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扉は開かれて−ロボコン・ボランティア始末記−

一関工業高等専門学校機械工学科5年
            佐藤 順子

 去る10月10日。我が校に、「ROBOCON93・東北大会」がやって来た。
 それに先立ち、学校側はボランティア・スタッフを募集した。申し込み第一号は、謀らずも、この私であった。
 「順子さ〜ん、ロボコン手伝って下さいよぉ」……夏の初めから、後輩に何度この台詞を言われたことか。「機械の5年生でしょぉ…」
 実は、高専に入学した頃から、私は一度でいいから、ロボコンに携わってみたかったのだ。しかし、最後のチャンスであった今年の夏、そんな私の前に立ちはだかったものは、「大学受験」であった。ロボット製作の始まった6月、私はその壁と戦わざるを得なくなったのである。途中から参加するのは、決まりが悪かった。第一、手土産に出来るほど、私には技術も知識もないのである。
 とうとう、私は5年間、ロボコンに関わらずじまいに終わることとなった。夏休み返上で頑張った後輩たちに、後ろ暗い思いを抱えて、私の高専生活は早、半年を残すのみ。
 そんな時、ボランティア・スタッフの募集広告が目に入った。
 ロボコンでお手伝い出来なかった分、少しでも大会運営でお役に立てれば。私は、プラカード持ちを拝命した。
 9日、学校の構内にはNHKのロゴの入った自動車が乗り込み、見慣れない顔が増え、午後には高専生の顔をした、だけど一度も会ったことの無い少年少女でごった返し始めた。夕方には、各校のロボットのテストランが始まる。私も、自分の仕事の手順を確認しながら、我が校のロボットを按じた。実は、2台のロボットたちは、次々とトラブルに見舞われ、皆眠れぬ夜を幾つか過ごしていると伝え聞いていたのだ。結局、テストランは「ちょっと心配」な結果だったようである。
 日が暮れて、会場準備は終わった。我が校のメンバーの1人は、笑顔を見せてこう言った。「期待しなくていいですけど、心配しなくてもいいですからね。ただ、応援はしてくださいよ!」
 大会当日、私は入場行進の先頭を歩いた。緊張していても、一関高専のブースにあるロボットに自然に目が行ってしまう。しかし、私はただ、応援するしかないのだ。
 結果は、健闘空しく初戦敗退ではあった。だが、熱意は充分に伝わってきた。勝負がついたとき、目頭が熱くさえなった。彼らにとって、昨年全国優勝というプレッシャーは、大変なものだったと思う。しかし、彼らは頑張った。
 私は、てのひらが真っ赤になるほど拍手を送った。それでも、まだ何か、感動を表し切れていない気もした。
 実際に真夏のような暑さの会場での、熱い戦いは終わった。私たちボランティア・スタッフも、よい汗を流しむいただいたスタッフ・トレーナーは、あちこち汗の染みが出来ている。しかし、さわやかな気分であった。
 高専にいる間に、ロボコン・メンバーにはなれなかったけれど、彼らがどんな努力をし、どんな戦いを繰り広げたのか、その一部をかい間見れたことは大きな収穫だったと思っている。


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