熱工学部門長あいさつ


第94期熱工学部門長

東京工業大学 工学院 機械系
教授 花村 克悟
2016年4月1日

 第94期の熱工学部門長を仰せつかりましたので,この場をお借りしてご挨拶申し上げます.
 現在,日本機械学会には23の部門があります.そのなかで,熱工学部門に登録されている会員数は3番目に多く,その登録者数は全会員数のおよそ7%であることが,第92期部門長のあいさつ(熱工学部門ニュースレターNo.72)の中でまとめられています.また,上位5位までに機械の4力学に関わる部門が入っていることも,あらためて納得のゆく数値であると思われます.もう一つ,計算力学部門が上位5位以内に位置し,実験と数値計算が4力学の両輪となっていることも頷けます.長年にわたり熱工学を研究開発の中心に据えている研究者は,継続して熱工学部門に登録いただいており,もちろん機械学会の正会員でもあります.一方,研究を進めるうえで必要になった時に登録し,その研究開発のプロジェクトなどが一段落した場合には部門登録を打ち切る場合もあり得ます.したがって,時には部門登録者数が増える,またあるときには減少する,などはごく自然のことであると思います.学会の入退会も同じように考えれば,必要だと判断されれば入会することになるでしょうし,一段落したと判断されれば退会もあり得るもの,と受け止めたほうが健全だと思います.昨今,会員が増加している一部の学協会を除き,本会も含め多くの学協会が,会員数の減少に歯止めがかからず,会員を増やすための活動の検討や,会員へのメリットの議論,さらには会費の適正値など,学会存続の議論に大いに時間を費やしている場合があります.部門長としては,会員数や部門登録者数が増えることを望ましいと思う反面,必要であれば高い会費でも入会し,講演会や講習会,学会誌をとおして会員価格にて有益な情報が入手できることそのものがすでにメリットとして約束されている,といったそもそも論に徹したほうがむしろ健全であると思います.そのためには,常に新鮮な,かつ興味深い内容を発信し続けることが,当たり前のことですが,最も大事なことになります.
 この情報発信の一つとしては,2014年1月から2015年7月にわたり次々に発刊された4つの新学術誌,Mecahnical Engineering Reviews,Mechanical Engineering Journal,日本機械学会論文集(Transactions of the JSME),Mechanical Engineering Lettersがあります.この4誌に加えて,部門により独立に編修されている4つの英文ジャーナル(Journal of Fluids Science and Technology,Journal of Thermal Science and Technology,Journal of Biomechanical Science and Engineering,Jouurnal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing)を合わせて日本機械学会学術誌と称しています.ご存知のように,熱工学部門は独立誌として上記括弧内のJTSTを編修しています.一方,4誌の新学術誌については,23の部門が12のカテゴリーに再分類されており,当部門は,動力エネルギーシステム部門とエンジンシステム部門の3部門の合同カテゴリーである,Thermal, Engine and Power Engineering (TEP) として編修しています.今までとは異なり,機械に関する全ての分野を包含した統合誌であることと,和文誌である日本機械学会論文集については,アブストラクトに必ず最も重要な結果を記述するなど充実させ,Figure captionにも英文にて簡易説明を記述,文献は和文と英文を併記するなど,海外からの読者がアクセスした場合にも,内容がある程度理解できるようになっています.また,初めての試みとしてMechanical Engineering Lettersが2015年7月より発刊されています.例えば福島原発の事故処理に関する研究や技術開発については,年々放射線量が変化することから,必ずしも再現性を確保することができないことが考えられます.その時点での研究データとして極めて貴重なものとなり得るものの,フルペーパーとして投稿するには躊躇われるような場合,このレター誌への投稿が考えられます.また,実機ガスタービン立ち上げの際の動翼タービン表面温度変化の測定など,1点しか計測できないものの,極めて貴重な取り組みに焦点をあてることなども1つの狙いとしています.さらに速報性も重視し,1~2週間以内の掲載判定ならびに事前公開などを進めています.もちろんフルペーパーと同じ,査読された原著論文,としての扱いです.今までの機械系の重みを維持しつつ,埋もれた研究や技術開発,長期にわたる経年変化の一瞬を極めたものなど,今までになかった情報発信を試みています.ただ,初めての試みが故に掲載への判断基準が定めきれていないといったご意見もございます.むしろ,熱工学部門登録者から,こうした新学術誌への投稿を率先して進めていただき,新たなレター誌のスタイルを確かなものに構築いただけると幸いです.さらに,このような新しい取り組みが軌道に乗るためには,論文を投稿する著者はもちろん,特にそれを判断するエディターおよび校閲者の力量が問われることになると思います.部門長として,例年開催させていただいている熱工学コンファレンスや各種講習会をより充実させ,皆様の研究力や技術力の向上に少しでもお役に立てるよう努力することをお約束します.当部門に登録されている皆様に,上記の学術誌へ著者としての投稿,あるいは校閲者として査読をお願いしたいと思います.
 今後とも,皆様のご理解とご協力のもと,運営委員会や各種委員会をとおして充実した部門活動を進めてまいります.これらの取り組みに忌憚のないご意見を賜れれば幸いに思います.何卒よろしくお願い申し上げます.

BackTpTop

Valid XHTML 1.0 Transitional Valid CSS!