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「算数と数学」

一関工業高等専門学校

専攻科 生産工学専攻一年  小岩 正秀

  高専では、5年間の授業で様々な分野の数学を学ぶ。微分積分はもちろん、線形代数、確率統計など、数学と一言にいってもいろんな授業があり、高専は普通高校では学ぶことの出来ない、高等な数学教育があると思う。今年私は専攻科に進学したが、専攻科でもやはり数学の授業がある。ある時ふと、高専6年目の数学の授業を受けていて、考えることがあった。

  算数と数学の違いは何であろうか?小学校までの授業が算数で、中学校以降に学ぶものが数学なのか。そこで辞書を引いてみることにする。算数は「数の計算」、数学は「数・図形・関数などの性質や法則を研究すること」と記載されていた。どこからが算数でどこからが数学なのか、線引きすることは難しいが、両者の定義で明らかに違うところを上げるとするならば、それは考える作業が伴うか否かではないだろうか。私は算数を、電卓ないしパソコンで解決できる問題と考えている。つまり、作業的な要素を持つものが算数と定義できるのではないか。

  偏微分、重積分、ラプラス変換、フーリエ解析、etc。数学が苦手な人には名前を聞くだけでも頭が痛くなりそうだ。しかし、これらの分野も、公式を丸暗記し、そこに数値を代入して解を導くという作業的なものになってしまえば、数学ではなく算数になってしまう。逆のことも言えるだろう。一関は和算が盛んだったことで有名であるが、簡単なものでは、中学初等までの知識(なかには小学校の知識)で解ける問題もある。しかし、解いていてすごくワクワクするし、楽しい。分からないときは、何時間、いや何日も考える。果たしてこれは小学校の知識の範囲なので算数であろうか?私は、算数ではなく数学ではないかと考える。だとすると、はたして高専の数学の授業は数学?算数?……?

  それはさておき、算数と数学のような関係は、社会のいたるところに存在すると思う。工場を例に取れば、開発・設計が考える事で、それをライン工程で製品にすることが作業である。開発設計が数学で、製造が算数と考えるわけである。製造部門では勿論のこと、高専では特に開発や設計部門で活躍できる創造力豊かな技術者育成を目指している、と聞いたような…。産業界をリードしていくためには必ず、と言っていいほど数学の力(考える力、創造力)が必要となってくる。

  日常生活または授業でも、深く考究することが少ないように思える。難しいことでも簡単な事でも、くだらないことでも…、精一杯考えることが必要ではないだろうか。たとえ答えが出なくても、考えることそれ自体に非常に価値があると思う。こんな事を考えながら6年目の授業を受けている今日この頃。もっと授業に集中しなくては…。

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