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殻をやぶろう

平成6年度委員長校顧問
 東北大学 渡辺 豊

 昨年、一昨年と2年弱の間、アメリカ合衆国で生活する機会を得た。米国で大学の研究者や院生あるいは近所のオッサンやオバちゃんと付き合っているうちに強く感じたことの一つは、「価値観は本来個人に依存するものであって、こうあるべきだという絶対的基準はあり得ない」ということである。米国社会では世界各国から来た実に様々の人たち(彼等は素性を正せば皆移民である。)が様々な考え方に従って生きている。ただし共通なのは、彼等は、皆、自分のやりたいことをはっきり知っているし、そのためにやるべきことを冷静に判断しているということである。自分自身の価値観に基づいた合理的判断、これが彼等のしたたかさを支えているように思う。この点においてどうも(私も含めて)日本人は彼等に比べて少々ひ弱に感じられてならない。日本人の価値観は多くの場合、自分という人格に根ざしたそれではなくて、いわゆる常識的な無難な価値観を借用しているにすぎないように思う。いろんな考え方があり得るのである。皆さんが日本人として(あるいは留学生諸君はそれぞれの母国で)生きているうちにいつのまにか身に付いてきた「常識的考え方」は絶対的なものではない。
 既成の概念や価値観という殻をやぶろう。「常識」にとらわれるのはやめよう。自分のやりたいことを自分が正しいと信じるやり方てやろう。失敗したっていいじゃないか。多様な価値観を持った個性の集まりの中から新しいものが生み出されてゆくのである。


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