第21回 設計工学・システム部門講演会 特別講演

■■ 特別講演 Ⅰ ■■


 講 師:中場 勝 氏 (農業総合研究センター 水田農業試験場 水稲部長)


 題 目:『 お米はここまで美味しくなれる。日本の新しいお米「つや姫」の誕生 』


 概 要

 昨年10月に本格デビューしたお米の新品種「つや姫」は、今から13年前の平成10年8月に、山形県農業総合研究センター水田農業試験場において、優れたおいしさをもつ品種の開発を目標に「山形70号」を母に、「東北164号」を父にして、人工交配しました。
 交配で得られた27粒の籾を増やしつつ、稲の姿、病気や寒さへの強さを調査し、選抜を重ねました。その結果、品質や食味が良かったことから奨励品種となり、名称公募、県民投票を経て、平成21年2月に「つや姫」と名称が決まりました。
このように、人工交配から新品種となるまで10年以上の歳月がかかります。しかも気象は毎年異なります。「つや姫」も平成12年8月のフェーンや15年の低温、16年の台風15号による潮風害と数々の気象災害を乗り越えてきました。何かを持っている品種です。
 「つや姫」の最も大きな特長は、“食味”です。炊飯米の外観と光沢、白さ、そして味が「はえぬき」「コシヒカリ」より優れています。粘りもあり、冷めてもおいしいです。    
おいしいお米を選ぶため、11月から2月にかけて、ほぼ毎日20種類のお米をひたすら食べます。いろいろな成分を測定する分析機器も活用していますが、やはり最後は人間が実際に食べて、おいしいお米を選びます。「つや姫」もそういう中から誕生しました。
 過去に例のない高温となった平成22年は、全国的に1等米比率が下がる中で、山形県の「つや姫」は98%(全国1位)で、良食味だけでなく、高温にも強いことが実証され、好調な船出となりました。

「つや姫」は、“日本の新しいお米”として、羽ばたいていくため、県民一丸となって取り組んでいます。みなさん、ぜひご賞味ください。

 

■■ 特別講演 Ⅱ ■■


 講 師:田中 真美 氏 (東北大学大学院医工学研究科 教授)


 題 目:『 触覚・触感に基づく QOLテクノロジーの創出 』


 概 要

 触覚・触感は、自らが手指を動かし対象物との相対的な変形等から刺激を受け情報を感じる能動的な感覚である。触覚・触感のメカニズムの解明には、手指動作や様々な情報の関係性を明らかにすることが重要であるが、これらの研究は未だ十分でない。本研究では、触運動を含む触覚・触感メカニズムの解明と体系化を行い、触覚情報取得用多機能センサシステムの構築を目標としている。本講演では、ヒトの触覚に関する感覚受容器や触動作の特徴、触刺激とヒトの触感の関係に関する調査研究、および開発している触覚・触感に関わるセンサについて紹介する。