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銀杏の匂い

東北大学 工学研究科 修士1年
柳岡遼太郎

 10月下旬ごろ,私は仙台市中心部の広瀬通を散歩していた.仙台市は「杜の都」と呼ばれており,大通りにはイチョウ並木が連なっている.このイチョウ並木は確かに美しく,仙台のシンボルでもあるが,仙台に引っ越してきた当初はあまり好きではなかった.なぜならこの時期になると,仙台市中心部はお世辞にも良い香りとは言えない銀杏のつぶれた匂いに包まれるからだ.私を含め特に若い人は同じ感想を持っているだろう.しかしながら,銀杏は古くから和食に用いられており,高級な料亭に行くと出ることがあるそうだ.たしかに稀に道で拾っている人を目にする.そんな銀杏を生むイチョウ並木であるが,現在,渋滞緩和を目的に一部伐採されるという計画がある.この話を新聞で目にしたとき,あの銀杏の匂いとともに生い茂るイチョウ並木が思い浮かび,伐採されるのはと非常に残念に思えた.私は仙台に住んで5年目であるが,この時,すっかり「仙台人」になったのだと感じた.学生生活もはやいもので再来年には仙台を離れる可能性が高い.永遠に学生でいたいと思うこともあるが,そうともいかないので,残り少ない学生生活,精一杯研究活動に励むとともに,杜の都仙台での一人暮らしを満喫しようと思う.




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