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機械とは何か?

平成6年度学生会担当幹事
    東北大学 内山勝

 学生諸君は「機械」に対してどのようなイメージを持っているだろうか。機械系の学科を選択し、勉学に励んでいる学生諸君が、教師が与える「機械」のイメージをただ受け身に理解し、それを機械と思って欲しくない。教師の言うことを信じるなど言っているのではない。主体的に自分で「機械」のイメージを作ってもらいたい。空想力をたくましくし、未来の新しい機械像を作って欲しい。それは、若い学生諸君にできる特権である。そうやって作った新しい機械像は、諸君の成長とともに、新しい機械工学を作り、新しい文明の建設に貢献するはずである。
 機械学会の封筒にここ数年印刷されているキャッチフレーズを諸君は知っているだろうか。それは、「力のメカから知のメカヘ」。ひと昔前なら、「何じゃこれは」と言われそうなキャッチフレーズである。機械は「動き」に関係する。「動き」は力に支配される。大きな力を支配する機械工学に憧れた人は多い。それが、今はチマチマとしたコンピュータを使い、キーボードを叩き、ソフトにより制御された「知能機械」が新しい機械として脚光を浴びている。「知能機械」のキーワードは、ロボティクス、メカトロニクスである。このキャッチフレーズは新しい機械の潮流を反映する。この新しい機械の潮流は、現在40代・50代の諸君の先輩が作った。諸君の知っている4力の世界にこもった人達ではなく、機械工学の領域外と思われたエレクトロニクスなどを積極的に取り入れた人達によってこの新しい機械工学は作られた。ただし、これはたまたまそうなっただけである。
 機械工学と言うと、ルネッサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチの天才を思い浮かべる人が多い走ろう。彼は15世紀から16世紀にかけて活躍した。現在、20世紀であり、21世紀になろうとしている。25世紀に我々日本人は世界の人々に評価される遺産を残せるだろうか。ルネッサンス期のイタリア人にできたことを現代の日本人はできるだろうか。日本の経済的成功を見て、日本人にできることが我々にできないはずがない、と言う外国人は多い。
 諸君は現在、学生として機械工学を学んでいるが、常に「機械とは何か」を考え続け、諸君なりの「機械」のイメージを膨らまして欲しい。そして、新しい芽をつかんで欲しい。そして、その芽を育てるよう努力して欲しい。何を考えようが諸君の自由であり、また、何をしようが諸君の勝手である。学校で習う「機械工学」に自分を縛らないで欲しい。もっと「アナーキー」になってみたらどうだろう。


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