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就職ドキュメンタリー  '95

山形大学工学部
機械システム工学科4年  岸波 光帆子

 これは、超氷河期と言われた95年の就職戦線を戦った、ある1人の機械系女子学生の、半年間に及ぶ完全密着取材によるものである。

 1月−意識
 就職活動というと、会社へ行って、セミナーに出て、面接を受けて・・・というイメージがあるが、会社に行く前にやるべきことはたくさんある。まず初めに、そして最も大切なことは、就職に対する意識を高めることである。なぜ、この氷河期にわざわざ就職したいのか。どんな仕事をしたいのか。どんな人生を送りたいのか。ここで、”ま、なんとかなるか”と思ってしまうのが甘い。突然、大会杜の取締役の親戚が現れるわけもない。どんな仕事、どんな人生を送りたいかなんて、すぐ決められる人は少ないだろう。しかし、ここでじっくり考えることが、就職活動において一番大切なことだと思う。

 2月−SPI完全攻略本
 ”攻略本”という響きに負けて買ってしまったが、攻略というより参考という方が適切だろう。SPIにも何種類かあるが、私の場合、攻略本より数段難しかった。”ダーウィンの進化論について正しいものを選べ”ときた時には、”攻略木の嘘つき”と思った。攻略本を頼りにするのではなく、”SPIってこういうものか”と思う程度で十分だろう。性格判断については、忍耐の一言だ。1時間近くもあれをやっていると、”自分は、なんて矛盾に満ちた人間なんだ”と思い、次に、”どっちだっていいじゃん!”と、投げやりになってくる。しかし、ここで投げてはいけない。これをクリアしないと、面接には進めないのだ。

 3月−資料請求
 勝手に届いた就職ガイドを頼りに、ひたすら資料請求の葉書を書く。結果としては、105社中、”採用なし”を含めて、約30社から返事が来た。男子には、請求もしていない会社から資料が送られてくるのに、女子には、請求しても送ってくれない。だからこそ、特に女子は、たくさん葉書を書くべきだ。チャンスは多い方が有利だ。

 4月−セミナー
 4月下旬、初めてセミナーに参加した。特に興味のある会社ではなかったが、セミナーとは、どんなものかを知るために行ってみた。200人程のリクルートスーツの会場と、首都圏有名私立の大学名に圧倒された。実際に会社の説明を受けると、意外にいい会社がも、と思えてくる。良い面も悪い面も、パンフレットだけではわからない。

 5月−面接対策
 就職活動におけるメインイベントは、なんといっても面接だろう。面接のマニュアル本は、どんな質問をされるかを知るためのもので、質問の答えを知るものではない。答えを読むときは、”こういうことを言ったらだめなんだ”という気持ちで読めばいい。私も1度、集団面接をしたが、いろんな人がいた。1・質問の答えを覚えてきて、いかにも台本通りに話してます、という人。1度言葉に詰まったら、後が続かなくなったらしく、黙ってしまった。2・自慢する人。”簡単な自己紹介”を、長々と語り、「自分で、”自分ってすごいなあ”と思います」とのたまった時には驚いた。3・フォローが裏目に出てた人。「大学名ではなく、僕を見て下さい」と言った、聞いたことのない私大の彼の気持ちはわかるが、質問のたびにそれを言うので、かえって逆効果に思えた。短時間で自分を売り込んで、会社に気に入ってもらうのは難しい。やはり、どれだけ自分の人生についてしっかり考えているか、どれだけその会社に真剣に向かっているがが、大切だと思う。

 6月−祝・内定!
 1ヶ月待たされた大本命の会社に落ち、2社目は1週間で決まった。大本命の会社に落ちた理由はわからないが、”今に見てろ。絶対Bigになってやる!”と、心に誓うのだった。女子については、絶対的に男子より不利だ。最初から、技術職で女子を採らない会社が、想像以上に多かった。そんな会社に無理に入っても、まともに仕事をさせてくれないだろう。よっぽど入りたいなら別だが、そんな視野の狭い会社は、どうせたいした会社ではない。また、面接では必ず「結婚したらどうしますか?」と聞かれる。これは迷わず「仕事を続けます!」と答えるに限る。出産休暇や、育児休暇があるなら、そこをちょっとつついておけばいい。入ってしまえばこっちのもんだ。後でもし、結婚してやめたとしても「契約違反だ!」なんて言われないでしょう。たぶん・・・

 最後に−意識と情熱
 葉書の書き方や、履歴書の書き方、面接の作法なんてものは、どんな本にでも詳しく書いてある。そんなことより、なにより大切なのは、意識と情熱だと思う。自分の人生についてしっかり考え、「最高の人生を送るには、御社でなければだめなんです!」と言えるくらいの情熱。これさえあれば、なんとかなる!でも、これも1つのマニュアル。うのみにしてはいけないよ。


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