目次へ戻る   

屋外プール
鶴岡工業高等専門学校 機械工学科 5年
阿部 和音

 高専に入学した頃は5年間も高専にいたら飽きてしまうと思っていました。しかし実際は違いました。むしろ今では5年間はもっと長いと思っていました。そんな5年間を僕は水泳部で活動していました。水泳部の活動を思い返してみると、大抵みんなで笑っています。ここでは少し、その部活についてお話ししたいと思います。

 鶴岡高専には屋外プールがあります。水泳部の認知度は100%ですが、水泳部以外の人に聞くと「プール?どこにあるの?」「あぁ、山のほうにある池のこと?」といった残念な返事しか返ってきません。そんなプールの思い出です。

 入学してすぐのことです。春に屋外プールの掃除を行いました。それまでの先輩方はそれはもう天使かと思うほど優しく接してくれていました。しかし、掃除が始まるとそれは一変しました。汚れを落とすためのホースで私たち1年生を狙ってくるのです。先輩達は全身水浸しの私たちを見て笑っておりました。あの時の笑顔は忘れることができません。

 また、高専プールには言い伝えがあります。プールにある排水管は顧問の先生の教員室に繋がっているということです。僕はまだ1年生でした。5年生の言うことは全て正しいという勘違いをしている時でした。まだ入学してから日も浅く、右も左もわからない状態で先輩を疑うことができますか?僕はできませんでした。その結果、1年間ずっと騙され続けていました。真実を知ったのは2年目の春でした。

 プールは夏に合宿でも使います。よく友人は暑い中水に入れるのだから羨ましいと言いますが実際は違います。プールの東側には山があり、木が生い茂っています。そのため午前中はほとんど日が当たりません。また給水管は地下にあるため出てくる水が冷やされています。そんなプールに入る辛さを知ってますか?心臓が止まりそうになります。もしかしたら一瞬止まっているかもしれないくらい冷たいです。夏に凍えそうになる良い経験ができました。

 秋になると1年の汚れを落とす大掃除をします。この掃除が実は春よりもつらいのです。冬に配管が凍らないようにプールの水は抜きません。その状態のままコースロープを外さなくてはならないのです。結局、綱引きが始まり部活の半数の人は入水してしまします。半年も部活で過ごすと、1年生も部活の過ごし方がわかってきます。そのためプールに落ちるのが後輩とは限りません。上手いこと先輩を落とす後輩が現れてきます。毎年、掃除の持ち物には全員着替えが入っています。

 そして秋の掃除を終えると1年間の屋外プールでの活動が終わります。たまに冬に雪まつりを行う以外には使いません。そんなプールも老朽化のため来年度は使用不可になりました。たくさんの思い出があるプールがなくなるのは悲しいですが、様々な犠牲者が生まれないことになるのでうれしさ半分、悲しさ半分といったところです。

 ただの世間話になってしまいましたが鶴岡高専の水泳部のことを少しでも知ってもらえたら嬉しいです。

目次へ戻る