目次へ戻る   

人工知能に支配される未来ってくるの?

岩手大学大学院 総合科学研究科 理工学専攻 機械・航空宇宙コース 1年
佐藤拓生

 “人工知能が将棋で名人に勝利した”というニュースが話題になった.将棋に限らず,ここ数年,私たちの生活の中での人工知能の発展と応用を期待するニュースをよく聞く.しかしその一方で,“人工知能が発達しすぎると人間はそれに支配されてしまうのではないか”という意見もある.鉄腕アトムや勇者シリーズなどのロボットアニメが好きな私としては,人工知能は人間にとってのよき友であってもらいたいのだが…….
 よくあるSF映画では,“平和な世界をつくる”という目的で作られた人工知能が,“平和な世界を脅かすのは人間”,“自分たちが人間を支配した方が平和な世界を構築するためには効率が良い”と判断して反乱を起こす.しかしながら,“人間を支配すること”は効率的なのだろうか?
 例えば,私たち人間は地球上のあらゆる生き物の頂点に君臨しているような状況にあるが,動物を労働力として使役することは現代ではほとんどない.かつては馬や牛を労働力として使っていたが,それは過去の話であり,今ではそれ以上に便利な機械を生産,利用している.また,他の生物を意図的に滅ぼそうとすることも滅多にない.
 よって,仮に人工知能が効率よく平和な世界をつくるために,“人類が頂点としては不適切”と判断した場合は権限のみ奪い,そのまま放置するのではないかと私は考える.滅ぼしても何の得にもならず,労働力として使役するとしてもパワー・スピード・正確さが個体によってまちまちな生き物を使うことは“非効率的”である.人類が危害を被る状況があるとしたら,“そこに居られるとジャマだから”,“偶然進路にいたから”程度の間接的な理由によるものだと思われる(我々が道を歩く際にそこに蟻がいたとしても気にせず踏みつけて歩くように).
 しかし,人工知能が人間を支配する状況になると考えられる状況が一つだけ存在する.それは人工知能の製造目的が“人間が平和に暮らせる世界をつくる”というものであった場合だ.一見良さそうにも聞こえるが,この場合,すべての人間に対し,人工知能の製作者が勝手に定義した,“一般的に平和と考えられるような生活”を強いることが人工知能の使命となるだろう.起床と就寝は毎日決まった時間,食事では好物よりも健康食品ばかり優先,職業選択も自分の希望よりも人工知能が考えた適正を優先,テレビなどの娯楽も選択の自由はなく……もっとも,生活習慣病や長時間労働による過労死が問題となっている近年ではその方が幸せになる人もいるかもしれない.




目次へ戻る