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今、思うこと

いわき明星大学 理工学部
機械工学科4年 奥村 諭司

 現在、世界中を見渡すと、生まれつき手に障害を持った人や、事故などにより手を失った人たちが大勢います。そのために私達は義手の開発に着目し、人間の手に近い動きをする義手の製作を卒業論文のテーマとしています。
 私が担当しているのは4指と呼ばれている、親指以外の4本の指です。今のところ、リンク機構と呼ばれる、何本かの硬い棒の端に穴をあけて、その棒同士を、棒の端の穴にピンを通すことで接続させて、お互いの棒を回転のできるようにつなぎ合わせた物を、義手の指の部分にしようと考えています。人の指を自然に曲げていく時には、何気なく曲げているようで、ある程度規則性があります。そこで、人と同じ様な、規則的な動きをする、リンク機構の指がつくられました。しかし、いろいろな物をつかませてみると、規則的な動きしか出来ないため、つかむ物の大きさによっては、つかめない物も出てきてしまいました。そこで、リンク機構の指を曲げていく時に、始めは人の指と同じように規則的に指が曲がっていって、物が当たると、その物の形に合わせて指が曲がっていくように改善しました。私は、この指を1つのモーターで動かす構造を考えてきました。先生方にも助けられて、徐々にその構造が決まってきているところです。
 この研究の面白いところは、ソーラーカーをつくったり、ロボットコンテストに参加されてい方には、共通するものがあるかもしれませんが、実際に物をつくれるという事です。リンク機構の簡単な模型などを作る時は、小さいころに、夢中でプラモデルを作るよな感覚でつくっています。図面を引くのも、学校の授業では、お手本をただ写すだけのように思えて、あまり楽しくありませんでしたが、実際に自分の頭の中でイメージしながら、どんな物にしようかと考えて、図面を引くのは、面白い物だと最近になって感じてきました。
 徐々に構造が考えられてくると、その構造の良さを最大限に引き出してあげるために、理論的な解析が必要だと感じてきました。しかし、理論的な解析も努力はしているつもりですが、進んでいません。研究を始めた頃は、ただ単に物を作ればいいと考えていましたが、今は理論というのは、物をつくる上で大切で、もっと勉強しておかなければいけなかったと、痛烈に感じているところです。
 このままいくと卒業論文は、大学生らしくない、こんな物をつくった、というだけの論文になってしまうかも知れません。しかし、大学の講義を受けていてはなかなか得られない、物を実際につくってみることは面白く、そして実際につくる過程では理論は必要になってくるものだ、ということを理解できたという点ではでは、少なからず私にとっては、いい経験ができたのではないのかと思います。


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