>
[部門企画]

日本機械学会2008年年次大会レポート

 

【開催報告】

 2008年度年次大会が8月3日(日)から7日(木)[機械の日]まで,神奈川県横浜市にある横浜国立大学( http://www.ynu.ac.jp/index.cgi )で開催されました。学会側の発表では約3,000名の参加者があり、約1,400件の学術講演が行われたようです.この他,市民開放行事のうち部門合同企画の「生き生き自立生活!〜高齢社会に役立つ機械工学〜」には72名の参加者があったそうです.
総合受付や書籍,カタログ展示(5社)は「教育文化ホール」で行われ,機器展示(16団体)は経済学部や経営学部の講義棟にて行われました.また,部門同好会が横浜中華街で開催されました.
以下に当部門に関連する活動を報告します。

1.ワークショップ

 今年は部門横断のワークショップがいくつかありました。他には当部門が継続的に開催しているワークショップが実施されました。

(1)【W14】技術と社会部門企画 戦後の技術開発史を語る(4日(月),13:00−14:00),
企画:川上顕治郎(産業考古学会),緒方正則(関西大) 司会:川上顕治郎(産業考古学会)
(1)「普通旋盤の戦後の開発成功ケース−大隈鐵工所製LS形実用高速旋盤−」,安田新作(オークマ)
(2)「普通旋盤の戦後の開発成功ケース−池貝鉄工製A20型旋盤−」,伊東誼(東工大名誉教授)

(2)【W15】技術と社会部門,法工学専門会議 合同企画 知的財産(1) 知財の実務に潜む課題
(5日(火),9:00−11:00),企画:教誓紀幸(日栄国際特許事務所),司会:小西義昭(日機装)
(1)「米国流特許制度の活用は果たして是か・・・ブルネル父vs子の特許観を通して」,佐藤建吉(千葉大)
(2)「大学の発明・教育と産学連携」,飯野暢(IHI)
(3)「知財部門の付加価値の与え方はこれでよいか?」,教誓紀幸(日栄国際特許事務所)
(4)「研究開発に有益な特許情報の分析手法」,加藤浩(経済産業省)

(3)【W16】法工学専門会議,技術と社会部門 合同企画 知的財産(2) 技術者から見た進歩性判断はどうあるべきか(5日(火),12:30−15:00),企画:隅蔵康一(政策研究大学院大),
司会:田山健一(DOWAホールディングス),モデレータ:隅蔵康一(政策研究大学院大)
(1)「審決取消訴訟・侵害訴訟の判決動向」,小松正文(JFEテクノリサーチ)
(2)「判決1 吊戸のガイド装置」,長ヶ原朋紀(ヤンマー)
(3)「判決2 キー交換式ピンタンブラー錠事件」,石川壽彦(石川特許事務所)
(4)「判決3 耐水性で発散作用のある履物用靴底」,清水淳(IHI)
(5)「判決4 車両の乗員保護装置事件」,宮下義樹(日大)
(6)「審決取消判決から何を読み取るか」,近藤惠嗣(福田・近藤法律事務所)

(4)【W17】技術と社会部門企画 産業考古学シリーズ(6日(水),13:00−14:00),
企画:堤一郎(能開総合大),緒方正則(関西大) 司会:堤一郎(能開総合大)
(1)「多摩の鉄道遺産を歩く」,山田俊明(都立松原高校)

(5)【W18】技術と社会部門,技術倫理委員会 合同企画 技術の安全と技術者倫理 (4日(月),9:30−12:00)
企画:高田一(横国大),小西義昭(日機装) 司会:高田一(横国大)
(1)「機械の安全と技術者倫理」,佐藤国仁(佐藤R&D)
(2)「化学の未知をめぐる安全確保と被害者救済の課題」,杉本泰治(T.スギモト技術士事務所)
(3)「原子力分野における技術資格者の技術倫理的役割と連携」,桑江良明(電源開発)
(4)「情報化社会の安全と説明責任」,橋本義平(SYSBRAINS)
(5)「ブラックボックスと技術者倫理」,小西義昭(日機装)

