日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第94号
新聞博物館の活字鋳造機
熊本日日新聞社は、日本初の新聞博物館を1987(昭和62)年に開設した。ここでは、原稿の組版から印刷、発行までの工程とその技術的変遷を知ることができる。
展示物のひとつに、昭和初期に林栄社(りんえいしゃ)社長の林栄三(はやしえいぞう)が「万年自働活字鋳造機」の商標名で発売した国産初の活字鋳造機がある。その中でも本機は、1934(昭和9)年製で現存最古のものである。
新聞や書籍の印刷は、1980(昭和50)年代までは活版印刷と呼ばれる方式が主流であった。これは、文字タイプである「活字」を集めて(文選)、印刷イメージ通りに集めてレイアウト(植字・製版)し、版にインクを塗って紙をあてて印刷するというもので、「活字離れ」という言葉が現在も通るように、活字は書物の代名詞であった。
特に新聞は、一度印刷すると再製版する必要はなく、活字は1回限りの使用であり、毎日膨大な種類と量の活字が必要とされたため、活字鋳造機は新聞社になくてはならない機械であった。この機械には種々の特許技術が反映され、5号(10.5pt)活字を90本/分で鋳造することができた。1982(昭和57)年まで使われ、幾多の記事を載せた新聞を読者に送り続けた。
《写真提供:株式会社熊本日日新聞社・新聞博物館》
公開(事前予約不要)
新聞博物館
(※団体の場合要事前予約)
- 開館時間:
- 10:00~17:00(入館は16:30まで)
- 入場料:
- 無料
- 休館日:
- 日曜・祝日(年末年始)
- 住所:
-
〒860-8506
熊本県熊本市中央区世安町172
熊本日日新聞社 - 電話番号:
- 096-361-3071
- HPアドレス:
- https://museum.kumanichi.com/
- 交通機関:
- JR豊肥本線平成駅から徒歩7分