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幻の秘宝

秋田大学 工学資源学部 機械工学科 4年
山野 太久

 皆さんはご存じだろうか。毎日通っている大学には、幻の秘宝が存在しているということを。私がその存在を知ったのは、高校を卒業して間もない春休みのことであった。当時の私は、ちょうど読書にはまっており、読み漁っていた本の中にそれはあった。なんでも、その秘宝を手にするとリア充になれるとか。その名も『バラ色のキャンパスライフ』。

 なんと美しい響き。見たことなど一度もないが、それがとてもきらびやかに光る宝石であると、当時の私は確信した。こんな素晴らしいものが、大学にはあるのか。その時の私は、春からの大学生活に心躍らせていたことを今でも覚えている。

 迎えた大学入学式。慣れないスーツに窮屈感を抱きながら、盛り上がりのない式をやり過ごした。今思えばこの四年間、私はずっとスーツを着ていた気分だったように思える。現在、私の手元に『バラ色のキャンパスライフ』はない。

 しかし、そんな私の下に一本の蜘蛛の糸が下りてきた。大学院試験である。私は、その糸を掴むことにした。きっと、この糸の先には『バラ色のキャンパスライフ』があるに違いない。私の足元に、大学院合格通知が落ちている。

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