(6)【W19】技術者倫理委員会,技術と社会部門 合同企画 技術者倫理教育の現状と課題
(4日(月),13:00−16:00)
企画:前野隆司(慶大),瀬口昌久(名工大) 司会:前野隆司(慶大)
(1)「機械系プログラムにおける技術者倫理教育の動向」,前野隆司(慶大)
(2)「ビデオを使った授業」,齊藤了文(関西大)
(3)「グループワークによる事例の疑似体験」,藤木裕行(室蘭工大)
(4)「事例から学ぶ技術者倫理」,中村昌允(農工大)
(5)「価値の共有による技術者倫理教育−金沢工業大学における新教養教育」,札野順(金沢工大)
(6)「プレゼンテーションをめざした授業」,瀬口昌久(名工大)

(7)【W20】技術と社会部門 企画 日本のエネルギー・環境教育の現状(5日(火),9:30−12:00)
企画:渡邉辰郎(東大),鈴木夏夫(玉川大),高田一(横国大) 司会:大久保英敏(玉川大)
(1)「日本機械学会における,エネルギー・環境教育関係行事の現状−WSへの期待−」,渡邉辰郎(東大)
(2)「国立環境研究所における環境情報提供について」,山本秀正(環日本環境協力センター)
(3)「学校におけるエネルギー環境教育の現状とエネルギー環境教育情報センターの取り組み」,大内敏史(エネルギー環境教育情報センター)
(4)「インドネシア環境教育プロジェクト」,大黒栄二(日本環境教育フォーラム)

 

2.オーガナイズドセッション


 オーガナイズドセッションは3テーマで,他部門とのジョイントも含めて,7つのセッションが企画・開催されました。

(1)J30 人機能支援の工学(1),(2), ロボティクス・メカトロニクス部門との合同企画
オーガナイザ 村田良美(明大),高田一(横国大),河原崎徳之(神奈川工大)
(2)S63 技術教育・工学教育(1),(2),(3), 技術と社会部門企画
オーガナイザ 吉田喜一(産技高専),渡邉辰郎(東大)
(3)S64 機械技術史・工学史(1),(2), 技術と社会部門企画
オーガナイザ 堤一郎(職業大)

 (1)では,高齢者を対象とした,運動機能の計測や機械の特性,制御の紹介等,合計7件の発表がありました.(2)では,高専や大学における教育の取り組みの紹介や新しい教育技術やシステム等,合計19件の発表がありました.(3)では,過去の技術的遺跡の調査研究や考察の紹介等,合計8件の発表がありました.

 以下に発表会場(第41,42室),日付順に掲載します。
第41室:
4日, 9:30−10:30 J30-1 人機能支援の工学(1) [座長 村田良美(明大)]
4101 高齢者リハビリにおける下肢運動特性の評価/○縄弥生(横国大),高田一,松浦慶総
4102 高齢者の足爪の観測情報と歩行能力の関係/○野本洋平(県立新潟女子短大),山下和彦(東京医療保健大),宮川晴妃(爪切り屋メディカルフットケアJF協会),小山裕徳(東京電機大),川澄正史
4103 リハビリテーション医療・福祉現場における機械(機器)使用状況/○仙波浩幸(豊橋創造大),縄井清志(つくば国際大)
4104 医療・福祉領域の機会工学的課題についての調査/縄井清志(つくば国際大)

4日,10:40−11:25 J30-2 人機能支援の工学(2) [座長 河原崎徳之(神奈川工大)]
4105 変動荷重型3自由度シミュレータを用いた人工股関節用材料の摩擦特性評価/○朝倉俊和(東海大),神崎昌郎
4106 自律駆動モデル規範制御型・介助式車いすの操作性能の評価/○鈴木立人(舞鶴高専),内山寛信(関西大),村上佳広,倉田純一,長嶋康太(関西大院)
4107 人機能支援の工学:これまでの経過と今後の展開/○村田良美(明大)

6日, 9:30−10:30 S64-1 機械技術史・工学史(1) [座長 堤一郎(職業大)]
4108 機械工学模型について/○藤尾直史(東大)
4110 ブルネルの大気圧鉄道の技術史研究 (第4報 模型による走行実験)/○溝上純義(千葉大院),佐藤建吉,白井靖幸(千葉工大),赤坂拓郎
4111 桜町遺跡出土のY字材用途(桜町遺跡出土の巨木)/小沢康美(福井工大),○田知清夫(元 福井工大)

