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卒業研究について

国立一関工業高等専門学校

機械工学科5年 小野寺高之

 この原稿について「テーマは何でもよい」と言われていたので、卒業研究に関することを書かせてもらいました。自由なテーマということで、少々とりとめのない話になりますが、大目に見て頂きたいと思います。

 私は流体工学の分野の研究室に所属しています。なぜ、この分野の研究室を選んだのか? と問われれば、なんとも答えに窮します――なにしろ四年生の水力学での授業の印象といえば、数学の延長上であり、それでいてつかみ所のないという苦手意識を抱いていた教科だったのですから。しかし、そういった苦手な流体力学に対する興味と、あえて苦手分野を選んでみようという天の邪鬼な心から、私は流体工学の研究を選んだのです。そのように選んだものの、今現在は後悔の念などはほとんどありません。

 そういった経緯であったので、当然のことながらすぐに研究など始められるわけもなく、まずは英語で書かれた流体力学の本の一部分の和訳から始まりました。これは四年生の授業で不十分だった理解を補い、ついでに英語に慣れるという目的のためです。今でこそ英語と流体の両方の勉強になって大いに役立っていると実感できますが、当時の苦労は大抵のことではありませんでした…日本語で書かれてあっても完璧に理解できないものを英語で書かれているわけで、全く意味のわからない和訳をしてしまうことは日常茶飯事だったと記憶しています。指導して下さった先生には相当な手数をかけたことだと思い、大変感謝しております。

 さて、私の所属する研究室の研究テーマは「表計算ソフトを用いた流体解析」というもので、簡単に説明すると、従来Fortranなどのプログラム言語を使って計算してきた問題を、Excelなどの表計算ソフトを用いて解くわけです。表計算ソフトを用いることの利点は、多くのパソコンに装備されていて手軽に使うことが出来る、これまで必要だったプログラム知識を前提としない、計算結果の図示が瞬時に可能である、計算領域が見えている、格子がセルとして最初から与えられている、などがあげられます。その具体的な計算は、与えられた微分方程式を何らかの方法(差分法、有限要素法、有限体積法など)で離散化して代数方程式にし、その式を対応するセルに代入するといった手順で行います。

この手法に慣れるまでの課題として、ステップを越える二次元ポテンシャル流れ、平行平板間の助走区間の流れ、キャビティ流れ、ベナール対流、非定常問題といったものを扱ってきました。このようにあげてみると、取り扱った問題の数は自分が思っていたよりも少なく感じるのですが、どの問題に対しても、これには苦労したと思える点が必ず一つ以上はあります。式の変形、境界条件、代入する値の間違い…などと、今でもはっきりと思い出すことができ、それらを乗り越えたときの達成感というのもよく覚えています。

具体的な私の卒業研究の内容は「正方形ダクト流れの解析」です。先ほどあげた課題では、差分法により離散化してきました。しかし、ここでは有限体積法という方法で離散化することにより、さらに詳しく流れを解析しようとするわけです。この原稿を書いている時点では、思ったよりも離散化に手間取っており、焦りを感じながら少しずつ進めています。

 しかし、研究というのは何らかの障害があって上手くいかないのが当然で、その障害を越えることに意味があるのだと思います。また、これまでやってきた様々な課題において何について悩んだのか、ということを覚えているわけですから、今悩むということは将来の自分にとって大きな財産になるのではないでしょうか。そのように考えながら日々、卒業研究を頑張っており、これからも頑張っていきたいと思っています。



  
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