目次へ戻る   

「創造工房」の話

秋田大学大学院鉱山学研究科機械工学専攻
博士前期課程1年 伊藤 暁

 秋田大学の学部改組がされて3年,機械工学科のカリキュラムも様代わりした.「設計製図」というのは機械工学科にとって避けて通れないものであるが,今の学部生には新たに「創造工房」という実習があるのだ.学部3年生たちに与えられたテーマは「秋田大学の機械工学科棟の屋上(高さ約20m)から,生の鶏卵を保護させて落下させ,卵が壊れないように地上アスファルト路面の所定の位置に軟着陸させる」というもの.それができる『モノ』を,いくつかのグループに分かれて製作し,その正確さを競う.題して「惑星軟着陸大作戦」である.イメージとしてはアポロ計画やスペースシャトル,火星探査といったところだろうか.
 この実習の大きな特徴は「ゼロ」からモノを作っていくことである.今まで講義で得た知識に加えて「アイディア」が必要になるのだ.進行方向の制御や卵を割らないようにするための工夫,それを自分たちで考えなければならない.しかしながら,人間は十人十色.自分の理論に基づいた発想から,マンガに出てきそうな夢のようなものまで,一人ひとりがいろいろな発想を持っている.私はテーチングアシスタントという立場で関わっているが,3年生にアドバイスするというよりは,自分自身もアイディアを出して一緒に考えるというスタイルになっている.しかも,時より「3年生たちよりもアイディアが乏しいかもしれない…」と思うことがあるほどだ.「自分が学部の時にこの実習があったらよかったのに…」と思う今日この頃である.
 ある講義で「技術とは人間の夢を実現するためのプロセスである」という言葉を聞いたことがある.この実習は,ある意味それを学ぶことができるものなのかもしれない.就職活動を始めようとしていた今,改めて「自分の夢,やりたい仕事は何か?」を考えさせられた.



目次へ戻る