6日,10:40−11:40 S64-2 機械技術史・工学史(2) [座長 白井靖幸(千葉工大)]
4112 水車遺構に見る動力伝達機構の研究(その9)?ガラ紡績工場のタービン水車の事例から?/○永井唐九郎(中プラ),天野武弘(豊橋工高),天野博之(豊田市教委)
4113 江戸期の高炉送風水車の出力について/○小野寺英輝(岩手大)
4114 鉄道ゲージの起原はローマ時代のチャリオットの轍 ?Z.ペルゲ遺跡の実地調査?/○下間頼一(元 関西大),緒方正則(関西大),塩津宣子(技文史研)
4115 鉄道用鋳鉄製跨線橋支柱とその技術史的意義?鉄道作業局新橋工場製支柱を中心に?/○堤一郎(職業大)

 

第42室:
5日,13:00−14:30 S63-1 技術教育.工学教育(1) [座長 加藤義隆(大分大)]
4201 東北アジア地区交流による実践的技術者の育成/○吉田政司(宇部高専)
4202 群馬高専における金型のCAD/CAM/CAEの工学教育の試み/○黒瀬雅詞(群馬高専),蓮見清章,壽昌彦,和佐田直明(清光金型)
4203 地域教育を通して子供達との連携(第8報)/○亀井秀也(福島高専),大澤英一,福田勝己(東京高専)
4204 神戸市立工業高校における産学連携による工業高校実践教育の試み(第1報)/○永井千秋(神戸市産業振興財団),八田久夫(神戸市立化学技術高校),生駒七三男(神戸工科高),芳井隆(神戸市教育委員会),平野敦(神戸市産業振興局)
4205 科学技術高校におけるPLCを活用したシーケンス制御の指導法/○門田和雄(東工大附)
4206 NHK高専ロボコンと技術者倫理/○吉田喜一(産技高専)

6日, 9:30−11:00 S63-2 技術教育.工学教育(2) [座長 鈴木夏夫(玉川大)]
4207 機械システム工学科における組込みマイコン教育の取り込み/○松岡俊佑(旭川高専),大柏哲治,今野廣
4208 多数の児童に短時間で実施する模型スターリングエンジンを用いた理科教育と技術教育/○加藤義隆(大分大),後藤利夫
4209 金沢工業大学の基礎数理教育(チーム学習の効果と課題)/○西誠(金沢工大),谷口進一
4210 インターネット活用した機械システムを学ぶ教育実験の試み/上杉繁(早大),渡辺貴文,三輪敬之
4211 特別支援学校におけるものづくり教育?環境にやさしいケナフ風車翼の自作?/○小川主水(千葉大院),佐藤建吉,渋谷宏幸,森脇三郎(千葉大),小木秀人
4212 機械設計製図科目で活用するための立体視3DCGコンテンツ/○佐藤智明(神奈川工大)

6日, 13:00−14:45 S63-3 技術教育.工学教育(3) [座長 渡邉辰郎(東大)]
4213 三次元機構構築シミュレーション機能をもつCAIシステムの開発(スライダクランク機構の実装とユーザインタフェースの向上)/○結城宏信(電通大)
4214 産業・経済に関わる教育への新手法の試み(第8報? 300名を超える工学部の学生を対象とした講義「先端技術入門」について(その3))/○本田博(都立科技大)
4215 流体力学に関する間違った科学情報の拡散に関する研究/○石綿良三(神奈川工大)
4217 スターリングサイクル学習を支援する教具の開発/○山本利一(埼玉大),星野孝仁
4218 学生による小型ヨットの製作と処女航海/○富永一利(都立産技高専),中西佑二
4219 機械工学の観点から見た産学連携と大学の社会貢献との関係(第1報)/○吉田敬介(九大)

 

