イブニングセミナー(第93回)

(技術と社会部門企画)


開 催 日: 2007年4月25日18:00〜20:00 (毎月最終水曜日開催)
会   場: 早稲田大学理工学部(大久保キャンバス)55号館S棟2階第3会議室予定
[東京都新宿区大久保 3-4-1/電話(03)5286-3000/JR「高田馬場」駅戸山口下車 徒歩12分,都バス「都立 障害者センター」下車徒歩1分,地下鉄東西線「高田馬場」駅下車徒歩12分] →大久保キャンパスの地図(早稲田大学のホームページ)
趣   旨:  技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も社会との深い関わりの中にあることは明らかである.我々が新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
テーマ
および講師:


「究極の切れ味を求めて」

 私の会社はお江戸日本橋で寛政4年の創業以来,刃物屋を営んで来ました。私で八代目になります。戦前は鋸,ノミ,鉋など大工道具が主力でしたが,今では包丁,鋏が主力です。刃物の生命は「優れた切れ味が長く持つ」ことです。鋏はそれほどでもありませんが,包丁は水分のある食品を切る為,手入れが悪いとすぐ錆びて全然切れなくなります。昭和25年早大理工学部応用金属学科を卒業し,売り場に立った私がまず客に問われたのは「良く切れて錆びない包丁は無いのか」でした。当時のステンレス包丁は「サビナイが切れない」と言われました。そこで大学時代の参考書を引っ張り出し,4〜5年かけてオーストリア製の硬度の出るステンレス鋼材に巡り合い,我が国ではじめて良く切れるステンレス包丁を発売しました。
 それからも切れ味を数値的に現わす為,本田式切れ味試験機はじめ各種の測定器を準備し,ミニ実験室をつくり,切れ味が長持ちする素材や熱処理法を探求,錆びる鋼(炭素鋼)にも勝る硬さでしかも錆びにくい粉末鋼を使った包丁も我が国で初めて成功しました。
 帝国ホテルの総料理長だった村上信夫師の自慢は,わざわざ足を運んで会津の刀匠に打たせた包丁ですが,私の持参した粉末鋼包丁は「それよりもっと切れる」との評価を頂きました。
 現在もっと硬い刃先を持つ包丁も販売していますが,ここまで硬くなると刃付けが大変です。それらの包丁の鋭さについては本田式のデータでご説明したいと思います。
 さて最近マグロ漁穫制限問題が取りざたされています。生魚を食べなかった欧米人が良く切れる日本の包丁で切った刺身の味に驚嘆して「こんな美味しいものを日本人だけに食わせておくな」と騒ぎ出したのが原因だと思います。
 「日本刀から刺身包丁まで,彼らの刀剣や包丁とは鋭さが全く違うのだ」がドイツやスイスの博物館を訪ね,彼らの珍重するダマスカスの宝剣を手にした上での私の経験です。超硬,ニューセラミックスなどのもっと硬い材料はありますが,包丁,鋏はやはり「はがね系」つまり「鉄の合金でなければ包丁や鋏の切れ味は出せない」が私の結論です。それについては英文の技術解説書に載っている「マッターホルン」図によって解説したいと思います。
 最先端の鉄鋼技術と名人芸の技が共存する限り,日本の刃物は世界一だと思います。


講師:加藤俊男 (竃リ屋 代表取締役)

定   員: 40名
参 加 費: 会員1000円(学生無料),非会員1500円(学生非会員500円)(当日会場にて受け付けます)
申込み方法: 「イブニングセミナー(第93回)申込み」と題記し,(1)会員資格(会員番号),(2)氏名,(3)勤務先・所属,(4)連絡先(郵便番号・住所・電話番号・E-mailアドレス)を明記の上,E-mailまたはFAXにて下記までお申し込みください.
なお,当日会場でも申込みを受付けます.
FAX送付先: (03)5360-3508(担当職員 加藤佐知子)E-mail:kato@jsme.or.jp
問合せ先: 〒150-8677 東京都渋谷区恵比寿2-27-10 日機装第2別館
日機装(株)流体技術カンパニー
 小西義昭
TEL:03-3443-3728  FAX:03-3444-2403
E-mail:y.konishi@nikkiso.co.jp


都立産業技術高専
 吉田喜一
TEL:03-3801-0146 ex.544
E-mail:kyoshida@kouku-k.ac.jp

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