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夢を抱く

平成5年度委員長校顧問
秋田大学  熊谷 一男

 「少年は未来に生きるがゆえに美しく、青年は現実に生きるがゆえに悲しく、老年は過去に生きるがゆえに醜し。」
 中学生の頃何かの本で読んだこのような言葉が、老年の域に達して未来に夢を抱くことの無くなった今でも、何故か頭を離れません。
 夢は大きく持てとよく言われますが、天才建築家アントニオ・ガウディによって設計され1884年に着工された、高さ110mの塔を4本も持つバルセロナの聖家族教会は、1世紀以上経った今でも建築工事が進行中で、完成までにはあと200年は必要と言われており、なんと壮大なロマンかと驚くばかリです。
 モナ・リザや最後の晩餐などを画き、美術家・建築家そして科学者としても知られるルネッサンス期の万能の人レオナルド・ダ・ヴィンチは、何事も自分で経験し実験して確かめたそうですが、鳥の羽根の動きを模した飛行装置の設計図を残しておリまして、大空を飛ぶことに大きな夢を抱いた様が窺われます。
 技術的な夢からは少し離れますが、ベルリンの壁が打ち砕かれる2か月前の平成元年9月、ポーランド人女教師のお世話をする機会がありました。
 当時の厳しかったであろう社会情勢の中で日本の教育事情の視察を志し、10年間もお金を貯め続け、ワルシャワから列車・飛行機そして船を葉リ継いで、二人の子供を残してついに来日された30才台の彼女の夢は、決して小さなものとは言えない筈で、幾多の困難を乗リ越えて夢を実現した彼女は、教育者として、一回りも二回リも大きくなったに違いないと思うのです。
 以前は空想の世界のものに過ぎなかった超音速機やスペースシャトル、そしてロボットなどでさえも、私達にとって、もはや当たリ前のものとして利用されるようになりました。
 将来こんなことをしてみたい、こんなものを作ってみたいと夢見るのは、若い人の特権であリましょうし、エンジニアとして立派に成功するためにも、未来に夢を抱くことは必要不可欠なことではないでしょうか。最後に、次の諺を挙げて、学生会会員諸君の洋々たる未来に期待し、祝福したいと思います。
         「夢を追い続ければ正夢になる。」


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