壁面分子の外側には温度一定のボルツマン分布に従うphantom分子を配置し,一定温度に保たれた熱浴を擬似的に実現した.その他の計算条件の詳細は,著者らが壁面での気泡生成のシミュレーションを行った場合とほぼ同様である(4).
3.結果と考察
初期条件として計算領域の中央に5760個のアルゴン分子をfcc構造で配置し,最初の100
psの間,設定温度(160 K)に応じた速度スケーリングによる温度制御を行った後,phantomによる温度制御のみで500
psまで計算して平衡状態のアルゴン気体で系を満たした.その後phantomの設定温度を100
Kに下げ,壁面から系を冷却していった.
表1のE2における圧力,温度,monomerの数,および最大クラスターサイズの時間変化を図3に示す.ここでクラスターとは各時間において分子間距離が1.2sAR以下であるような分子の集合と定義した.
Fig. 3 Pressure, temperature, number of monomer,
maximum cluster size variations. (E2)
計算開始から500 ps後,phantomの温度制御により壁面が急激に冷却され,その後徐々にアルゴンの温度が下がっていく.その過程で徐々にクラスターが形成され,成長していく.
図4にクラスター生成の時間変化を示す.ここではより明瞭にするため5分子以上からなるクラスターのみを示した.
Fig. 4 Snapshots of clusters larger than 5 atoms.
生成するクラスターが壁面近傍に集中しているのがわかる.一方,よりぬれにくい壁面条件であるE1では液体内部においても比較的多くのクラスター生成が行われており,均質核生成に近い状況になっていた.
図5に閾値サイズ以上のクラスター数の時間変化を示す.破線はそれぞれが直線的に増加している部分にフィットするような直線である.
Fig. 5 Variations of number of clusters larger than a threshold.
(E2)
閾値20あるいは30以上ではこの直線の傾きがほぼ平行となっている.このことはそのサイズを超えたクラスターが安定的に成長を続けていることを示しており,この直線の勾配から核生成速度を見積もることができる.30以上,40以上,50以上の直線の傾きの平均から見積もられる核生成速度はJsim = 3.45x1021 cm-2s-1となる.
一方,古典核生成理論では平滑な固体壁面での不均質核生成の核生成速度Jthは以下のように表すことができる.
(2) | |
クラスター数が直線的に変化している1000 psから1500 psの平均温度Tave,およびmonomerの密度rを用いて計算を行うと,Jth = 4.47x1021 cm-2s-1となる.均質核生成の場合に7桁もの大きな差があったのに反して,本シミュレーションでは理論と非常によく一致している.また臨界クラスターサイズは
(3) |
で与えられ,n* = 16.5と計算される.シミュレーションからは図 5における直線の傾きの変化から20程度が臨界クラスターのサイズであると見積もられ,ほぼ一致する.
臨界核以下のクラスター分布は
(4) |
で与えられる.この式を用いてシミュレーションで得られるクラスター数が直線的に変化している期間の平均クラスター分布c(n)からクラスター生成に必要な自由エネルギーDGを求めたのが図6の丸印である.実線は理論で以下の式で与えられるDGを示す.
(5) | |
また,三角は壁面に接触していないクラスター分布から求められるDG,点線は均質核生成の場合の理論式から導かれるDGを示す.
Fig. 6 Cluster formation free energy.
ここで式(4)によるDGの見積もりは臨界核(DGがピークの位置)以下のサイズでのみ有効である. 壁面がぬれやすくなるほど,壁面に接するクラスターと接しないクラスターのDGの差が大きくなる.臨界核以下の部分で比較すると不均質核生成の理論と壁面に接するクラスター分布から得られるDGはほぼ一致していることがわかる.一方,均質核生成理論から得られるものと壁面に接触していないクラスター分布とでは,若干シミュレーションのクラスター分布から得られるDGが大きくなっているものの,全体としての一致は均質核生成のMDシミュレーションの結果からは考えられないほどよい.
5 おわりに
固体壁面を急冷することによる液滴の不均質核生成の分子動力学法シミュレーションによって,古典核生成理論とそれほど違わない核生成速度が計算された.均質核生成の分子動力学法では,古典核生成理論とほど遠い結果となっていることから,本報の系での核生成速度の一致は予想に反するものであり,その理由の解明は今後の課題となる.ただし,いずれの分子動力学法シミュレーションも現実的なマクロな熱問題の時間スケールや過飽和度と相当に異なる条件であり,マクロな問題との直接的な比較は容易ではない.
文献
(1) Maruyama, S., ほか4名, Microscale Thermophysical
Engineering, 2-1 (1998), 49-62.
(2) Yasuoka, K. & Matsumoto, M., J. Chem. Phys., 109-19 (1998),
8451-8462.
