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[受賞者挨拶]

「技術と社会部門」業績賞を受賞して


城下荘平(元 京都大学総合博物館助教授)



 この度、日本機械学会「技術と社会」部門の業績賞をいただきました。立派な賞に値するだけのことをしたか、もっと他に適任の方がおられるのではないか、と自問しましたが、昨年に定年退職したこともあり、一つの区切りとして厚顔にも有難く頂戴することにしました。授与を決めていただいた部門執行部の皆様に厚く御礼申し上げます。受賞理由は部門主催の国際会議に関してですが、せっかくの機会をいただきましたので、少しわがままを許していただき、”私の部門への関わり“として、部門のホームページに関することを先に、その後に国際会議に対する私の願い等を思い出話風に書くこととします。

 1997年に京都大学に総合博物館が創設された時、私はそれまで所属していた工学部から総合博物館へ移動し、それと同時に機械学会の「技術と社会」部門へと所属部門も変わりました。過ぎてしまえば10年はあっという間でしたが、私にとっては充実したやりがいのある10年でした。それは間違いなく“人”と、偶然の“巡り合わせ”に恵まれたおかげであると思っています。ただし、“人”に関しては、場合によっては“ありがた迷惑”になるかもしれませんので、ここでは後者のみについて書きます。

 1996年頃はインターネットが普及し始め、色々な機関でホームページが立ち上げられつつある状況でした。日本で個人ユーザー向けのサービスも始まりましたが、たまたま個人的にインターネットに関心を持っていた私は、大学の研究とは関係なく自宅でいち早くプロバイダに加入し、“掲示板”に意見を掲載するなどしていました。それを見た全国紙の記者からコンタクトがあり、“掲示板”に掲載していた私の意見が、インターネットの将来の可能性に対する私のコメントとともに新聞に掲載される(私の希望で匿名でしたが)、というようなことがありました。当時は適当なソフトはないのでHTMLを自分でかじるしかなく、多少のわずらわしさを感じつつも自然に必要最小限の知識が身についたのは、後から考えるとかえってよかったと思っています。

 そんなときに新設の総合博物館へ移動し、たまたま工学部出身者が私のみである、という理不尽な理由からホームページの立ち上げをまかされました。ささやかなHTMLの知識が役立つことになり、私なりに頑張って2、3週間で立ち上げることができました。その後、「技術と社会」部門の広報委員となり、ここでもホームページを立ち上げることになりましたが、それまでの経験が大いに役立ったのは本当に偶然の巡り合わせでした。

  部門のホームページを立ち上げるに当たって、他の部門のホームページを調べましたが、2つのことが十分でない、と思いました。一つは、フレーム構造になっていない、ということです。フレーム構造になっていないと、例えば、一旦、目次の項目をクリックして他のページへ飛ぶと、他の項目へ行くには、又、一度、目次へ戻らなくてはならない、という不便が生じます。フレーム構造にすれば、いつでも目次が見えているのでそのような不便は起こりません。また、将来、ホームページに新たな項目を加えるときにも、(独立した)目次の頁だけを変えればよく、便利です。もう一つの十分でない、と思ったことは、他の部門のホームページでは英語版のあるものが少ない、ということです。そこで、英語版も作製しました。現在ではホームページ用ソフトも種々便利なものがでていますが、当時としてはデザイン的にはつたないながらも他の部門のホームページに遜色ないものができた、と思っています。

 英語による部門主催の「経営と技術移転に関する国際会議」は第1回から第3回まで実行委員長を務めさせていただきました。会議を立ち上げ、また、開催を継続することができたのは、やはり、偶然の幸運と、会議の意義を理解していただいた方々の力強いご協力が大きかった、と感謝しています。中でもJohn F. Wilsonリバプール大学(University of Liverpool・英国)教授の極めて好意的で有効な貢献がなければ、この会議は成り立ちませんでした。人のことは省略します、と最初にお断りしましたが、Wilson教授の名前だけはどうしても記させて下さい。

  いくら立派な研究でも、日本語の発表では日本人にしか理解してもらえません。インターネットの急激な発達と共に英語が国際語化してしまった今、いやおうなしに英語で発信することが必須となってしまいました。その意味で、まず、英語で研究を発表することが重要であると思いました。1年おきの開催で、第3回目位から、日本人参加者も単に発表するだけでなく、かなり自由に英語で欧米人の講演発表に意見を言う、という段階になってきたように感じています。そして、アメリカで開催された今年の第4回は綿貫啓一委員長のもと、本格的な国際会議のスタイルで実行されました。日本の立派な研究を世界に発信するため、さらには、世界の研究との直接的な交流を通じて研究の質を高めるために、本部門主催の国際会議が一層、発展することを願っています。

 最後に、立派な賞をいただいたことに再度、心から感謝の念を表し、拙文を終わることとします。

 





     

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日本機械学会
技術と社会部門ニュースレターNo.18
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