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分子動力学

molecular dynamics

 MD法.物質を古典力学的多粒子系(多くの場合原子の集合体)としてモデル化し,位相空間中での時間発展を決定論的に追跡するコンピュータシミュレーション手法.原子に作用する力を計算し,原子一つ一つについてニュートンの運動方程式を解く.粒子系のマクロ的諸量は,エルゴード性を仮定して時間平均操作により求める.確率論的に計算するモンテカルロ法と比較して系の時間発展が追跡できること,また,原子の静力学的安定配置を求める分子力学法に対して有限温度での系の動的構造に関連する諸量が求められる利点がある.凝集体のシミュレーションにおいては,周期境界条件により基本セルのまわりにイメージセルを仮想的に配置し事実上無限大の系を扱うことが行われる.分子動力学法では,平衡状態での巨視的性質は時系列データの長時間平均として評価される.その際,標準的なエネルギー一定の系のほか,温度,圧力などが規定されたさまざまな統計母集団(アンサンブル)を対象とする方法が考案されている.一方,非平衡状態を考える非平衡分子動力学法も提案されていて,熱流,せん断流れ,拡散などの現象に応用されている.また,原子核のまわりの電子状態を量子力学理論によって求めて原子間の相互作用力を計算し,原子核の運動は古典的に解く方法は第一原理分子動力学法と呼ばれ,非経験的に物性を評価することができる.

01/1011648.txt · 最終更新: 2017/07/19 08:48 by 127.0.0.1