(3) Yasuoka, K. & Matsumoto, M., J. Chem. Phys., 109-19 (1998),
8463-8470.
(4) 丸山茂夫・木村達人, 機論, 65-638 B (1999), 225-231.
超親水性光触媒による流下液膜式蒸発熱伝達の促進高田 保之九州大学大学院 工学研究科 機械科学専攻 助教授 |
写真1 通常面 q=30kW/m2, Ref=132 | 写真2 超親水面 q=30kW/m2, Ref=123 |
図1 流下液膜式蒸発の伝熱特性 | 図2 浸漬冷却の温度履歴 |
球状液滴内表面張力対流の数値解析黒田 明慈北海道大学大学院 工学研究科 機械科学専攻 助教授 |
知的乱流制御の先導設計遠藤 誉英 笠木 伸英東京大学大学院 工学系研究科 機械工学専攻 博士課程3年,教授 |
1. まえがき
乱流およびそれに付随する摩擦抵抗, 伝熱, 発生音などの乱流現象は, 先端技術, 環境の諸問題に深く関与しており,
実用的かつ高効率な乱流制御技術が求められている[1]. 乱流制御はおそらく乱流研究の約100年の歴史の当初から描かれた夢に違いないが,
近年高度に知的な乱流制御を実現するために必要なソフトウエアやハードウエアの急速な進展があった. 例えば, 最適制御理論やニューラルネットワーク理論と流体力学の融合や,
マイクロマシン技術の応用による微細なセンサ, アクチュエータの開発を挙げることができる. 今後具体的な系を対象とした制御システムを開発するためには,
理論や数値シミュレーションを駆使した先導設計と共に, ハードウエア要素とそれらの実装のための開発研究が急がれる. 以下では,
ダイレクト・シミュレーション(DNS)を駆使した, 壁乱流制御システムの先導設計研究の一例を紹介する.
最近, Endo et al.[2] は, 乱流摩擦抵抗低減を目的として, 実用化の可能性が大きいと考えられるセンサ群,
変形アクチュエータ群を壁面上に規則正しく配置したスマート・スキンを提案し, チャネル乱流の DNS によって評価している.
種々の統計量とともに, 乱流場の可視化を応用することによって, 壁乱流固有の縦渦構造の生成過程に対する制御効果を明らかにし,
将来の設計指針の一助としている.
2. 分散型変形アクチュエータ群による壁乱流のアクティブ・フィードバック制御
DNS においては, 空間離散化に二次精度中心差分を用い. 時間進行には修正クランク・ニコルソン型フラクショナル・ステップ法を適用した[2].計算領域は,
δをチャネル半幅として,流れ方向に2.5πδ, スパン 方向に0.75πδをとった.計算格子数は, x,
y, z 方向にそれぞれ 96, 97, 96 点とし, x, z 方向には一様格子とした. 時間刻み幅は 0.33ν/uτ2 とし,
流量一定条件を課した. バルク平均流速 Ub およびチャネル幅 2δ で定められるレイノルズ数は4600
としたが, このとき非制御時の平均摩擦速度 uτ と δ で定まるレイノルズ数は Reτ〜150 である.
図 1 に, 非制御時のチャネル乱流における壁面近傍の乱流構造の動画を示す. 図は, チャネル下壁面近傍の乱流構造を,
壁垂直方向に可視化したもので, 流れは図の左から右に向かう. 白色等値面は, 変形速度勾配テンソル u'i,j の第二不変量 ( II'=u'i,j
u'j,i ) の閾値によって可視化された渦構造を示し, 赤, 青色等値面はそれぞれ高, 低速ストリーク (u'+=±3.5) を表す.また,
観測フレームは対流速度 Uref+=10 で流れ方向に移動しており,
ストリーク構造の揺動, 渦構造の再生成の観察を容易にしている.
ストリーク構造は, スパン方向へ揺動現象を示し, 渦構造は活発に生成あるいは再生成を繰り返していることがわかる. 特に,
縦渦構造は, 低速ストリークの揺動点下流に多く存在している. DNS データベースを用いた条件付抽出の結果からは, 低速ストリークの
揺動点下流端に縦渦構造が高い確率で存在することが示されている[3]. また, 流れ場中に存在する縦渦構造を, 壁面剪断応力のスパン方向勾配によって検知することが可能であり,
その際, 縦渦構造は検知 センサから約50 ν/uτ 下流の位置に存在することが示された.
図 2 に, 剪断応力センサと変形アクチュエータの配置図を示す. 縦渦構造に伴う壁垂直方向速度成分を減衰させることによって,
縦渦の回転運動を抑制するため, 各アクチュエータはスパン方向に凹凸状に変形するとした. アクチュエータのスパン方向長さは 60ν/uτ,
流れ方向長さは 200/uτ とした. 剪断応力センサは, アクチュエータ最大可動域から 50ν/uτ 上流に位置するように配置した.
