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ジャグリング道具の受ける力

福島大学 理工学群共生システム理工学類 人間支援システム専攻4年
椎貝賢太

みなさまは「シガーボックスジャグリング」をご存知でしょうか?3つの箱を使い挟むように扱い、まるで箱が浮きながら入れ替わるような演技をするジャグリングの 1 つです。 私は大学入学後にサークル活動を通じて、この道具を練習し、地域イベントでの出演や大道 芸などのパフォーマンスを行ってきた他、趣味としても続けています。

シガーボックスという道具は基本的に木製のものが主流ですが、練習中の落下により、木 板同士の接着部や木目からのひび割れなどにより耐久性や精度に悪い影響が出てしまう事 もあります。そこで、木製の弱点を考慮した一体成型のプラスチック製のシガーボックスが 開発されました。釘や接着剤を用いないため、落下時の衝撃が 1 か所に集中しにくくなっ ています。私はこの一体成型のプラスチック製のシガーボックスの中でも 2 年程前に販売 が開始された RF シガーボックスという種類を使い続けています。このシガーボックスは他 社のものより柔らかい材料を使用しており、落下の衝撃を緩和し耐久性を向上させていま す。しかし、私が RF シガーを使用して練習している間、落下の衝撃による変形における内 圧を軽減する為に設けられている通気口の付近から割れが発生してしまう事が多々あり、 大切な道具とのお別れに大変ショックを受ける事もありました。

この壊れ方に対して自分なりに対策を考えた結果、この通気口は落下の際に床とぶつか りやすく衝撃が集中しやすい角付近(2 か所)に設けられており、単純に角から通気口を遠 ざける事でこの壊れ方を避ける事が出来るのではないかと考えました。今回は興味本位で、 箱の 1 つの角が受ける荷重に対する応力分布に注目し、同条件下において 2 種類の通気口 の位置(Fig1-A:現存の RF シガーボックスの通気口,Fig1-B:自分なりに位置を変更した通 気口)で簡単な解析を行ってみました。また、モデルの作成と解析には Solidworks Simulation を用いました。その結果、現存の RF シガーボックス(Fig2.)では、角付近に穴 を設けない場合(Fig3.)に比べ、角だけでなく通気口周りにまで応力が掛かっている事が見 て取れ、これが通気口付近の割れに繋がっているのではないかと考えられる。また、Fig3. のモデルは通気口の位置を変更し、割れの可能性を抑える事が出来ましたが、何かの拍子に 通気口のある面に物をぶつけてしまうような事があると同じように割れを起こす事も考え られ、このシガーボックスの設計者はこの壊れ方を危惧して通気口の位置を Fig2.の位置に したのでは無いかと考えられる。

今回の解析は卒論間のちょっとした時間で乏しい知識の上、材料や荷重量をあまり考え ずに解析を行った為、正確な結果を出すことは出来なかったが解析手法の知識をしっかり 蓄えることで、1 つのマイナーなジャグリング道具でも強度を見直す事が出来るのでは無い かと考え、今後しっかり経験と知識を積みたいと思う。また、ジャグリング道具を作る人々 は私と同じようなジャグラーであり、そんな人々との出会いの場も多くあります。たまには 福島を離れ、道具の製作現場での話をたくさん聞いてみた上、1人のジャグラーとして道具 の為の提案などが出来るようになればいいなと思う。




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