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過去の自分

仙台高等専門学校名取キャンパス

機械工学科5年 佐々木 博志

 今日本の学校では「子どもの個性を見つける・伸ばす」という方針で教育が進められています。かくいう私もそんな教育を受けたひとりであります。一人ひとりが特別で、それぞれにしかできないこと、それぞれに「得意なこと」があるっつー考え方ですね。しかしその一方で、得意なことを見つけられないまま高校、大学を卒業しても、やりたいことが見つけられずに、就職をしない人が増えているのも事実です。「特別な自分」を見つけなければいけないという強迫観念の中で、それが見つけられずに困っちゃう、ってわけですな。
 特別な自分・・・例えば、足が速い、スポーツが得意、絵を描くのが好き、歌が好き、文才、工学、福祉・・・・。自分の中に、好きなものや得意なものを見つけなければいけないんですね。卒業文集などでも、タイトルは「未来の自分」。自分のやりたいことが決まっていないと書けない難題を、事あるごとに要求されるわけです。自分の人生の、本文を後回しにして、題名を先につけて、題名通りの人生を歩むことを求められるんですね。これは目標を見つけれられない人には辛いことです。でもね、特別な自分って、なくてもいいんだって。「自分の歩いた人生の道のりが、それそのものが自分自身」なんだそうです。
 自分の過去、つまり自分の振る舞い、心の持ちよう、毎日の行動それ自体が自分。
 これって過去のことを言ってるようですが、「現在」の自分に働きかける言葉なんだと思います。現在、今ってのは言ったそばから過去になっていきます。ですから例えばあなたが今学校で授業を受けている、働いている、遊んでいる、恋人といるetc・・・。
 今その瞬間そのものが、あなたを作っているわけです。どんなふうに勉強したか、どんな気持ちを持って働いたか、どんな気持ちで人と接したか、そういう小さなことで「自分」は作られていく、という事だと私は解釈しています。
 遠い将来のことは分からなくても、今この瞬間を一生懸命やってみる、例えば今日はノートを丁寧な字でとってみようとか、今日は仕事定時まで気を抜かないぞとか、笑顔で人と話してみようとか、それぐらいなら難しくないでしょ?そういった丁寧に人生を過ごそうとする「現在のあなた」が、「過去のあなた」の一部になり、「あなた自身」を作っていくんだと思います。
 進学・就職というのはどうしても未来のことを考えてしまいますよね。でも、実際のところどれだけ調べても、「出会い」のようなところもあると思います。ある程度決めたら80%で見切り発車!踏みだしちゃう。実際にその場に行ったら、ちょっとだけ頑張ってみる。
 そして勉強や仕事を続けるうちに、なにかやりたいことや将来のことが、あっちの方からやってくるかもしれません。
  
  「自分の過去、そのものが自分」。
  自分のやりたいことが見つからない方はこんな考え方はどうでしょうか。

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