アクチュエータは, チャネル両壁面にそれぞれ 36 個 (流れ方向, スパン方向に6×6個) 等間隔に配置した.
各センサは, 2 つの壁面剪断応力成分のスパン方向勾配, dτu/dz と dτw/dz を計測し,
センサが負の dτw/dz を検知した時に, アクチュエータの変形速度 vm は以下のように与えられる.
(1)
ここで, ymは凹凸の変形量を表し,α=2.3, β=0.077, γ=0.3と定めた.
図 3 に, 変形アクチュエータ群による制御下における壁面近傍の乱流構造を可視化した. 可視化される物理量は, 図 1 と同様である. 制御下では, 低速ストリークの揺動現象が著しく抑制されることが分かる. このことにより, 縦渦構造の再生成が抑制され, 縦渦構造が減少していくことが分かる.
図 4 に, 流れ方向平均圧力勾配の時間変化を示す. 圧力勾配は, 非制御時の平均圧力勾配 <dp/dx>c によって正規化されている. 変形アクチュエータ群によって制御された結果, 制御効果が現れるまでに時間遅れが生じているものの, t+=800 において最大抵抗低減率17%が得られている.
本制御による摩擦係数の低減率は, 約10% であり, 流れの駆動仕事の削減と, 制御に要した仕事との比は約12である.
3. 結び
高度に知的な乱流制御の実現に向けた研究の一例を紹介した. DNS/LESなどの大規模数値シミュレーションは, 新しい制御アルゴリズムの提案を系統的に評価するために有効である. 今後は, 実用性を勘案して, 流れ場に関して限られた情報, あるいは劣化した情報からも, 適切な制御入力の時空間分布を決定することの可能なアルゴリズムの開発評価が重要である. 一方, 微細なセンサ, アクチュエータ, 制御回路設計など, ハードウエアの開発研究を進めることも必要である. そして, これらの両輪がバランス良く進展してこそ, 新たな機械システムを創造することが可能になり, また, それらの基礎研究の成果は他分野にも様々な波及効果を及ぼすものと予想される.
参考文献
[1] 笠木, 乱流のスマート・コントロールに向けて, 日本航空宇宙学会誌, 48, 2000, pp. 155-161.
[2] Endo, T., Kasagi, N., and Suzuki, Y., ``Feedback Control
of Wall Turbulence with Wall Deformation,'' 1st Int. Symp. Turbulece
and Shear Flow Pheonomena, Santa Barbara, 1999, pp. 405-410.
[3] 遠藤, 変形アクチュエータによる壁乱流のアクティブ・フィードバック制御に関する研究, 東京大学博士論文, 1999.
マイクロスケールの非一様温度場中の単一気泡の挙動高橋 厚史九州大学大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻 助教授 |
A 屈伸運動する気泡 | B 反復横跳する気泡 |
講演会・講習会案内 |
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協 賛 : 計算力学部門、流体工学部門、(社)日本伝熱学会、(社)日本流体力学会、日本数値流体力学会
日 時 : 平成12年4月7日(金)(13:00-18:30)〜8日(土)(9:00-16:30)
場 所 : 東京大学山上会館大会議室(7日) および 東京大学工学部11号館講堂(8日)
東京都文京区本郷7-3-1、電話(03)3812-2111
JR中央線御茶の水駅より東大構内行バス利用(約10分)で終点下車徒歩2分位
地下鉄丸の内線本郷3丁目駅下車、東大赤門又は正門経由(徒歩10分)
趣 旨 :
乱流のモデリングおよび数値シミュレーション技術の進展はめざましいものがあり、コンピュータのパワーアップと相俟って、現実の熱流体機器や航空関連機器に実現される複雑乱流を高精度で再現しうるレベルに到達しつつあります。本講習会では、乱流のモデリングおよび数値解析においてパイオニア的存在であられるB.