3.一般開放行事,市民フォーラム


 今年は当部門,他部門の合同企画による市民開放行事が開催されました.そのうちの一つは以下の内容です:
【C04】「生き生き自立生活!〜高齢社会に役立つ機械工学〜」8月3日(日) 13:00−17:00
企画部門: 機素潤滑設計部門(幹事),ロボティクス・メカトロニクス部門,バイオエンジニアリング部門,機械力学・計測制御部門,技術と社会部門
[企画: 辺見信彦(信州大),宮川豊美(東芝)] [司会 宮川豊美(東芝)]
(1)24h生活の流れの中で福祉支援方法を考える,その例/ 大川井宏明(岩手大)
(2)リハビリテーション医療・福祉現場における機械導入の可能性を探る−理学療法学術大会発表演題から見えてくるもの−/ 仙波浩幸(豊橋創造大)
(3)リハビリテーション医療・福祉現場における導入に向けての機械工学的な課題(理学療法士への面接調査より)/ 縄井清志(つくば国際大)
(4)介護用パワーアシストスーツの開発/ 山本圭治郎(神奈川工大)
(5)パワーアシスト機器が拓く新たな医療福祉の可能性/ 藤本弘道(アクティブリンク)
(6)遊びが体を変えた!/ 河村吉章(ナムコ)

 上記の他に,今回は
C02「おもしろサイエンス(力学をベースにした模型の展示)」
 8月3日(日) 12:00−16:30  8月4日(月) 9:00−15:00
 企画部門: 機械力学・計測制御部門,関東支部 [企画 渡辺亨(日大)]
という参加募集型の企画が提示され,当部門より佐藤建吉先生(千葉大)が「ブルネルの大気圧鉄道」を題材として応募されました.

 

4.部門同好会,4日(月) 18:30−20:30 

 2008年の年次大会では法工学専門会議との合同部門同好会を横浜中華街(揚州飯店本店)で開催しました.参加者は両部門で合計28名でした.今回は他の部門でも同好会は学内ではなく中華街で行われました.全ての実施部門全体で330名を超える参加者があったということです.2007年度よりは参加者は減少しているようです.2007年度の技術と社会部門の同好会参加者が27名だったそうですので今回は両部門合わせてほぼ同数の参加者でした.
 同好会では,恒例の部門表彰式が行われ,業績賞を城下荘平先生(京都大学総合博物館)が受賞され,
前部門長大久保英敏先生(玉川大学)より表彰状と記念のプレートが授与されました.部門主催国際会議(略称ICBTT)の立ちあげ,維持継続に顕著な功績を残されたのが受賞理由です.また優秀講演論文表彰の対象者として,佐藤智明(神奈川工科大学),永岡慶三(早稲田大学),小口幸成(神奈川工科大学)の各先生が表彰状を受賞されました.因みにこの優秀講演の関連研究がS63-2 技術教育・工学教育(2)のセッション,4212「機械設計製図科目で活用するための立体視3DCGコンテンツ」において発表され多数の聴講者から反響がありました.
 なお,本部門同好会では部門ワークショップWS14「戦後の技術開発史を語る」の企画者川上顕治郎先生が講師:伊東誼先生(元会長)と安田新作先生(オークマ)を招待され,法工学専門会議のメンバーも加わって和気藹々のうちにあっという間に時間が過ぎました.
部門同好会ではお世話になった京王観光株式会社のご担当者にこの場を借りてお礼申し上げます.

5.終わりに


 前部門長がかつて総務委員会において話をされた部門再生3カ年計画のなかで行われたこの年次大会でしたが,振り返って見ますと部門の重鎮の方々によるOSやWSの積極的な企画により,前回よりも部門講演件数においては増加していたようです.
本年次大会にとどまらず,部門の将来のため,部門主催の公開講座・講演会,2年に一度の国際会議などの活動を積極的に実施していくためには若い力が必要です.本報告を目にされた若い(自称でもかまいません)会員の方々には教育・研究等を通して機械および工学周辺の技術などを是非ご披露くださればと思います.
2009年9月13日(日)から16日(水)まで開催予定の2009年度年次大会(会場:岩手大学)においても当部門関連のイベントをお見逃しなく.

執筆後記: 報告者が会期中,本来の職務により部門講演会場に常時滞在できず,上記報告内容は文章主体となりました.ここに謹んでお詫び申し上げます.今回の年次大会では,前回の準備委員緒方正則先生,法工学専門会議の大上浩先生,隅蔵康一先生,また,横浜国立大学の山田貴博先生,松井純先生には準備をすすめるにあたり特にお世話になりました.さらに,前部門長,現部門長,次期部門長,他部門の総務委員会メンバーにも種々の助言,激励をいただきました.ここに記して謝意を表します.

(報告 玉川大学 鈴木夏夫)





     

目次へ
日本機械学会
技術と社会部門ニュースレターNo.18
(C)著作権:2007 社団法人 日本機械学会 技術と社会部門