目次へ戻る   

修論〆切の足音

福島大学大学院 共生システム理工学研究科 人間−機械システム分野 2年
佐藤 博紀

 天気予報から今日は寒いとわかってはいたが、まさか雪が降るとは!
 今日は11月25日。今年度の初雪を観測した(たぶん)。我らの福島大学は福島市より二駅ほど南の山中に位置しており、雪が降ると最寄り駅への移動にかなり労力を要する。ひたすら坂・坂・坂!毎年、この雪や氷で転倒の被害者が出ている。もちろん私もその中の一人となる。大学院のある授業の発表で、融雪ロードヒーターの設置を提案したこともあったけ。

機関誌に乗せる原稿にダメ出しを喰らって書き直している最中だが、なかなか依頼者の意向に沿った記事の内容が思いつかない。簡単に研究の紹介でも書いてみようかと思う。

 私の研究は、バクテリア・セルロースを使用した炭素繊維強化炭素複合材料を成形し、その摺動特性を評価することである。すごく簡単に説明すると、「ナタ・デ・ココを樹脂に入れたものを炭素化して摩擦や摩耗に強い材料を作ろう!」ということである。なぜナタ・デ・ココなのか。皆さんがよく知っている食用以外のナタ・デ・ココも存在する。もっとも身近なのが食酢の製造過程で酢酸菌によって生成されるものである。これをバクテリア・セルロースという(一般にナタ・デ・ココと呼ばれるものは、ココナッツの汁を酢酸菌で発酵させたもので、私たちは食酢から作られたものを再生利用している)。また、その名の通りバクテリア・セルロースの繊維はセルロースであり、径が約50〜200ナノメートルほどの微細繊維の集まりである。また、3次元的な・・・長くなりそうなのでやめておこう。要は、ナタ・デ・ココはなかなか面白そうな素材であるということだ!まさか、こんなものが新しい材料として使用できるとは思わなかった。これを、とある手法で樹脂に混ぜ込んだのち、不活性雰囲気下で炭素化することで材料を成形する。これによりバクテリア・セルロースの繊維はナノオーダーの炭素繊維となった炭素強化炭素複合材料となる。

成形した材料は摩擦や摩耗にとても強いことが先行研究でわかった。近いもので性能を比較すると、DLC(ダイアモンドライクカーボン)ほどだ。今の世の中のトレンドは「環境に優しい・低エネルギー化」である。摩擦・摩耗性能の改善が、これにつながるのはいうまでもない。

 私たちの研究している材料が、近い将来実際に使用されることを夢に描きながら研究を続けているが、私のできそこないの頭ではなかなか難しい。せめて私は、自分にできる目の前ことを精一杯やって学生時代に幕を引きたいと思う。




目次へ戻る