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秋田の国から95’夏

秋田工業高等専門学校
  機械工学科 5年 工藤 拓

 ある先生が「夢は,実現することを強く信じて努力し続ければ必ず叶う」と言った。この言葉を常に胸に秘め,私は一人で勉強し続けた。クラスのほとんどの人たちは,就職が決まって,遊びのことなどを楽しそうに話している。それにもかかわらず,一人でがんぱり続けることは本当に大変だった。少しでも高専生に編入試験の雰囲気が分かってもらえればと思い,大阪大学と東北大学を受験しに大阪と仙台へ行ってきた私の旅日記を書こうと思う。

 8月2日 大阪大学試験1日目
 阪大一次試験当日,なんと思いきり寝坊してしまった。電車に乗ろうと思っていた時間に起きてしまった。慌てて着替えて顔も歯も磨かずに,髪もぐしゃぐしゃのまま朝食もとらずに,大きな荷物を持ってチェックアウトした。駅までダッシュした。幸い秋田とは違い電車がたくさんあったので試験関始前には会場に着けた。気持ちをととのえる間もなく試験は始まってしまった市外は35℃もあったが,私の席は巨大なクーラーの前だったためものすごく寒くてブルブル震えて,試験どころではなかった。他の受験生たちは同じ学校からいっしょに来た友達と話していたが、私は遠い秋田から来て一人ぼっちだったので人の話を聞いていた。すると去年と傾向が同じだったとか,別に難しくなかったとか言っていた。私は試験が半分くらいしかできなかったので,阪大をうける人たちはすごい人ばっかりだなあと思い,レベルが違うと感じた。私は過去問を持っていなかったので、周りの人たちがうらやましかった。午後5時にやっと全てが終わり,もうここに来ることはないなと思いながら駅に向かって歩いていった。大阪駅に着いたらお土産は何を買おうかなと考えていた。デパートの地下にいって大好きな大学ポテト屋をみつけた。並んでいたら後ろのおぱさんに声をかけられた。少し話をしたらいかにも大阪のおぱさんという感じがした。大阪の世間にふれることができたようでとてもうれしかった。寝台列車で秋田に帰ってきた。買ってきた大学ポテトは19年間食べた中で一番おいしかった。もう食べられないと思いさびしくなった。しかし,8月17日に結果がきて一次が受かってしまった。私は阪大を,東大を受けるつもりで跳んでいたので信じられなかった。また,ポテトを食べることができると思いうれしくなった。

 8月21日 東北大学試験1日目
 前の晩は東北大に通っている友達のアパートに泊めてもらった。朝は,ご飯を作ってもらった。本命の大学だったため,緊張してごはんがあまりのどを通らなかった。試験場について申に入ると,約50人の受験者がいた。今日の朝は,午前3時に起きたので眠くなってきていた。いまいち仙台にいるという実感がわかないまま試験は始まった。数学は予想外のところが出たし,物理も3問のうち1問を白紙で出してしまった。終わってから友人の家に向かって歩いていて悲しくなってきた。いまさら嘆いてもどうしようもないので早く寝た。

 8月22日 東北大学試験2日目
 午前3時起床。7時,勉強を終えて音楽を聞きながら朝食をとった。今日で最後だと思い、気合い入れた。1時間目の試験は英語。”はじめ”と同時に私の頭には朝聞いた音楽が流れ出してしまい、和訳どころではなくなってしまい考えることができなくなった。音楽には気をつけろと思った。音楽のあとは面接だった。一関高専の人から,東北大の機械系では毎年4人くらいとるんだよと聞かされた。面接官は4人だった。秋田高専の校長のことを話したらみなさん知っていて,和やかになった。あっという間に終わってしまった。その後バスに乗り,仙台駅へ行き大阪に向かった。

 8月23日 大阪大学試験2日目
 阪大2次試験は,昼からの面接だったので,午前中はゆっくりとご飯を食べて風呂には入り,身なりを整えた。今回は,早めにホテルを出て慌てないよにした。1時間前には大学に着いてしまったので,キャンパス内をうろうろしてから控え室に戻った。一人先にきていたので話しかけたら,大阪府立高専の人だった。面接では落とされることはまずないから,心配しなくてもいいよと元気づけられた。面接室に入ったら,なんと面接官が14人もいた。14人に囲まれて,真ん中に一人座らされかたまってしまた。秋田から来たということで珍しがられた。わずか5分で終わってしまった。わざわざ大阪まできたのに、面接ってたったこれだけと思ってしまった。お土産として再ぴデパートの地下に入ったが,大学ポテト屋はどっかにいってしまい,そのデパートにはもうなかった。とても残念だった。

 こうして,編入学試験は無事に終わった。その後,9月5日に阪大,9月13日に東北大の合格が知らされた。どちらに行くか先生たちに相談した。結局,私は航空関係のことをやりたいということで,東北大に決めた。今回の編入学試験を通じて,私のような凡人でも努力して信じ続ければ,自分の夢を叶えることができるということが証明できた。
 これを読んでくれた高専生で大学に編入したいと考えている人は,是非挑戦して欲しいと思う。高専で学んでいることは,大学でやることとほとんど変わらないようなので,自信を持って挑んでもらいたい。


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