ジェットエンジンを動力装置とする旅客運送事業に供される飛行機をさす.現在の旅客輸送のうち長距離および大量輸送の分野はほとんどジェット旅客機によって担われている.機体は有償荷重を効率的に収納するために円形に近い断面を有する胴体,大気中で機体の重量を支えるための揚力を発生する主翼,飛行時の安定性と操縦性を保つための尾翼およびエンジンより構成される.
エンジンの配置はその個数,機体規模などにより主翼下部,胴体後部または垂直安定板下部の適当な位置が選ばれる.また,胴体後部にエンジンを持つ機体ではT型尾翼を採用するものが多い.垂直安定板は横風を受けた場合に主として胴体が発生する不安定モーメントを打ち消し,気流の方向に機首を向けるために必要で,空力的な形状のほかに機体重心との距離および面積によってその効き量が決まる.水平安定板は縦のモーメントの釣合いを保つために必要である.このように機体は適度な空力安定性を保持するように各部の形状とその配置が決定される.縦,横および方向の機体操縦は基本的にはそれぞれ,昇降舵,補助翼,方向舵で行われる.また,離着陸時には主翼前後縁に配置された高揚力装置で揚力を増強することが必要となる.操縦系統については軽量化および信頼性の面より従来の操縦索と油圧配管を用いた機械式に替わって,操縦かんの動きを電気的に舵面に伝える電気式操縦装置(fly by wire)システムが採用されるようになってきた.本格的なジェット旅客機の開発は1950年代より始まり,最初期の細胴型第一世代,1960年代に入って就航したT型尾翼などの新形状を織り込んだ第二世代,大量輸送を狙った広胴型の第三世代と推移し,最近では最新の航空技術を結集した新しい世代の機体が就航しつつある.最近の広胴型機の客室座席数としては標準的な3クラス設定で747-400:約400席,777-300:350席強,MD-11:250席強,A340-300:300席強でさらに500席を超える超大型機の開発も計画されている.初期のジェット機がターボジェット・エンジンを装備していたのに対して,より経済性および環境適合性に優れる高バイパス比のターボファン・エンジンを搭載した機体が現在の主流となっている.現在就航しているジェット旅客機の速度は巡航マッハ数が0.8~0.9程度である.コンコルドは巡航マッハ数2の高速性能を有するが,騒音・ソニックブームなどの環境適合性の面では問題点を残している.