E. Launder教授(UMIST)とK.Hanjalic教授(Delft Univ. Tech.)をお迎えし、さらに圧縮性複雑乱流解析の第一人者であるT.Gatski博士(NASALangley)に加わって頂き、乱流輸送現象のモデリングとシミュレーションの現状および近年の新しい展開について、わかりやすく解説して頂きます。講師
との質疑応答および専門分野ごとの個人的な対話などにも十分時間を配慮してございます。機械工学や航空工学関連の方はもちろんですが、数値熱流体の世界的動向に興味をお持ちの多方面の方々が多数ご参加くださいますようお持ちしております。
聴講料 会員30,000円(学生員10,000円)、会員外50,000円(一般学生15,000円)。同聴講料には教材1冊分代金および懇親会費が含まれております。なお、協賛団体会員の方も本会会員と同じお取り扱いとさせて頂きます。開催日の10日前までに聴講料が着金するようにお申込みください。
申込方法 : 機械学会のURL http://www.jsme.or.jp/kousyu2.htm にアクセスし、行事参加申し込みフォームよりお申し込みください。
または、[熱工学部門講習会乱流]と明記の上,申込者氏名(ふりがな),連絡先住所を
E-mail またはFaxで下記までご連絡下さい。
E-mail: kawasaki@jsme.or.jp
Fax: 03-5360-3508 Tel: 03-5360-3506 (機械学会事務局担当 川崎さおり)
問合わせ先 : 中山 顕 静岡大学工学部機械工学科
〒432-8651 浜松市城北三丁目5-1
Phone & Fax: 053-478-1049 E-mail :tmanaka@ipc.shizuoka.ac.jp
定 員 : 70名、申込み先着順により満員になりしだい締切ります。
Prof. B.E. Launder (UMIST, U.K.)
Cubic non-linear
eddy viscosity models TCL approach to second-moment closure Applications
of TCL models to buoyancy-modified shear flows
Prof. K. Hanjalic (Delft, The Netherlands)
Second-moment
turbulence closures and their application to transitional and
complex turbulent flows Closures for turbulent flows driven by
buoyancy and other body forces Application of time-dependent RANS
to the computation of structure dominated turbulent flows
Dr. T. B. Gatski (NASA Langley, U.S.A.).
Turbulence modeling and compressible flows Obtaining
explicit representations of algebraic tensor anisotropy equations
in turbulence Developing transition-sensitized turbulence models
講演会・講習会報告 |
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標記講習会は、第76期(平成10年度)熱工学部門講習会委員会によって立案され、平成11年10月26日、27日の両日、早稲田大学国際会議場において開催された。経済状況の厳しい中での計画であったため、その企画途上で当時の運営委員会委員の皆様からの意見を集約するアンケートを実施するなど、部門関係者の皆様に多大なご迷惑をかけながら実施に至ったと同時に、委員長として今後に引き継ぐべき事柄も経験させていただいたので、計画から実施に至る経過報告をさせて頂く。
第76期の部門長東大庄司先生から講習会企画指示を頂いた時、熱工学部門企画の講習会への参加者が、各期委員会の献身的な努力にも関わらず減少していることから、講習会企画法の見直しと企画を行わない可能性も視野に入れていただきたい旨、御願いしたことを昨日のように記憶している。その後、数回の講習会委員会を経ていくつかの企画案と、実施日ならびに会場を仮予約して、熱工学
講演会と同時に開催された運営委員会で実施する方向で決断したことを報告した。この時、新しい試みとして、テーマを初日、二日目と分け、負担の軽減を図ると共に、二日目には見学と懇談を加えた。すなわち、参加者は一日コースと全コースを選択できるようして、料金も別体系とする提案を行った。
その後、この企画案に対して総務委員会側でもご心配を頂き、特にテーマの絞り方へのご意見を頂戴するとともにアンケートの実施と、可能な限りDMによるお誘いを出すようにとの進言を頂いた。
このようにして、プログラムは 第一部(Aコース) 分散利用型燃料電池の展望 @最近の燃料電池の動向 燃料電池開発情報センター 本間琢也先生、A燃料電池による都市型エネルギーカスケードシステム 東京農工大 柏木孝夫先生、Bオンサイト用燃料電池の運転実績と導入事例 東芝 電力システム社 奥村実氏、C燃料電池と材料 横国大 太田健一郎先生、D燃料電池自動車のための車戴水素タンクと手一式水素貯蔵装置 富山県工業技術センター中央研究所 上原斎氏、E最近の高分子電解質型燃料電池技術 山梨大 内田博之先生。 第二部(Bコース)アンモニア/水系エネルギーシステムの展望 @アンモニア/水吸収冷凍機の精留性能予測とその向上 関東学院大 辻森淳先生、A早稲田大学におけるアドバンスト・コージェネレーションシステムでのアンモニア/水系サイクルの構築 早稲田大学理工総研 天野嘉春先生、B新世代アンモニア吸収式の開発と課題 ダイキン工業 武居俊孝氏 C早稲田大学理工学総合研究センターACGSの見学。と決定した。
最近話題性のある問題を取り上げたからか、RC関係者へのDM送付が功を奏してか、参加者総数67名、このうち大学関係者(大学院生を含む)25名、国研関係4名、企業38名となり、多数の方をお迎えすることができた。また、講習会後のテキストの売れ行きも好調なようである。
このように成果をあげることができたのも、当時の運営委員会、総務委員会、講習会委員会委員の御協力によるものと、心から感謝するとともに、お忙しい中こ尽力賜った講習会講師の先生方、事務関連を全て引き受けてくださった機械学会川崎さんにお礼申し上げる。