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空想科学的リアルロボット考察

秋田工業高等専門学校
機械工学科 5年  中河利夫

 皆さんは、ロボットと聞いたときには何を思い浮かべますか?世代や好みによってかなりの幅があるとは思いますが、機械工学を志した方々にはほぼ必ず何らかのロボットの姿が浮かぶでしょう。実在するもの、アニメーションに登場するもの、人型、車型、アームのみなど、きっと何らかの姿をしたロボットが。特に、僕くらいの世代の人には、アニメーション雑誌でよく用いられる人型ロボットの一種、いわゆる「リアルロボット」という類のものが浮かんだのではないでしょうか。さて、それらは何故rリアル」と呼ばれるのでしょうか?これは、アニメーションなどでよく見られる、もう一つのロボットのタイプである「スーパーロボット」との対比から生じた言葉ですが、では、リアルロボットは本当にリアルか、それともリアルでないか、そこを考えてみることにしましょう。
 まず、とりあえずサイズと材質を無視しておきます。これは、あくまで構造的な話に集中しておきたいのと、材質によってサイズの大型化・小型化の基準が違ってくるので、その辺りの煩雑さを避ける意味もあります。まして、現在実在しない材質だの、(多分)存在しない物理量だのを真面目に組み込んでは、今の工学ではろくな考察ができないので、それを排除するには必要な措置でしょう。
 さて、ここから実際に考察を進めることにしま丸まず第一に、人型の要とも言える足について考えてみましょう。一般に、リアルロボットの足は太股の部分よりも脛の部分の方が太くなっていますが、運動力学の面から見ると、脛の方が大きく複雑な動きをするので太股よりも軽い方が望ましいのです。ということは、こういう形をした足は、少なくとも運動力学上は決してリアルではない、ということになります。次に、腕、特に肩の付近ですが、古いタイプの物はともかく、最近のロボットはここがやけに大きく、腕の自由度をかなり減殺しているものと思われます。また、これは足にも言えることですが、肘・膝の関節がぎっちり固定されるのに、たった1本の軸で止められているような外見をしています。これでは、何かあって腕や足をひねったときに材質によっては強度が不足し、下手をすると折れてしまうかも知れません。つまり、大抵のリアルロボットは、既に歩く点から見て、現実離れした設定を必要とするのです。
 そして、最大の問題は、ほぼすべてのリアルロボットが戦闘兵器であること、更に、それに人が乗って戦うことです。まず、人型の兵器を作ったとして、それは有効な兵器となりうるでしょうか?答えは否、です。人型の兵器である以上、簡単に考えるとその実力は歩兵に準じますが、歩兵は足が遅く、またその保護には塹壕・装甲車などの防御装備が必要です。また、装備できる弾薬量も少なく、外見のインパクトが大きいだけに敵の標的となりやすい欠点もあります。そんなものに人が乗って戦うのは、現実問題としてかなり危険であると言わざるを得ません。
 結局、リアルロボットというのは、現実的な、という意味ではなく、あくまでデザイン上の区分に過ぎないのです。アニメなどでロボットを見るときには、この点を頭の片隅に置いていただければ幸いです。


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