101期部門長挨拶

 第101期生産システム部門の部門長を拝命いたしました,オムロン株式会社 石橋です。皆様には,日頃から学会活動へのご理解とご協力を賜り,誠にありがとうございます。微力ではありますが,産業,学会,そして会員の皆様のご発展に少しでも寄与できるよう努めてまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 今(2023年5月時)はどこもかしこも似たような話題で恐縮ですが,まず対話型AIについて個人的に感じていることをご紹介します。生産システムに関わる領域でも,その活用は急峻すぎるほどの立ち上がりです。ある提供サービスの例では,災害が起こった場合にAIがサプライヤの被害状況や影響を膨大なネット情報から推測し,さらにサプライヤへのお伺いメールまで作成してくれて,あとは担当者が送信ボタンを押すだけ,そんな事まで可能だとか。近い将来,営業が顧客とまだ対話している段階で,もっとも経営的な期待値が高い生産計画を立案してくれるような仕組みが当たり前になっているかもしれません。今が“過度な期待”期であったとしても,事業スピードと間接生産性が飛躍的に向上する可能性を強く感じます。

 対話型AIの活用については今のところ,産業界では積極,学術界では慎重という傾向に分かれているようです。今後の産学連携で溝が生まれないよう,現実世界での対話を進めていきたいと考えます。

 前置きが長くなりましたが,次は生産システム部門についてのご紹介です。当部門は1988年にFA部門として設立(詳細は「部門紹介」頁をご覧ください)されて以来,先人たちの知恵と努力によって,新たな技術や社会的ニーズの変化を積極的に取り入れ,生産システムの捉え方とともに,その取組み領域を徐々に広げてきました。

 年代別に技術×社会的ニーズという形で代表例を振り返ると,2000年代は自動化×グローバル化,2010年代はIoT(Internet of Things)×省エネ・省資源,2020年代に入るとCPPS(Cyber-Physical Production System)×SDGsなどの変遷が見られます。取り扱う研究分野は,[1]生産システム関連のモデリングとアルゴリズム(製品設計手法,生産スケジューリングなど)と,[2]生産システム関連の要素技術(IoT,AI,シミュレーション,自動化,AM(Additive Manufacturing)など)に大別されますが,その内容は年々拡大・深化しています。

 技術側に立って社会的ニーズを見ても,その関係には変化があります。AMを例に挙げると,2010年代前半のブーム時は3D形状が手軽に作れるという「モノ」が注目され,次に従来工法(AMに対して)では難しいような高い「機能」の実現に注目が移り,ここ最近では,やはり従来工法に比べ(適切な使い方をすれば)廃棄物が少ない=低炭素な生産が可能という「企業活動」に結び付けた提案をよく聞くようになりました。生産システムの基本構成が同じでも,生み出す価値は時代と共に変わり,求めるプロセス条件の最適解も変わる,そういう事が起きているわけです。

 今後は先に触れた領域以外にも,5G・6G通信の普及による設備等のリモート監視・制御の容易化,量子コンピューティングの進化・低価格化による複雑な生産計画の最適化問題解決など,発展が期待できる領域が数多あります。

 いずれも生産システムとして議論するには,技術とニーズをセットにして行き来する必要があると考えます。そのため当部門は,産業界への貢献とそのための産学連携を重視しています。部門長を産と学から交互に選出しているのはその現れのひとつです。2023年3月に開催した研究発表講演会(生産システム部門と,情報・知能・精密機器部門とのコロケーション)では,生産システム部門の全51テーマ中16テーマの執筆者に企業の方のお名前がありますし(予稿集より),他に講演原稿不要の「企業の開発事例」を4テーマ発表頂きました。

 今後も産と学の両方から,さらに多くの方々に参画して頂けるよう工夫し続けて行きたいと考えます。良いところ,変えるべきところ,ぜひ忌憚ないご意見をお願いします。

 最後に,今期の計画です。

・2023年9月の年次大会でのオーガナイズドセッション,分野横断テーマへの参画

・2024年3月の部門研究発表講演会コロケーション開催

・他部門との連携による国際会議(iDECON,LEM&P)開催

以上のような継続的な活動のほか,

・部門の技術ロードマップレビュー(日本機械学会誌8月号に掲載予定)

・「AMの価値拡張に向けた統合生産システムの研究分科会」シンポジウム開催

などを予定しています。

 また,好評ながらコロナ禍で中断を余儀なくされていた「工場見学会」の復活を目指します。タイムリーなテーマで個別講習会も企画していきたいと思いますし,新たな連携も模索していきます。ご興味のある方は,ぜひお声掛けください。

 皆様どうかご支援のほど,よろしくお願いいたします。

 

2023年度(101期)部門長 石橋 広行(オムロン株式会社)