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−留学生から一言−

東北大学大学院工学研究科
M1年 季 鎮伊

 お母さんの前に上げます。
 5階の講義室でみると青松の隙で多様な建物がある仙台市街が見え、その向こうには青い海と、雲を含んだ空が触れています。降りて50メートル位歩いて行くと私の机と日本人の友達がいる破壊力学応用研究施設があります。その手前には今、虻がコスモスの上を飛んで回っています。
 気温は日に日に変わって下がっていますがお母さんはお元気ですか。長男は結婚して、次男は近いのだとは言っても言葉、風習が違い外国で勉強しようと家を出ているので次女の茶目でも息子達への御心配は全然少なくならないとおもいます。先週の土曜日は五十三番目のお誕生日だったのは既に分かっていましたが席を共にしなくて手紙で代わりにする息子を許して下さい。ごこの仙台は本当に静かな、そして綺麗な都市で、勉強するのには最適だと思います。人々の身なりは地味ですし、車はゆっくり、そして静に流れているし、市内を貫く広瀬川には芋煮会という日本の東北地方の行事で焚火の白い煙が川の青色と交わってもう一つの白雲の青空を作っています。研究室に入ったら自分の仕事をやっている人々の表情は真剣、その自体です。日本での生活も一年と二カ月を過ぎています。短い期間だったんでなまじいに話すのは難しいと思いますが、その間に感じたのを少し話したいのです。
 路地毎まで舗装されている所が多いので、車の2台が通り過ぎられず1台は止まってもう1台は徐行しなければならない所も少なからずあります。徐行する車は止まった車に感謝の意味でクラクションをそっと鳴らします。小路から大路に出る車の為に譲歩する運転者は上向灯を一回点け消します。主に抗議する時、使っている我々に比べてとても良い使い方だと思います。研究室の外でいろんな人々と会いましたが、大抵の人の身持ちはかなり小さいのを感じました。椅子に掛ける時も腰掛けて身をめます。「−と思います」という言葉が多く使われています。別れる時は腰を屈めて何回でもあいさつします。腰を正しく立てて、自分の考えは断定形ではっきり言いし、あいさつは一回にするのが礼儀だと学んだ私には慌てる時があります。1年と2カ月の短い時間が下すのは「まだ分からない。しかし習うことは学問的な問題だけではない。社会の全体の流れを見て、それを理解して応用するのはもう一つの留学の目的である」という結論です。その為にもっと頑張ります。

 お誕生日、おめでとうございます。

1993年 10月 15日

綺麗な都市、仙台で

次男から。



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