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Never Tmst Under Forty!

日本機械学会東北支部
学生会担当幹事 井上克己

 今は親しくしているアメリカの知人に最初に会ったとき、彼の部屋で表題の文を見つけました。大きめの文字でこれをプリントした紙が机の脇のファイルキャビネットに貼り付けてありました。私の「これ、何」の問いに対して、テレビ番組か何かで知ったことばを変形した傑作だと答えました。元々は under が over であった由。forty も元は thirty だったと答えたのかもしれませんが、これは覚えていないので表題のままだとすれば、「40才を越えた者を信用するな」という元の意味を、40才を越えた彼は「40才に満たない者を信用するな」と言い換えたわけです。
 日常生活において、私たちは年上の人の意見を尊重することが多く、その意見や考えはさまざまな経験に基づくものなので、そのこと自体は必ずしも悪くありません。しかし、明らかに誤った考えであっても自説を曲げないような人もいますから、そのような人に対しては単に年上だからということで譲る必要はありません。そこまで極端ではないにしても、たとえば機械工学を志す私たちが、教科書や論文に書いてあるから、あの先生、が言ったことだから、という理由で書いてある内容や話の内容の妥当性を私たちの頭で判断することを怠っていることはないでしょうか。内容に誤りは無いにしても、自分なら別の方法で答えを出す、得られた結果に対して別の見方をするのだが、という考え方をしないままにしてないでしょうか。このような批判は内容を評価する能力や自分の考えが無いとできませんから、誰もが今すぐにできるというわけにはいきませんが、「本当かな」と考えるように習慣づけることはできます。本小文をお読みの学生会会員およびこれから会員となる諸君は将来の機械学会を担う知性と若さを持っています。さまざまな場面で、Never trust thirty を唱えつつ、大いなる疑問と批判精神を発揮してほしいと期待しています。(これも批判の対象になりますね。)
 上に述べた知人に昨年会ったとき、例の紙はまだ貼り付けてありました。まだ貼っておくつもりかと聞きましたら、楽しそうに笑いながら、「forty を fifty に変える」と答えていました。数日後に50才になるからだそうです。

(東北大学工学研究科機械知能工学専攻 教授)



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