日本機械学会「機械遺産」 機械遺産 第 138号(2026年認定)
機械学会『蒸汽表及び線図』(昭和9年 初版1刷)
機械学会が刊行した『蒸汽表及び線図』は、1934(昭和9)年8月に成稿し、同年10月に初版が出版された。教育機関、研究所、産業界において広く利用され、わが国の標準蒸気表として熱工学および熱機関研究の基盤資料の役割を果たしてきた。1930(昭和5)年前後、各国で蒸気の熱力学的性質に関する研究成果が相次いで公表され、複数の蒸気表が併存したことで計算値不整合が問題となっていた。
1929(昭和4)年ロンドンおよび翌年ベルリンの国際蒸気表会議で「国際蒸気骨組表」が採択されたものの、国内標準の確立には至らず、機械学会は1933(昭和8)年に蒸気表委員会を設置し、統一蒸気表の編纂に着手した。基礎式には菅原菅雄の「新蒸汽表」を採用し、約1年の編集を経て刊行された。初版はA4判、本文・諸表18ページと蒸汽線図1葉からなり、定価80銭であった。
1937(昭和12)年の機械学会誌で加茂正雄会長は「世界を通して最新研究の結果を輯録せる本書を、世界の工業国に先んじて発刊した」と述べ、国際的研究動向を先導する成果であった。その後、改訂版やSI蒸気表へと継承され、本書は機械工学分野の一次資料として高い学術的価値を有し、機械遺産にふさわしい歴史的意義を備えている。
《写真提供:一般社団法人日本機械学会》
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