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 工学者を目指して、月日はけっこう流れ・・・

 日本大学大学院
 機械工学専攻1年 佐久間 啓

 ふと、曳い返してみますと、ここ日本大学のキャンパスで私の人生の三分の一の年月が流れていたことに今さらながら驚いてしまいます。それというのもわたしの通っていた高校が大学に隣接した付属校であったためであるわけですが、工学を目指さなければこんな驚きもなっかたはずです。
 高校の頃、どうゆう訳か数学や物理に魅せられてい私は、純粋にそれらを志すと同時にそれらの応用である工学、特に機械工学に一種の『かっこよさ』を感じてしまったわけです。この動機が不純であるかどうかは、この駄文を読んで下さっているみなさんの御判断にお任せいたしましょう。(高校の英語の先生方には英文科進学を強く勧められてはいたのですが・・・)
 そんなこんなで、縁あって日本大学工学部の末席に加えていただいたまではいいのですが、このときになって初めて、自分がチャリンコぐらいしか満足にいじれない(チャリンコの奥の深さは身にしみて知っています。)、『機械工学不適合人間』であることに気づいてしまったからさあ大変。あんまり泳げない人間が調子こいて深場まで行き自分の背が立たないのに気づいて溺れだすのと同じで、私も溺死の恐怖に苛まれながら犬かきで泳ぐしかなかったのです。そうしているうちに、やっと浜辺にたどり着くことできたのでした。私にとって、その浜辺とは現在所属している流体工学研究室に他ならないのです。ちよっと大袈裟に書いてしまいましたが、まあそんな感じです。
 ここで、私たちの研究室について少々触れてみたいと思います。ここ流体工学研究室は、青木 払先生(教授)を中心として本質をついた思想を拝啓に研究を進めています。教員3名、院生3名、内1名米国ノースウェスタン大学留学中、卒研生25名の大所帯です。研究内容は私が研究している壁面噴流をはじめ、道路清掃機、分離機などの流体機械、超音波によるトライボロジー、ラビリンスシールなどです。『よく学び、よく飲む』を座右の銘としておりますので、何事にも意欲な学生には、たまらなく居心地の良い研究室なのです。
 また、学外との交流も盛んで、地元企業をはじめ、機械技術研究所、その他、研究や開発に際して様々な方面の人々と接することができました。そこで感じとったことは、世の中の流れに耳を傾ける謙虚さの重要性でした。私の直接の指導者になっていただいている佐藤 光正先生(助教授)は一見ただのオッチャンではありますが、その飽くなき研究者としての姿勢と広く社会の要望に答えようとする態度は多くの企業人や学生を魅了するのです。(当然、かなりくせはありますが。)私もそのひとりでして、迷わずこの研究室を選んでしまったわけです。
 卒業研究を振り返ってみますと、4月には名前もろくに知らなかった連中と語り合ったり、ぶつかり合ったり、喜んだりと充実した団結力あふれるものであったように思われます。しかし工学者として成長したとは、おこがましくて言えたものではなかったように思います。
 私たちを含めて、私立大学では通常一つの研究を複数の学生で研究するのですが、これがくせ者で、ある種の甘えや無責任な行動を生んでしまうのです。私の場合、幸か不幸か二人の班で一人がいい加減な奴だったので、自分の研究として終わらせることができました。
 私は工学者として、先生方に追いつき追い越そうという壮大な『下心』をもって大学院に進学しました。もちろんこれは困難な話。しかしこういうことこそ面白いとは思いませんか?今度は一人の研究なので、最大限の『悪あがき』をするようにしています。いつの日か、本当の『工学者』と呼ばれたいが為に。


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