交通情報は次の二つからなる.一つは時刻によって変化しない情報で,例えば地図などの情報や,案内標識による現在位置や目的地・方面情報である.もう一つは時々刻々変化する情報で,渋滞情報や気象情報などがある.したがって,交通情報システムも2種類に分かれる.時刻によって変化しない情報に対応しているのがナビゲーションシステムである.ナビゲーションシステムは,地図情報を電気磁気的情報として持っていて,現在地周辺の地図を画像として表示したり,目的地までの行き方を案内するものである.ナビゲーションシステムの現在位置の算出法には2種類ある.一つは,三つ以上のGPS(grobal positioning system)衛星から現在位置を割り出す方法である.もう一つは,出発地点をあらかじめナビゲーションシステムに入力して,車両に搭載してあるヨー角速度計や速度計から得たデータから現在位置を演算する自立的方法である.おもにGPSによる方法が用いられていて,自立的方法はトンネルの中などのようにGPS衛星の電波が届かない所で補間的にもちいられたり,あるいは現在位置の算出精度をふやすために前者と併用したりする.ナビゲーションシステムはコストダウンが進み,急速に普及しつつある.
つぎに,時々刻々変化する交通情報を提供する交通情報システムの中心的存在である渋滞情報システムについて述べる.このシステムはデータ収集系,データ処理系および情報提供系の三つの系に大別できる.データ収集系は道路に埋められたループコイルや道路の壁面に設けられた超音波式トラフィックカウンタ・電波ビーコン・光ビーコンで通過台数や車速などをカウントするものである.データ処理系は,収集したデータから,現在,どのくらいの規模の渋滞があるか,あるいは今後どのくらいの渋滞が発生しそうかを判断する.情報提供系は,電光掲示板などで走行中の車両に情報を伝達するものである.なお渋滞情報システムは単に道路の混雑情報だけでなくて,高速道路のサービスエリアの混雑状況を伝えるのもある.
また時々刻々変化する交通情報の典型として事故情報がある.事故が起こると,道路閉鎖などの交通情報を的確に伝えるためや,救助のために事故発生地点の正確な情報が必要になる.そこで緊急時に救難信号を発して,GPS衛星で位置を正確に特定するシステムも検討されている.